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アジア映画悪役紀行① 真の悪党は隣にいる!ハ・ジョンウ in『チェイサー』

アジア映画悪役紀行① 真の悪党は隣にいる!ハ・ジョンウ in『チェイサー』

【最近の私】今回紹介した『チェイサー』は、日本公開時にハリウッドでリメイク決定と聞いたのですが、計画は進んでいないようです。
 

当コラムでは、主にアメリカ映画に登場した悪役について書いてきたが、これから数回は、アジア映画の悪役について書いていきたいと思う。今回は韓国映画『チェイサー』でハ・ジョンウが演じた凶悪犯を紹介したい。
 

舞台はソウル。元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)は、女性を男性に派遣する風俗店を営んでいた。ある日、ジュンホの店で働く女性が続けて行方不明となる。ジュンホは彼女たちが手付金だけもらって逃げたと考えていた。そんななか、店の常連のヨンミン(ハ・ジョンウ)からの依頼で、ジュンホは1人娘がいるシングルマザー、ミジンを派遣する。
 

ヨンミンはミジンを自宅に連れて行き、彼女を縛って浴室に監禁する。ヨンミンは金槌やノミなど、金属製の道具を色々と彼女の目の前に広げ、「この前の女は舌を抜いてやった」と淡々と話す。「私には7歳の娘がいるの。だから家に帰して」と懇願するミジン。だがヨンミンは「誰もお前を探さない」と絶望的な言葉を吐く。観客は思わず「ひどいヤツだな」と言いたくなる場面である。
 

ヨンミンの自宅とされる家は大きくて、1人で住むには広すぎる。どうも他人の家に住んでいるようなのだが、ではこの家の持ち主は…。さらにヨンミンは、自宅を訪ねてきた自治会の夫婦を、何気なく殺してしまうなど、隣に住むサイコパスっぷりを発揮します。ヨンミンは、どこにでもいるような普通の男で、見た目が地味だし、もの静かな話し方で態度は紳士的だ。だが、その奥に潜む暴力的な感情が突然爆発し、女性を監禁して殺害したり、近所の住民を迷わず殺したりしてしまう。そのギャップが、本作で最も恐ろしい点だといえる。
 

一方、ジュンホは元刑事の推理力を発揮し、ヨンミンの自宅周辺を調べるうちに周囲をうろつくヨンミンに遭遇。ヨンミンを捕えて警察に連れて行く。取り調べで、ヨンミンは「女の人を12人殺しました。絞殺や刺殺だと苦しいので、金槌とノミで殺しました」とあっさり自供を始める。だが、何とヨンミンは証拠不十分で釈放されてしまう。同じ韓国映画『殺人の追憶』でも、警察が連続殺人事件の容疑者として捕えた男性を、ずさんな捜査で無理やり犯人に仕立てあげようしていた。この作品も警察の捜査能力のなさがまた、恐ろしいのである。
 

物語は、ミジンの居所を探すジュンホ、警察で取り調べを受ける殺人鬼ヨンミン、そして監禁された場所から逃げようとするミジンの3人を軸に進む。ヨンミンが戻る前にミジンは逃げられるのか。観ていて本当にハラハラしますよ。
 

ジュンホは最初、ミジンから手付金を取り返そうと彼女を追う。だがミジンの娘と一緒に追跡するうちに、自分がミジンを危険な目に遭わせたという負い目からか、何とか彼女を救い出そうと、さらに執念深くミジンの行方を探すようになる。そんな彼の心象の変化も、この映画の見どころだ。果たしてジュンホはミジンを救うことができるのか。正直、暴力的な場面や救いのない展開もあるのだが、元刑事が凶悪な殺人犯を追跡するサスペンスとして、見応えのある作品となっている。
 
 

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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!