中国武術VSボクシング! ダーレン・シャラヴィ in 『イップ・マン 葉問』
【最近の私】今回取り上げた『イップ・マン』シリーズの新作『イップ・マン 完結』が5月に公開されることに。シリーズが終わるのは残念ですが、楽しみにしています。
香港の俳優、ドニー・イェンが『イップ・マン 序章』(2008年)で演じた実在の人物、イップ・マンは当たり役となった。映画はヒットを記録し、続編も製作されている。この悪役コラムでも『序章』の池内博之(https://www.jvta.net/co/cinemach-ipman/)、『イップ・マン 継承』(2016年)のマックス・チャン(https://www.jvta.net/co/cinemach-ipman3/)を紹介してきた。今回は『イップ・マン 葉問』(2010年)で悪役を演じたダーレン・シャラヴィを紹介したい。
本作の舞台は1950年の香港。この地で武術道場を開いた詠春拳の達人イップ・マン(ドニー・イェン)。この時代、香港はイギリスが統治しており、イギリス人の警官による汚職が横行していた。イギリス主催のボクシング大会で、香港の武術館による演武が披露される。そこに登場したイギリス人のボクサー、ツイスター(ダーレン・シャラヴィ)が「中国のボクシングなんて、踊りのようなものだな!」と演武に乱入し、武術館との乱闘となる。中国武術をひとくくりに「中国ボクシング」との発言も、中国人への差別意識が明らかでイラッとします。イップ・マンと同じ武術の師匠であるホン(サモ・ハン・キンポー)が、「中国武術を侮辱するな、謝罪しろ!」と激怒。それを受けてツイスターが、「俺と戦って勝ったら謝罪してやる」と応じ、中国武術とボクシングの対決が始まります。ツイスターの強力なパンチを受け、ホンは命を落とす。香港の新聞でツイスターの言動が叩かれると、イギリス側は、再度中国武術家とツイスターの試合を開催する。ツイスターは「中国人の武術家は皆殺しにしてやる」と相変わらずの強気発言。そこでイップ・マンが「自分が戦う」とホンの恨みをはらすべく、リングに立つ…。
主人公の前に外国から来た強敵が現れる。まず主人公の友人がその敵と戦い命を落とす。死んだ友人のために主人公がその敵と対決する『イップマン』のストーリーは、『ロッキー4/炎の友情』(1985年)とほぼ同じである。いかに悪役が憎たらしく、強いかがポイントとなる。その点では、ダーレンは圧倒的に強く、憎々しげに悪役ツイスターを演じており、観ている人は、「このイギリス人、最悪だな!」と思うはずである。
ツイスターを演じるダーレン・シャラヴィは、イギリス出身の俳優・格闘家である。ダーレンは幼少時にブルース・リーの映画を観て、武術を始める。15歳の時、イギリスで開催されたアクションセミナーに参加する。そのゲストして招かれたのが、ドニー・イェン。ダーレンはドニーとの共演を夢見るようになる。『イップ・マン』で彼が演じた中国への差別とは真逆の、中国武術への憧れを持つ人でした。
ダーレンは1990年代初めに香港に移住し、『太極神拳』(1996年)などに出演する。その後はハリウッドにも進出し、スティーヴン・セガールとの共演作『沈黙の復讐』(2010年)、ジャン=クロード・ヴァンダム主演『マキシマム・ブラッド』(2014年)などに出演した。『イップ・マン』でドニーとの夢の競演を果たしたダーレンだが、2015年に42歳の若さで死去。もっと彼が戦う姿を映画の中で観たかったのに残念である。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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