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明けの明星が輝く空に 第112回:特撮俳優列伝19 小林夕岐子

明けの明星が輝く空に 第112回:特撮俳優列伝19 小林夕岐子

【最近の私】知り合いに、ある競技の日本代表候補(!)がいるのですが、その人と自転車で「江東区お花見ツーリング」をしました。神奈川県民の僕にとって、普段走らない方面だけに新鮮で楽しかった。橋巡りを組み合わせたのも、正解でした。ただ・・・、寒かった!

 
小林夕岐子さんは、「クールビューティー」という言葉がピッタリな女優さんだった。「だった」というのは、1974年に芸能界から引退されているからだ。デビューしたのは1966年なので、活動期間は8年間と長くはない。それでも、特撮ファンにとって強く印象に残る作品が二つある。

 
まず紹介するのは、ご本人が脚本を読み、「ぜひやりたい」と思ったという東宝映画『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』(1970年)だ。これは「血を吸うシリーズ」の1作目で、続編となる2作目と3作目には、当ブログ『特撮俳優列伝4』(https://www.jvta.net/co/akenomyojo90/)で紹介した岸田森さんが、吸血鬼役として出演。快演を披露している。

 
小林さんが『幽霊屋敷の恐怖~』で演じたのは、交通事故による死の直前、特殊な「術」をかけられ、生きる屍となってしまった野々村夕子だ。彼女の出自には、ある悲劇が隠されており、夕子は母親の怨念が乗り移ったかのように殺人を犯していく。人を襲う際には、無言で笑みを浮かべるのだが、この笑顔が怖い。相手を怖がらせようとする陳腐なものではなく、殺人が楽しいといった雰囲気がにじみ出ていて、心底ゾッとしてしまう。

 
当初、夕子は特殊メイクで醜い顔にする予定だったそうだが、その案は却下された。その判断は正しかったと言っていいだろう。小林さんの美しい顔が見られなくなるから、というだけではない。醜悪な顔で怖がらせる演出にすれば、それはもうバケモノ映画になってしまう。お岩さんは例外としても、日本の幽霊はみな美人で、美しいからこそ恐ろしい。そういった感覚が、僕ら日本人には少なからずある。夕子の美しいイメージを壊さなかったからこそ、彼女の悲劇性が際立ち、感情移入も可能となる。

 
もちろん、青白い顔にするなど、生きる屍にふさわしい最小限のメイクは施されているが、一番特徴的なのは光る目だ。その表現には、黄色のコンタクトレンズが使用されているのだが、現代のカラーコンタクトと違い、塗料で色づけしたものだったそうだ。そのため視界がまったく利かず、セットの中で指示通りに動くのが難しかったと、小林さんは撮影当時を振り返り述懐している。

 
小林さんのもうひとつの代表作は、『ウルトラセブン』第9話「アンドロイド0指令」だ。小林さんは、侵略星人の手下として使われるアンドロイド役で出演している。アンドロイドだけにほとんど表情を変えないのだが、こういった役も小林さんはピッタリだ。美人というのは、幽霊だけでなく無機質な機械の役も合うのだなあと、作品を見返していて妙に感じ入ってしまった。実は、第9話を担当した満田かずほ監督(https://www.jvta.net/co/akenomyojo71/)が、ある日撮影所にいる小林さんを見かけ、アンドロイドが登場するエピソードを思いついたのだそうだ。似合うはずである。

 
アンドロイド役なので、撮影では瞬きを控えるよう指示があったという。小林さんのようにぱっちりした目では、乾いてしまってさぞかし大変だったのではないかと心配になるが、ご本人はあまり苦にならなかったそうだ。結果的には、それもアンドロイドを演じるにふさわしい素養だったと言えるかもしれない。むしろ大変だったのは、石膏を顔に塗られ30~40分動かずにいたことだったようだ。劇中、機能停止中のアンドロイドはマネキン人形のような姿になるのだが、それを小林さんに似せるため、石膏で型取りが行われたのだ。それも、呼吸できるように鼻と口にストローを刺した状態で! 当時の小林さんは、まだ20歳そこそこ。うら若き乙女が・・・と、心中慮られる。

 
それはともかく、小林さん演じるアンドロイドは、ビジュアル面での印象が強烈だった。衣装は金色のワンピースに金色のストッキングで、髪も金色のウィッグ。そんな姿で、暗い夜道、車のヘッドライトが照らす中に突如現れ、無機質な表情で話しかけてくる。ときおりマネキンの姿になるあたりも、不気味さを増幅している。一度観たら忘れないインパクト。特撮史上、屈指の名キャラクターだろう。

 
生きる屍にアンドロイド。人間ではない「人外の者」が、これほど似合う俳優は、それほど多くはないと推察される。小林さんは、その美貌を特撮作品ならではの役柄で生かし、僕らの心に刻まれる女優さんになった。

 
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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

 
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