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明けの明星が輝く空に 第79回 ウルトラな一日パート1

明けの明星が輝く空に  第79回 ウルトラな一日パート1

【最近の私】『シン・ゴジラ』は、「神」の概念がハリウッド製の『GODZILLA ゴジラ』とは全く違っていた。こんなところにも日米の文化の違いが表れているのは、興味深い。
 

先月の7月9日、僕は一日中ウルトラ漬けだった。昼間は、イベント『ウルトラマンの日in杉並公会堂』に足を運び、夜はテレビにかじり付いて、NHK BSプレミアムの『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』を見ていたからだ。両者について触れると大変な長文になってしまうので、今回は前者、『ウルトラマンの日in杉並公会堂』についてご紹介することにしよう。後者は、いずれ記事にしたいと思う。
 

トークショーとコンサートで構成された『ウルトラマンの日in杉並公会堂』は、7月9日と10日の二日間、土曜日と日曜日に開催された。杉並公会堂(東京都杉並区)が会場に選ばれたのは、今から50年前の1966年7月10日、『ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生』と銘打ったイベントが行われた場所だからだ。
 

僕は、いつくか行われるトークショーのうち、『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督が出演する回と、ウルトラ俳優の森次晃嗣さん、桜井浩子さんが出演する回を選んだ。樋口監督に関しては、これまで当ブログで何回か記事を書いているので、そちらをご参照いただきたい。
 
第32回「失われゆく(?)技」(このコラムを読む)
第68回「『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』」(このコラムを読む)
第70回「日本の特撮は進撃できるか」(このコラムを読む)
 

今回、樋口監督のトークの中で印象的だったのが、「特撮スタジオ見学に通っているうちに、作業を手伝うようになり、結果的に作る側に回った」というエピソードや、「いまでも作り手側にいるより、トークショーの客席側にいたい」というカミングアウト的内容の発言だ。いかに樋口監督が特撮好きかということが、その言葉から伝わってくる。だからこそ僕は、去る7月29日公開の『シン・ゴジラ』に大いに期待していたのだが、実際に僕の期待通りの、いやそれをはるかに凌ぐ出来ばえの映画に仕上がっていた。(『シン・ゴジラ』のレポートは、次回の予定。乞うご期待)
 

もうひとつのトークショーに出演した森次さんは、あの『ウルトラセブン』の主役、モロボシ・ダンを演じた俳優さんだ。森次さんの姿を実際に見るのは、これが初めてだった。舞台上に憧れのヒーローを演じた俳優が現われたとき、「本物のダンが、いま目の前に」と思ったら、体の奥の奥の方で、かすかな震えを感じた。放送から50年近くたって(『ウルトラセブン』は来年が50周年)ようやく会えたということに加え、そんなにも長く心の中に生き続けているヒーローがいるという事実が、自分にとっては言葉にならないくらいうれしいことだったのだ。
 

森次さんの話を聞いていて、ドキッとした瞬間があった。『ウルトラセブン』の欠番エピソード、第12話「遊星より愛をこめて」(当ブログ第77回「幻の一作」(このコラムを読む)に話が及んだときだ。タブー視されている作品の話題を、ウルトラシリーズの公式イベントで持ち出すとは、なんて大胆な! 客席後方には、円谷プロダクションの大岡進一社長を含む上層部の方々も来ていたようなので、あとで問題になりやしないかと心配になってしまった。もっとも森次さんは、第12話のことを「ダメになっちゃったやつ」と冗談めかした言い方で会場の笑いを誘い、「(ファンが)見られないのは残念」と言うに留めていたので、円谷プロの方々も笑顔で聞いていた。あれが、お客さんの手前、取り繕った笑顔ではなかったことを祈りたい。
 

森次さんとトークをした桜井浩子さんは、『ウルトラQ』で報道カメラマンの江戸川由利子、続く『ウルトラマン』で科学特捜隊のフジ・アキコ隊員を演じ、“シリーズ創世記”を支えた女優さんだ。今回、桜井さんからは「特撮は見るもので、やるものじゃない!」という名言(?)が飛び出した。『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」には、宇宙人に巨大化させられたフジ隊員が、操られるがままビルを手で叩き壊す場面がある。怪獣の着ぐるみを着ていれば手も傷つかないが、彼女は隊員服姿で薄い手袋をしているだけだった。しかも桜井さんは操られているという設定上、焦点の定まらない視線を正面に向けたままの演技だったので、ミニチュアセットの壊れやすい部分を的確に叩けず、非常に痛い思いをしたそうである。特撮映像の裏には、こんなスタッフや役者の苦労があるのだということを、あらためて感じられるエピソードだ。
 

桜井さんは、こんなことも言っていた。「あの頃は、50年後もウルトラの仕事ができるなんて思っていなかった」。50年たっても、忘れられるどころか、愛され続ける作品とキャラクターの数々。ウルトラシリーズの偉大さを、これ以上端的に示す言葉があるだろうか。
 

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る