これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第80回 “THE UMBRELLA ACADEMY”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第80回“THE UMBRELLA ACADEMY”
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
愉快痛快奇々怪々のスーパーヒーローたち!
“The Umbrella Academy”は、Netflixオリジナルの人気シリーズ。『ヘルボーイ』 『シン・シティ』 『300<スリーハンドレッド>』などで名高い、ダークホースコミックスが原作だ。
スーパーパワーを持つ機能不全の兄弟姉妹が繰り広げる、愉快痛快奇々怪々の(『怪物くん』か)スーパーヒーロー・アクションコメディなのだ!
“Meet the super dysfunctional family!”
―1989年10月1日
ロシアでティーンエイジャーの少女が、ほんの数分の間に妊娠して出産した。この奇怪な現象は、同日世界で43例が確認された。
変人の天才富豪家レジナルド・ハーグリーブズ卿(コルム・フィオール)は、その中から7人の赤ん坊を養子にする。そして、大邸宅内にスーパーヒーロー養成機関”The Umbrella Academy”を創設した。
赤ん坊たちの家族は、父親のハーグリーブズ卿、アンドロイドの母グレース(ジョーダン・クレア・ロビンス)、それに高い知性を持つチンパンジーの秘書兼執事ポゴ(アダム・ゴドリー)だ。
ハーグリーブズ卿は子供たちを番号で呼び、一切愛情を示さず、ひたすら彼らに高度な教育と厳しいトレーニングを課した。そのかいあって、6人にスーパーパワーが開花する。
やがて6人の子供たちは協力して武装した銀行強盗を殲滅し、スーパーヒーローとして華々しくデビューした!
―現在
ハーグリーブズ卿が死去し、離散していた兄弟姉妹が集結しつつあった。
頼りないリーダーで童貞の怪力男ルーサー(1号:トム・ホッパー)は宇宙飛行士になっていて、月面調査基地から戻ってきた。
短気な戦闘マシンのディエゴ(2号:デヴィッド・カスタニェーダ)は、変装して夜な夜な悪者退治をしている。
マインドコントロールで人を操るアリソン(3号:エミー・レイヴァー=ランプマン)は、バツイチのセレブ女優だ。
死者と交信する優しいゲイのクラウス(4号:アイルランドの若き名優ロバート・シーアン)はジャンキーで、リハビリ施設から出てきたばかり。
怪物へ変身するベン(6号:ジャスティン・H・ミン)は、任務遂行中に死亡していた。だが彼の霊はまだこの世でぐずぐずしていて、クラウスとコンタクトすることで寂しさを紛らわしている。
唯一スーパーパワーを発現できなかったヴァーニャ(7号:エリオット・ペイジ)は、一家の暴露本を書いてメンバーから総スカンを食らった。今は二流のバイオリニストだ。
突如ハーグリーブズ家の前庭で嵐が巻き起こり、時空空間からファイブ(5号:エイダン・ギャラガー)が出現する。ファイブは、今から8日後に起こる世界の破滅を目撃していた…。
そのころ、「委員会」(”The Commission”)と呼ばれる謎の組織がファイブを抹殺すべく、ぶっ飛んだ殺し屋チャチャ&ヘイゼルを送り込む。
ファイブと6人のメンバーは、委員会と闘いながら地球を救うことができるのか!
主役はファイブとヴァーニャ!
本作の実質的な主人公はファイブとヴァーニャだ。
ファイブはタイムトラベルにより58歳になっているが、姿は13歳のままという設定(なぜか彼だけ名前がない)。本作でブレークしたエイダン・ギャラガーは17歳、独特の話し方と気取った歩き方でファイブを巧みに演じた。時空と時間を瞬間移動しながらのアクションにもスピード感と切れがある。
ヴァーニャ役のエリオット・ペイジは、愛すべき小品『JUNO/ジュノ』(2007)でブレーク(アカデミー賞主演女優賞候補)、『X-MEN』シリーズではキティ・プライドを演じた。地味だが群を抜く演技力で、ワイルドカードとなる本役にピタリとはまった。
(トランスジェンダーのペイジは昨年カミングアウトし、エレン・ペイジからエリオット・ペイジに改名した。)
渋い役柄ながら登場するたびに魅了されるのが、知的チンパンジーのポゴだ。舞台俳優出身のアダム・ゴドリーが、ポゴに声と表情を与えた。
「委員会」の幹部ハンドラーを演じたのがケイト・ウォルシュ。メガヒット医療ドラマ”Grey’s Anatomy”の美人医師アディスン役でブレークし、同役を主役にしたスピンオフ“Private Practice”では主演した。今回は大幅にイメージチェンジして、クルエラ似の悪女を怪演する。
殺し屋ヘイゼルを演じたキャメロン・ブリットン(“Mindhunter”で好演)のトボけた味も捨てがたい。
見よ、機能不全家族の団結力を!
ショーランナーのスティーヴ・ブラックマンは、ドラマ版“Fargo”、“Private Practice”、“Altered Carbon”の製作総指揮/共同脚本で知られる。本作はブラックマンの代表作となった。
まず、毎回趣向を凝らしたタイトルデザインが楽しい(こういう手間の掛け方が嬉しいね)。
原作コミックの世界観をベースに全編スタイリッシュ、枯れたユーモアとCGを駆使したアクションが冴えわたる。さらにBGMの選曲が絶妙で、音楽担当のジェフ・ルッソによるサントラも人気だ。
ストーリー・エンジンは、地球の危機によって復活する機能不全家族の団結力。日本では馴染みのない各キャラは新鮮で、意外と深く掘り下げられている。ケミストリーも申し分なく、ルーサーとアリソンの淡いロマンス、クラウスとベンの兄弟愛、ディエゴと母グレースの絆は感動的。この離れ業が実現したのは、脚本と配役の妙によるものだ。
シーズン2では舞台を′60年代のダラスに移す。米ソの冷戦、黒人人権運動、JFK暗殺など史実を巧みに取り入れて、またまた奇想天外なストーリーが暴走する。仰天サプライズのシーズンフィナーレも満点だ。
“The Umbrella Academy”は、スーパーユニークなスーパーヒーローたちが時空を超えて世界を救う、予測不能、空前絶後のSci-fiアクションコメディなのだ!
本作はNetflixでシーズン2(1話46~60分、各10話)まで視聴できる。シーズン3は現在制作中だ。
またポゴに会いたい…。
<今月のおまけ>
The Umbrella Academy: Dance Scene with “I Think We’re Alone Now” by Tiffany
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
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https://www.jvta.net/blog/5724/
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