【追悼】あの悪役を演じた俳優、アラン・リックマンin 『ダイ・ハード』
【最近の私】『スター・ウォーズ』スピンオフ『Rouge One(原題)』は、エピソード3と4の間の物語になるそうです。ということは、ダース・ベイダーが登場するのか?とても気になります。
今年の1月14日、イギリス人の俳優アラン・リックマンが69歳で亡くなった。奇しくも1月10日に亡くなったデヴィッド・ボウイと同じ年齢である。若い世代の映画ファンだと、アランは『ハリー・ポッター』シリーズで彼が演じたスネイプという印象が強いと思う。だが1980年代の映画ファンだと、彼の代表作は『ダイ・ハード』(1988年)になるのではないか。今回は追悼の意を込めて、アランが『ダイ・ハード』で扮した悪役、ハンス・グルーバーを紹介する。
舞台はクリスマスのロサンゼルス。日系企業ナカトミ商事のビルでは、重役や社員たちを集めたクリスマスパーティが開催されていた。ニューヨーク市警の刑事ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、別居中の妻が勤めているナカトミ商事を訪れる。そこにハンス(アラン・リックマン)率いる武装テロリストのグループが侵入し、社員たちを人質にしてビルを占拠。人質になる危機を逃れたジョンは、たった1人でテロリストたちと戦うことになる…。
それまでの80年代のアクション映画では、シルヴェスター・スタローンの『ランボー』や、やアーノルド・シュワルツェネッガーの『コマンドー』など、鍛え上げた筋肉を誇示した無敵のヒーローが悪を倒すというパターンが流行っていた。だが『ダイ・ハード』の主人公ジョンはごく普通の中年で、愚痴を言いながら犯罪者たちと孤軍奮闘する。その姿が、これまでにない新しいアクション映画の形となったのだ。
ジョンに対して、アラン演ずるハンスは、高級スーツを着て穏やかに話す知的な紳士である。彼はテロ作戦を緻密に立て、部下たちを指示し、あっという間にビルを制圧する。だが必要とあれば、人質のナカトミ商事の社長を迷わず撃ち殺すという冷酷な面も見せる。それまでのアクション映画に登場したギトギトした悪役と一味違うクールでスマートな点が、観客には新鮮に受け取られたのではないか(アランの低音の声も、彼の魅力のひとつだろう)。余談だが、この作品の脚本は、『コマンドー』の続編として書かれたものだという。しかし、主演のシュワルツェネッガーが興味を持たなかったので、続編という企画は中止となり、改稿して設定の変更を行い、『ダイ・ハード』として製作された。もし本作が『コマンドー』の続編だったら、どんな映画になっていたのか、興味深いところである。
ハンスの最期についても話しておきたい。映画の見どころとして、悪役がどんな死にざまをするかは重要だ。悪役が悲惨な死に方をすると、観客に「やった!」というカタルシスを感じさせるからだ(アランを追悼しているのに死にざまを書くのは不謹慎ですかね…)。ビルの窓から落ちていく場面で、ハンスは「落っこちる~!」という迫真の表情をしながら地上に落ちていく。この映画を初めて観た時、ハンスの表情がとてもリアルだったので強く印象に残っていた。このシーンには裏話がある。撮影中にスタッフが窓にぶらさがるアランの腕をつかみ、「1、2、の3で手を離しますね」と言っていたのに、本番では「1」の時にスタッフが手を離したという。アランの見事な演技だと思っていたのだが、実はカメラが捉えたのは、「聞いていた話と違うよ~!」という、リアルな表情だったのだ。まさに名優のアドリブが演技に勝ったシーンである。もうアランの姿を新作で観ることができないのは寂しい限りだ。そんな時は、最後の落下シーンも含めて、『ダイ・ハード』を観て偲ぶことにしよう。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!