子どもが消える時、恐怖のピエロが現れる ビル・スカルスガルドin『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』
【最近の私】今月末から東京国際映画祭が開催されます。トニー・レオンがコンペ部門の審査委員長に。他にもゲストが大勢来るそうなので、盛り上がるといいですね。
今年もハロウィンの季節が来た。当コラムでは、ハロウィンの時期になるとホラー系の映画の予告編や悪役を紹介している。今回は、2017年のホラー映画『IT/イット “それが見えたら終わり。』(以下『IT』と略す)でビル・スカルスガルドが扮した恐怖のピエロを紹介したい。
物語の舞台は1988年10月。メイン州デリーの小さな町。どこにでもある穏やかな町のように見える通りで、少年ジョージーが、兄の作ってくれた紙の船を水に浮かべて遊んでいた。その船が排水溝に流れこみ、覗き込んだジョージーが、闇に潜むピエロにつかまり、引きずり込まれてしまう。映画は強烈な場面から始まる。
弟の失踪で自分を責めるビルは、夏休みの間に親友たちとジョージー失踪事件を調べようとする。そして、この町では、27年ごとに子どもたちが大勢失踪していることに気づく。そして、事件の背後にはピエロの姿をしたペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)がいることを突き止めるが、彼はビルと親友たちの前に現れるようになった。
ペニーワイズは子どもたちに恐ろしい幻覚を見せる力を持っている。ペニーワイズは、少年少女たちの恐怖に怯える心を糧にして生きているからだ。この幻覚は、子どもたちの個人的な恐怖(弟の失踪、学校でのいじめ、家庭環境など)を反映させて幻覚として見せる。だがビルたちは、ただ恐怖に怯えているだけではない。それぞれの恐怖に打ち勝ち、ペニーワイズに立ち向かおうとする。この作品はホラーでありながら、ビルたちが協力して成長する姿を描いている。舞台が80年代ということもあり、ちょっとノスタルジックな『スタンド・バイ・ミー』(1986年)を思わせる青春物語でもある。
『IT』はホラー作家スティーヴン・キングの小説が原作である。1990年に『IT/イット』としてTVドラマ化されている。原作が大長編なので、2部作のドラマとなった。このドラマ版ではティム・カリーがペニーワイズに扮していて、このピエロも怖かった記憶がある。
2017年の映画版で、ペニーワイズを演じているのはビル・スカルスガルド。1990年にスウェーデンで生まれた。父親は『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)などに出演しているベテラン俳優ステラン・スカルスガルド。兄アレクサンダー・スカルスガルドも『ターザン:REBORN』(2016年)で主役を演じており、母国だけではなくハリウッドでも活躍している俳優ファミリーである。
ビル・スカルスガルドは2010年のスウェーデン映画『シンプル・シモン』(2010年)で注目を浴び、Netflixのホラードラマ『ヘムロック・グローブ』(2013年~2015年)、映画『ダイバージェントFINAL』(2016年)などに出演し、以降はハリウッドでも俳優活動を行っている。最近では、ブランドン・リー主演でカルト的人気を得ている『クロウ/飛翔伝説』(1994年)のリブート版『The Crow』(原題、2024年)で主役を演じている。予告編を観ると、ダークな世界観が受け継がれており、日本公開を期待したい。
『IT』でスカルスガルドが演じるペニーワイズは白塗りのピエロメイクも不気味だが、彼は監督と一緒に奇怪な笑い声や体の動きなども作り上げたという。また撮影中には、少年少女の俳優たちとは緊張感を保つために、距離をおいて1人で過ごすなど、役作りにもさまざまな苦労があったのは想像できる。ホラー映画が好きな人にはもちろん、“ペニーワイズが怖そうだけど、ちょっと観てみたい”と思う人にも、観ていただきたいです。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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