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【悪役コラム】もしタクシーに乗った客が殺し屋だったら…。トム・クルーズ in『コラテラル』

【悪役コラム】もしタクシーに乗った客が殺し屋だったら…。トム・クルーズ in『コラテラル』

【最近の私】『シン・ゴジラ』予告編を見ました。新しいゴジラは、なかなか凶暴そうなデザインですね。夏の公開が楽しみです。
 

前回の予告編コラムで、善人から悪役まで幅広い役を演じるケヴィン・ベーコンについて書いた。今回はその続きというわけでもないですが、人気俳優がそれまでのイメージを変えるようなキャラクターに扮した映画を探してみた。その中で見つけた1本、『コラテラル』でトム・クルーズが初めて挑んだ悪役を紹介したい。
 

『コラテラル』はロサンゼルスを舞台にした、ある一夜の物語だ。タクシー運転手のマックス(ジェイミー・フォックス)の車に乗ってきたのは、銀髪でビジネスマン風の男、ヴィンセント(トム・クルーズ)。ヴィンセントは「これから5人の取引先に会って、明日の朝にロスを発つ。一晩、このタクシーを貸し切って、自分を乗せて走ってほしい」と持ちかける。「貸し切りは会社の規則違反だから…」と渋るマックスだが、600ドルの報酬という誘惑には勝てず、結局この提案を引き受けてしまう。実はヴィンセントは殺し屋で、5人を殺した後、マックスにその罪を着せて殺し、彼が自殺したように見せかけるのが目的。だからわざわざタクシーを拾って、殺しをするのだ。でも、これってかなり手間がかかりませんか? タクシーで行くより、レンタカーを借りて自分で行動する方が、ずっと楽だと思うのですが…。それとも、ヴィンセントは自動車の免許証を持っていないのかも。実際、1人目を殺した時点で、ヴィンセントの正体がマックスにばれてしまう。マックスはヴィンセントに脅され、そこから恐怖の夜のドライブが始まる。
 

ヴィンセントは冷酷で、完璧な殺人マシーンだ。「地球という小さな石に張り付いているのが人間だ」と人の命を奪うことに躊躇しない。人を信用せず、他人に無関心な男だ。トム・クルーズは銀髪でひげを伸ばし、笑顔を見せないヴィンセントをクールに演じている。一方、マックスは真面目なタクシーの運転手。リムジンタクシーの会社を興すことを夢みながら12年働いてきたが、未だに実現していない。実行に移す勇気がないのだ。映画の終盤、マックスは、ヴィンセントに「お前は本気でやろうと考えていない。お前はある夜、目が覚めて気がつく。夢を叶えることなく老いていくとな。自分の夢を記憶の隅に押しやって、昼間からテレビをボーッと眺めるんだ」と看破される。痛い所を衝かれて言い返すことができず「ちくしょー」と悔しそうな表情を見せるマックス。しかし、ここからマックスが意外な行動に出るのだ。
 

この映画で興味深いのは、マックスとヴィンセントの関係だ。マックスは自分の人生をどう生きるかを深く考えず、夢を叶えることもできない。そこに現れたのは、常に自信を持つ凄腕の殺し屋ヴィンセントだ。ヴィンセントがマックスのタクシーに乗ったことで、マックスは最悪の状況を切り抜けようと知恵を絞り、行動を始めるのだ。序盤ではマックスがヴィンセントの言いなりになっているが、徐々に2人の関係は変化し、ついには対決する。その結末がどうなったかは、ぜひご自身で見届けてほしい。
 

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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!