これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第77回 “OUTER BANKS”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第77回“OUTER BANKS”
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
「宝探し」に胸が弾む、痛快なアクション・アドベンチャーを見逃すな!
これ、ストーリーは荒っぽいけど無茶苦茶面白い。気持ちが若返って主人公たちの「冒険」に心が躍り、「宝探し」に胸が弾む。
“Outer Banks”は、負け犬のティーンエイジャーたちが「黄金伝説」に挑む、痛快なアクション・アドベンチャーなのだ!
“Welcome to the Outer Banks, Paradise on Earth”
―ノースキャロライナ州東岸の砂州島アウターバンクス
大西洋に面したこのビーチリゾートは、富裕層が住む北部と、貧困層が住む南部に二分される。富裕層の性悪ティーンエイジャーたちはクーク(“Kook”:金満小僧)、南部の不良グループはポーグ(“Pogue”:捨てられる魚)と呼ばれ、激しく対立している。経済格差は、若者たちの生活にも色濃く反映されているのだ。
ジョンB(チェイス・ストークス)は、向こう見ずなポーグのリーダー。シングルファーザーだった父親は、9カ月前に海で失踪した。市の担当者は、ジョンBを孤児として里親に出そうとしている。
JJ(ルディ・パンコウ)は、やくざ者の父親と暮らすワイルドなサーファー。ジョンBとは小学校以来の親友だ。
キアラ(マディソン・ベイリー)は、裕福な両親を持つ環境保護主義者。クークから嫌われてポーグに鞍替えし、今ではポーグで唯一の’良識’あるメンバーとなった。
ポープ(ジョナサン・ディヴィス)は、法医学部を目指すポーグのブレイン。優柔不断な勉強オタクで、唯一将来に希望を持てるメンバー。
大型ハリケーン’アガサ’がアウターバンクスを直撃し、島は甚大な被害を受けた。停電が続き、基地局がやられてスマホも使えない。
島の沖合に釣りに行ったポーグの4人は、海中に沈んだ高級クルーザーを発見する。
この日は、漁網に捕らわれた死体も見つかった。近くに住む貧困夫婦の夫と判明するが、なぜか難破したクルーザーはその男の名義になっていた。
4人はダイビング用具を調達して再度クルーザーに赴き、金目の物を回収する。そのとき別のモーターボートが現れ、男二人がいきなり4人を銃撃し始めた。
ジョンBが回収したのは、彼の父親が持っていた古いコンパスだった。クルーザーの事故は父親の失踪と関係しているのだ。ジョンBとポーグの仲間は真相解明を誓う。
そしてあろうことか、謎のコンパスは、4人を島の伝説「沈没船ロイヤル・マーチャント号と4億ドルの黄金」に導いていく!
眩い魅力を放つアンサンブルキャスト!
ポーグメンバーを演じた美男美女4人、チェイス・ストークス、ルディ・パンコウ、マディソン・ベイリー、ジョナサン・ディヴィスは、全員が初のメインロール。皆、達者でしたたかな演技を見せる。特にJJを演じたパンコウの自己破滅的演技は涙を誘う。4人の相性も絶妙で、役柄同様のチームワークが相乗効果を生んだ。
(誰一人16歳に見えないのはご愛嬌ということで。)
後半のエピソードでジョンBと恋に落ちるのが、’クーク・プリンセス’のサラだ。サラを演じたマデリン・クラインは、実生活でもジョンB役のチェイス・ストークと恋人同士になった。
さらにクークのダメダメ息子役の2人、ジョンBの恋敵となるトッパー役のオースティン・ノース、サラのサイコパスの兄レイフを演じたドリュー・スターキーの憎々しさは絶品だ。
とにかく会話が生き生きとしているのでドラマが自然と活気づく。若手アクターたちの間で強烈なケミストリーが働き、本作は眩い魅力を放つアンサンブルドラマとなった!
“Guys, you only live once!”
本作のスイートスポット(ドラマの売り)は、冒険、青春、友情、自由、家族、そして純愛だ。いかにも安っぽいが、「宝探し」がマジックワードとなって、抵抗なく受け入れられる。
ジョンBとその仲間たちはとんでもないトラブルに巻き込まれ、沈没船さながらに沈み続ける。だが彼らの絆は固く、知恵と幸運とチームワークで何とか切り抜けていく。
ストーリーは荒っぽいが、ハリケーンに襲われた島で、しかもスマホが使えないという設定は閉塞感と緊迫感を生む。目前に広がる大海原とのコンントラストが美しい。
謎解き中心のストーリーを支える大道具・小道具は、ハリケーンから始まり、コンパス、秘密の地図、難破船、黄金、殺人、銃撃、カーチェイス、ボートチェイス、海、サーフィン、ビールパーティ、喧嘩、ロマンス、セックス、仲間割れ、愚かな決断、老婆の屋敷、洞窟の探検、暴風雨、と超盛りだくさん。娯楽の要素すべてが詰まったオモチャ箱のようで、これで面白くならないはずがない。
第1話からテンポ良くすぐトップギアに入り、ツイストの効いたラストまでまったく飽きさせない。
“Outer Banks”は、誰もが「冒険」に心を躍らせ、「宝探し」に胸を弾ませる青春ドラマ。負け犬のティーンエイジャーたちが「黄金伝説」に挑む、痛快なアクション・アドベンチャーなのだ!
本作はNetflixオリジナルで、シーズン1(約50分 X 全10話)を配信中。シーズン2の制作も決定している。
「ニューバランスか、持ち主は50歳以上のオヤジだな」 ―これは劇中のジョンBのセリフ。当たっているだけに痛い。
<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」#54
Title: “Nobody Does It Better”
Artist: Carly Simon
Movie: “The Spy Who Loved Me” (1977)
007シリーズでは、作品、テーマソングともこれがいい。
キャロル・ベイヤー・セイガーのアイロニカルな歌詞がいいね。作曲は『スティング』のマーヴィン・ハムリッシュ。
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
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