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『GODZILLA』が大ヒット中! 初代『ゴジラ』の魅力を再検証

『GODZILLA』が大ヒット中! 初代『ゴジラ』の魅力を再検証

【明けの明星が輝く空に 第53回『ゴジラ』】すでに海外では、ハリウッド版ゴジラの新作映画、『GODZILLA』が公開され、世界各国で大ヒットしている。主役のモンスター、GODZILLAのデザインを見る限り、日本のファンにはウケなかった1998年版『GODZILLA』とは違い、2014年版は本家ゴジラに敬意を表したものになっているようだ。日本では7月に公開されるので、これを機に改めて1954年公開のオリジナル『ゴジラ』を鑑賞してみた。

 
『ゴジラ』が他の怪獣映画(ゴジラシリーズの後続作品を含む)と違うのは、ゴジラという怪獣が“生き物”だと感じられる点だ。誤解を恐れずに言えば、怪獣は怪獣であって生物ではない。それはそうだろう。どう考えてみたところで、炎を吐いたり怪光線を発したりする能力に、生物学的な根拠などない。まったく科学では説明できない存在。だけど、確かにそこにいる。それが怪獣だ。いわば妖怪と同じようなものだが、口から熱線を吐く初代ゴジラも、その意味では変わりない。

 
しかし初代ゴジラには、動物的な一面もあった。それは、銀座で和光ビルの時計台を破壊する、あの有名なシーンだ。ゴジラは、時計台が夜11時の鐘の音を響かせると、反射的にそれに噛みつく。突然の物音に反応し、過剰な行動をとってしまう姿は、まさに動物そのものではないか。噛みつくという行為も、普通の怪獣とは違って動物的だ。ウルトラシリーズに出てくる怪獣なら、前足で横殴りにしているところだろう。和光ビル破壊シーンを見ていると、ゴジラの中に役者が入って演技していることを思わず忘れてしまう。公開当時、本当に和光ビルが壊されたのではないかと確認しに行く観客がいたというけれど、それも不思議ではない気がする。それだけ演出効果抜群のシーンだったのだ。この場面は、怪獣という架空の存在に説得力を持たせるのは、CGに代表されるような映像のリアルさだけではないことを示す、とてもいい例だと思う。

 
他にも、『ゴジラ』がその他の怪獣映画と一線を画す部分がある。怪獣が暴れたら街や人がどうなるかが、きっちり描かれているという点だ。ゴジラ出現の引き金になったのは水爆実験だから、ゴジラは核兵器のメタファーだと思っている人は少なくないだろう。しかし、本田猪四朗監督がゴジラの東京上陸で描いたのは、核の攻撃ではなく東京大空襲だった。ゴジラが通るルートは、太平洋戦争での空爆ルートに重なるそうだ。そしてゴジラが海に戻った後、焼け野原となった街が映し出される。野戦病院には負傷者があふれ、制服姿の女子学生たちが平和を祈って合唱する。この部分だけを見れば、誰しも戦争映画だと思うだろう。

 
一番印象的だったのが、逃げ遅れた親子のシーンだ。死を覚悟した母親が、まだ年端もいかない子供たちに、「もうすぐお父ちゃまのところへ行けるのよ」と言って安心させようとする。「お父ちゃま」という言い方はともかく、この場面の効果は非常に大きい。怪獣襲撃が人々にもたらす悲劇を端的に、そして非常に効果的に表しているからだ。

 
こうして見ると、何やら『ゴジラ』が格の高い怪獣映画に思えてくるかもしれない。ただし、怪獣映画は怪獣映画であり、気楽に見られる部分があってもいい。いや、なくてはならない。最後に僕が『ゴジラ』を見て“俗っぽい”と感じた場面(それは特撮ファンとしては嬉しい“俗っぽさ”なのだが)を紹介して、今回の締めとしよう。それは、ゴジラの存在が示唆的に描かれる場面。航行中の船の真下の海が怪しく光る。すると、その船が激しく燃え上がる。怪獣が登場する際に海面が光るという演出は、のちのウルトラシリーズなどでは基本中の基本。怪獣オタクの漫画家、唐沢なをき氏も「怪獣が登場するときは、絶対に海面が怪しく光らなければならない」と主張するぐらい、怪獣登場には欠かせない演出なのだ。今回のハリウッド版『ゴジラ』の監督が、そのあたりをどの程度理解できているか心配だ。海面を光らせるだけで、特撮ファンの採点はぐっと高くなると思うが、果たしてどうだろうか。劇場で確認せねばなるまい。

 
●明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

 
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【written by 田近裕志(たぢか・ひろし)】
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】
チャリダー(坂バカ限定)の祭典、Mt.富士ヒルクライムに今年も参加した。年々、距離は短く感じる。でもタイムはさして変わらない。ミステリーゾーンだ!
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