これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第73回 “TEENAGE BOUNTY HUNTERS”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第73回“TEENAGE BOUNTY HUNTERS”
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
“Veronica Mars”以降で最高のティーンエイジャー・ドラマ!
“Teenage Bounty Hunters”は、学園探偵ドラマの傑作“Veronica Mars”(2004-2007、2019)以降で最高のティーンエイジャー・ドラマ。敬虔なクリスチャンの双子姉妹がバウンティハンター(賞金稼ぎ)となって縦横無尽に活躍する、底抜けに愉快痛快なコメディなのだ!
こうして双子はバウンティハンターとなった!
―ジョージア州アトランタ
裕福なウェズリー家は、仕切り屋の妻デビー(ヴァージニア・ウィリアムズ)、恐妻家の夫アンダーソン(マッケンジー・アスティン)、そして二卵性双生児のスターリング(マディ・フィリップス)とブレア(アンジェリカ・ベティ・フェリーニ)の4人家族だ。
双子はクリスチャン系の私立高校に通っている。優等生のスターリングはクラス委員でディベートグループのメンバー、父親のハンティングのお供もする。ブレアは頭の回転が速いアスリート、思い立つと何でもその場で実行に移す。2人はとても仲良しで、切羽詰まるとテレパシーでコミュニケーションを取ることもできる。
ある晩2人はダブルデートをした後、帰宅途中に父親のピックアップトラックで事故ってしまう。スターリングがヴァージンを失ったと聞いて仰天したブレアが、思わず脇見運転をしてセダンと衝突したのだ。
そこに現れたのが、セダンを追ってきたバウンティハンターのバウザー(カディーム・ハーディソン)。セダンの男は保釈中の逃亡犯で、5千ドルの賞金がかかっていた。
スキをついて車で逃げ出す逃亡犯。呆然と見送るバウザー。だがブレアは猛然と駆け出すやボンネットに飛び乗り、運転を妨害する。スターリングが父親のショットガンでセダンのタイヤを撃ち抜き、2人は逃亡犯を捕まえる。
交渉の結果、バウザーは賞金の半分を双子に払うことで合意した。2人の腕を渋々ながら認めたのだ。
この仕事がすっかり気に入ったスターリングとブレアは、両親には内緒でバウザーのもとで賞金稼ぎのノウハウを学び始める。白人富裕層の姉妹なら、黒人のバウザーが収集できない情報を入手し、カントリークラブなど白人特権階級用の施設にも自由に出入りできる。つまりバウザーの守備範囲が一気に広がるのだ。
こうして双子姉妹は“Teenage Bounty Hunters”となった!(未成年はバウンティハンターのライセンスが取れないので、厳密にはバウザーの弟子に過ぎないのだが…。)
これぞキラー・ケミストリー!
タイプは違うが頭のいいスターリングとブレアをそれぞれ演じたマディ・フィリップス、アンジェリカ・ベティ・フェリーニには、’キラー・ケミストリー’が働いた。機関銃のように展開する2人の掛け合いはチャーミングで楽しく、本作最大の見どころだ。
一見意地の悪いもっさりとしたオッサンだが、やがて双子の守護神となるバウザーを、カディーム・ハーディソンがいぶし銀の演技で支えている。
さらに、スターリングを憎悪するクラスメートのエイプリルを演じたデヴォン・ヘイルズ、双子の母親デビーを怪演するヴァージニア・ウィリアムズ、私服に着替えるとスーパーホットに変身するブレアの恋人マイルスを演じたマイルズ・エヴァンス、バウザーが思いを寄せるタフな上司ヨランダ役のシャーリー・ルミアークなど、知名度こそ低いがスパイスの効いた適材適所のキャスティングだ。
最終エピソードで投下される衝撃のサプライズ!
本作は“The 100”(本ブログ第18回参照)や“Stranger Things”(第32回参照)のようなSci-Fi系とは異なる、純粋なティーンエイジャー・ドラマだ。舞台をNYでもLAでもない保守的な南部の都市アトランタに設定し、’バウンティハンター’という物騒なパワーワードを加えることで、みごとに差別化している。
アトランタにはまだまだ人種差別が残っていて、スターリング、ブレア、バウザー、マイルスが“politically correct”に苦労するシーンが頻出する。これが妙にリアリティのある定番ギャグになっていて笑えるのだ。
(蛇足だが、アトランタの政治や文化は、日本でも人気のカリン・スローターの犯罪小説を読むとよくわかる。)
厳格な両親に育てられたスターリングとブレアは、飲酒・喫煙・ドラッグ・ノーズリングなどとは無縁の生活を送っている。最近のドラマで頻繁に登場するワイルドなパーティガール的ティーンエイジャーとは対極の、「お転婆な南部のお嬢様」的キャラが新鮮だ。
2人は宗教と愛とセックスの関係に悩み(つまり聖書の教えを都合よく現実的に解釈し)、傷つき、立ち直り、またこのサイクルを繰り返す。その姿はけなげで痛々しい。一方で、恵まれた女子高校生とバウンティハンターの二重生活に奮闘する姿は、そのギャップと非日常性で笑わせてくれる。
ストーリーは、バウンティハンター姉妹の縦横無尽の活躍と恋のゆくえを中心に展開する。それだけで十分に面白いのだが、シーズン後半では母親デビーの過去が明らかになるにつれてツイストが加わり、最終回に衝撃のサプライズが投下されて終わる。このサービス精神には恐れ入った。早くシーズン2が観たい。
“Teenage Bounty Hunters”は、“Veronica Mars”以降で最高の底抜けに愉快痛快なティーンエイジャー・ドラマなのだ!
邦題は『めちゃくちゃ恋するハンターズ』(めちゃくちゃ残念なタイトルだ)。Netflixオリジナルでシーズン1(各43-59min、全10話)を配信中。
この快作をティーンエイジャーに独占させるなんて勿体ない!
<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」#51
Title: “Nothing’s Gonna Stop Us Now”
Artist: Starship
Movie: “Mannequin” (1987)
“Sex and the City”のキム・キャトラルがブレークした一作。
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
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