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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第45回 “Big Little Lies”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第45回 “Big Little Lies”
    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第45回“Big Little Lies”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
     


     

    HBOのダーク・ミステリー・ソープオペラ!
    “Big Little Lies”は背筋が凍るダーク・ミステリー・ソープオペラ。「何それ?」と突っ込まれそうだが、観てもらえばわかる(ソープオペラが「昼メロ」の意味ってことは知ってるね)。オスカー女優のリース・ウィザースプーンとニコール・キッドマン共演、エミー賞8冠、「ドラマ界のレクサス」ことHBOがまたまた放つ、スーパー・ハイクオリティ作品だ!

     
    “Somebody’s dead”
    舞台はサンフランシスコから近い高級住宅地モントレー。オッター・ベイ小学校で殺人事件が発生し、警察による関係者の事情聴取が始まった。
     

    ―事件の半年前。
    マデリン・マッケンジー(リース・ウィザースプーン)はお節介で世話好きのママ。バツイチだが現在の夫エド(アダム・スコット)はとても優しく、エドとの間には小学生の娘がいる。ティーンエイジャーの連れ子の娘は言うことを聞かないが、結婚生活は順風満帆だ。
     

    セレステ・ライト(ニコール・キッドマン)は元弁護士の専業主婦。洗練された物腰の、街一番の美人ママだ。年下で超イケメンの夫ペリー(アレクサンダー・スカースガード)は彼女にメロメロで、2人の間にはブロンドの双子の息子がいる。人もうらやむ完璧な結婚生活だ。
     

    ジェーン・チャップマン(シェイリーン・ウッドリー)は、息子とともに最近引っ越してきたシングルマザー。マデリン、セレステともママ友になり、仕事も見つかった。新たな生活は希望に満ちている。
     

    3人のママはいずれも幸せだ。表向きは…。
     

    オッター・ベイ小学校の入学式で、やり手弁護士レナータ(ローラ・ダーン)の娘アマベラが首を絞められるという事件が起きた。アマベラがジェーンの息子ジギーを犯人だと名指ししたことから、レナータは、新参者のジェーンとジギーの排除運動を始める。
     

    正義感からジェーンとジギーを擁護するマデリン。ヒステリックにジェーンとマデリンに嫌がらせを仕掛けるレナータ。二人のエゴが激しくぶつかり合う。
    この日を境に、オッター・ベイ小学校の1年生をめぐるコミュニティが二分された。各家庭に緊張感が走り、潜在していた不和、隣人との歪んだ人間関係が少しずつ明るみに出る。
     

    実は、マデリン、セレステ、ジェーンは、それぞれ人に言えない深刻な問題を抱えていた。
    このコミュニティに幸せな家族はひとつとして存在しない。
     

    まだ、だれも殺されていない。
     

    圧巻のローラ・ダーン VS. 「3ママ」
    「ロマコメの女王」からオスカー女優となったリース・ウィザースプーン、「トム・クルーズの妻」からオスカー女優となったニコール・キッドマン。2人とも実生活でも母親なので、この役柄にはリアリティがある。製作総指揮にも名を連ねていて、気合入りまくりだ。
     

    ジェーン役のシェイリーン・ウッドリーは、『ダイバージェント』の主役トリスと言えばわかるか。オスカー女優2人に若いウッドリーが加わることでケミストリーが働き、タイプが全く違うユニークな「3ママ」が形成された。
     

    圧巻なのはレナータを演じたローラ・ダーンで、「3ママ」を相手に一歩も引かない。筋金入りの嫌な女になりきっている。
     

    子役ではジギー役のイアン・アーミテージが、サイコパスなのか無実のヒーローなのか、どちらにも見える絶妙な演技を見せる。それもそのはず、彼は“The Big Bang Theory”からのスピンオフ “young Sheldon”で子供時代のシェルドン・クーパーを演じている!
     

    キッドマンの夫ペリー役のアレクサンダー・スカースガードはスウェーデン出身、“True Blood”のエリック役でブレークした。ペリーのクールで洗練されたキモ怖さは只ごとではない。
     

    主演のキッドマン、助演のダーンとスカースガードは、本シリーズでエミー賞、ゴールデングローブ賞をそれぞれダブル受賞した。
     

    そもそもだれが殺されたのだ?
    クリエーターでもある才人デイビッド・E・ケリー(ミシェル・ファイファーの夫)による脚本は実に巧みだ。
    視聴者はまず、他人の家庭を覗き見るという昼メロ調の世俗的な興味から入っていく。すると、嘘と見栄で固めたハイソな富裕層の生活実態が暴かれる。さらに幾層にも癒着した夫婦の秘密が一枚ずつ剥がされていくに連れて、観る者の居心地が悪くなってくる。
     

    ブラックな笑いも取り混ぜながら、やがて発現する狂気、憎悪、嫉妬、いじめ、不倫、脅し、暴力。外からは見えない家族の闇が、子供たちの不安を増幅する。
     

    正気と狂気のはざまで人生の岐路に立つ「3ママ」の姿は、おかしくもあり悲しくもある。
     

    意外なストーリー展開に魅了されていると、フラッシュフォワード(フラッシュバックの逆)による殺人捜査のシーンが挿入され、ミステリードラマに引き戻される。
    観る者は、登場人物のだれもが、殺人事件の被害者にも加害者にもなりうる理由を持っていることに気づく。
     

    だが、そもそもだれが殺されたのだ?
    このダーク・ミステリー・ソープオペラは怖い。屈折して歪んだ驚愕のエンディングを見届けるまでやめられない!
     

    全7話からなるシーズン1は現在Amazon Primeで配信中。当初はミニシリーズだったが続編の制作が決まり、2019年に放送予定。
    シーズン2では何とメリル・ストリープがペリーの母親役で加わるとのことで、このシリーズは“American Horror Story”並みに怖くなるよ!
     

     
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    Movie: “Chances Are” (1989)

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    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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