誰も観たことのないワンダフル・ストーリー 『犬ヶ島』の予告編
【最近の私】JVTAの講師、修了生の方たちと久しぶりに会いました。皆さんから色々な話を聞いて、自分も頑張ろうと思いました。
今年は犬年。犬が登場する映画といえば『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や『僕のワンダフル・ライフ』など数多くある。そんな“犬映画”の中から、今回は5月に公開されるウェス・アンダーソン監督の新作『犬ヶ島』の予告編を紹介したい。
予告編は「ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)受賞」のテロップから始まる。本作の舞台は、現在から20年後の日本にあるメガ崎市という架空の都市。ラーメン屋や相撲など、外国人から観たら“クールジャパン”な描写も登場する。メガ崎市でドッグ病が蔓延し、小林市長は犬たちを犬ケ島に隔離することを決める。この島には犬たちがさまよっている。ある日、犬ヶ島に1人の少年が飛行機で降り立つ。少年の名前はアタリ。市長の息子で、彼の飼っていた犬を探して島にやってきたのだ。
予告編を観れば分かるが、今作は全編がストップモーション・アニメで撮影されている。ストップモーション・アニメとは、俳優の代わりに人形(パペット)を使い、その人形の動きを少し変えて1コマずつ撮影するという、気の遠くなる作業が必要だ。だが手間がかかる分、その独特な世界感を表現することができる。ストップモーション・アニメは古くから使われている技術で、何と1900年代の頃から使用されている。1990年代の作品で良く知られているのは『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』がある。CGが主流になっている現在でも、2017年に『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が話題となった。ちなみにアンダーソン監督はこれまでも『ファンタスティックMr.フォックス』をこの技法で撮影している。
人形といっても、細やかな動きをできるような精巧なクオリティを持っており、本作の公式サイトでメイキング動画を見ることができるので、チェックしてほしい。ちなみに、アンダーソン監督は日本映画へのリスペクトを表しており、小林市長は三船敏郎がモデルとなっているという。三船敏郎は『七人の侍』をはじめ、海外でも名を知られた日本人俳優である。また監督は宮崎駿のアニメーションにも敬意を表しており、日本人としては嬉しいですね。
犬たちの声を担当する俳優も豪華だ。『スポットライト 世紀のスクープ』のリーヴ・シュライバー、『ブレイキング・バッド』のブライアン・クランストン、アンダーソン監督作の常連であるビル・マーレイなど。彼らが声を演じる犬たちは、どこか俳優たちに似ている作りになっている。舞台が日本なので、渡辺謙や夏木マリも出演しています。
予告編から、とても作家性の強い作品だとわかるが、外国人が日本を舞台にした映画を製作すると、公開時に日本の観客の中には「この日本の描写は正しくない! 本当の日本じゃない!」と憤る人もいる。でも個人的には面白ければそれでいいと思って観ている。アメリカ人が作ったラーメンでも、おいしければOKなんですよ。アンダーソン監督による、日本愛にあふれる映画にノらなければ損である。少年アタリは無事に愛犬と再び出会うことができるのか? それは映画館で確認してきます!
今回注目した予告編
『犬ヶ島』
監督:ウェス・アンダーソン
声の出演:リーヴ・シュライバー、ブライアン・クランストン、ビル・マーレイ、渡辺謙
2018年5月25日公開
公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/inugashima/
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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