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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第60回 “Dead to Me”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第60回 “Dead to Me”
    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第60回“Dead to Me”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     

     

    『フォーエバー・フレンズ』のファンへ朗報!
    ベット・ミドラーとバーバラ・ハーシーが主演した『フォーエバー・フレンズ』(1988)には感動したよね。
    本作はいわばそのコメディ版。
    “Dead to Me”はイッキ観確実、女性2人の友情物語をダーク・クライム・コメディに仕立てた斬新なスーパードラマなのだ!

     
    “Too many secrets”
    ―カリフォルニア州オレンジ・カウンティ

     
    ジェン・ハーディング(クリスティナ・アップルゲイト)は2人の息子を育てるシングルマザー。富裕層相手に不動産を売って生計を立てている。
    ジェンは最近夫のテッドを亡くした。ロックミュージシャンだったテッドはひき逃げされたのだ。警察は頼りにならず、犯人の手掛かりもつかめない。短気で超強気なジェンは怒りと悲しみの矛先をひき逃げ犯に向け、仕事の合間にヘッドライトの壊れた車を片っ端からチェックしている。
    (因みにジェンのストレス解消法は、車内で大音響のデスメタルを聞くことだ。)

     
    ジェンは「最愛の人を失った者たちの集い」で、一風変わったジュディ(リンダ・カーデリーニ)と知り合う。
    フィアンセを亡くしたばかりだというジュディは、不眠に悩むジェンに電話番号を教える。どうせ自分も眠れないから、いつでも電話してくれていいという。
    集会は馬鹿げていて役に立たなかった。

     
    ジェンは今夜も眠れない。
    絶望的に話し相手が必要なジェンは、怪しさ漂うジュディを疑いながらも連絡を取る。

     
    ジュディは芸術家で、フリースピリットの持ち主で、楽しくて魅力的だった。2人はすぐに意気投合し、親友となる。

     
    だが、死んだはずのジュディのフィアンセ、イケメン弁護士のスティーヴ(ジェームズ・マースデン)は生きていた!

     
    しかも、ジュディはスティーヴに振られてから彼をストーキングして、裁判所から接近禁止命令を受けている。彼女はサイコパスなのか?

     
    怒り心頭に達したジェンは、ジュディを激しく問い詰める。
    ジュディはスティーヴに捨てられた理由を泣く泣く説明した。
    2人はまた親友に戻った!

     
    だが、ジュディにはもうひとつ大きな秘密があった。
    実は、スティーヴにも秘密があった。
    なんと、死んだテッドにも秘密があった。
    もちろん、ジェンにも秘密があった。

     
    魅力全開のリンダ・カーデリーニ!
    ジェンを演じるクリスティナ・アップルゲイトは、大ヒットコメディ“Married…with Children”の長女ケリー役でブレーク、同役を’87年から11年つとめた。コメディはお手のものだ。今回は強面だが優しく、哀しいけどファニーなジェンを完璧に演じ、エミー賞の主演女優賞候補になった。

     
    リンダ・カーデリーニは“ER”、“Mad Men”にも出演していたが、何といっても『アベンジャーズ』シリーズで演じたホークアイの奥さんローラ役がよかった。今回はエキセントリックで情緒不安定なジュディ役で魅力全開。本作の主役はジュディなのだ。

     
    スティーヴ役のジェームズ・マースデンは、『X-MEN』シリーズの初代サイクロプス、ディズニーの『魔法にかけられて』(2007)の王子さま、“WESTWORLD”では主人公ドロレスの恋人テディを演じていて、日本でも顔なじみだ。この人の歌唱力はプロ級。

     
    ジェンの2人の息子、反抗期のチャーリーとキユートで優しいヘンリーを、サム・マッカーシーとルーク・ロエスラーが達者に演じる。

     
    アメリカン・ドラマでは、いかにもそれらしい脇役がキャスティングされる。俳優層が格段に厚いのだ。本作では、ジェンのモンスター義母ローナを怪演するヴァレリー・マハフェイ、ジュディと仲のいい不良老人エイブ役のエドワード・アズナーが、笑いを誘う。

     
    喜怒哀楽の増幅ブレンド!
    クリエーター/製作総指揮/共同脚本のリズ・フェルドマンは、スタンダップ・コメディアン出身。『フォーエバー・フレンズ』のコメディ・バージョンともいうべき本作は、彼女の代表作となった。

     
    ストーリーはジェンとジュディのアップダウンする友情を縦軸に、テッドのひき逃げ犯が次第に追い詰められていくプロセスを横軸に、二転三転する。約30分 X 10エピソードの構成でテンポよく無駄がない。笑わせながらも各エピソードに2人の微妙な喪失感、焦燥感、充足感を巧みに織り交ぜた脚本も絶品だ。

     
    アップルゲイトとカーデリーニは、長年ペアを組んできた漫才師のように息が合っている。2人の間にはケミストリーが溢れ、フレンドシップはより感動的、怒りはより激しく、哀しみはより深く、クライムシーンはよりスリリング、ユーモアはよりおかしく増幅され、それらがみごとにブレンドされている。
    (エピソードが進むにつれて“Dead to Me”というタイトルにも納得する。)

     
    そして最終エピソードは強烈なサプライズで幕を閉じる!
    一気観ファクターはすべて揃った。女性2人の友情物語が、斬新なダーク・クライム・コメディに仕上がったのだ!

     
    邦題は『デッド・トゥ・ミー ~さようならの裏に~』。Netflixのオリジナルで、シーズン2の制作も決定している。
    この物語はどこまで翔んでいくのか、早く知りたい!

     
    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」㊴
    Title: “Raindrops Keep Fallin’ on My Head”
    Artist: performed by B.J.Thomas, lyrics by Hal David, and music by Burt Bacharach
    Movie: “Butch Cassidy and the Sundance Kid” (1969)

    祝! 『明日に向かって撃て!』50周年。
    この曲、このシーン、アメリカ映画史上屈指のマッチングだ!

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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