詠春拳VS詠春拳! マックス・チャン in 『イップ・マン 継承』
【最近の私】10月の公開作では『ジョーカー』『ジョン・ウィック:パラベラム』が観たいです。あとハロウィンまでに『ハロウィン』最新作もDVDで鑑賞します。
映画では、最初は敵やライバルだったが、後に友人や心を通じ合わせる物語がある。『ロッキー』(1976年)でのロッキーとアポロなどだ。今回は『イップ・マン 継承』(2016年)で登場したマックス・チャンを紹介したい。
物語は、1959年の香港から始まる。詠春拳の達人であるイップ・マン(ドニー・イェン)は、この地で道場を開き、妻と息子と暮らしていた。ある日、息子が学校で友人と喧嘩をする。息子の喧嘩の相手の父親、ティンチ(マックス・チャン)は、詠春拳を習得しており、イップ・マンとは兄弟弟子だった。ティンチは車夫として生計を立て、息子と2人で暮らしており、その暮らしは楽ではなさそうだ。そこにアメリカ人の不動産王フランク(マイク・タイソン!)が、イップマンとティンチの息子たちが通う小学校を買収しようとしたことから、イップ・マンとティンチの関係は意外な展開をしていく。
マックス・チャンは1974年生まれ。9歳から本格的に武術を学び、さまざまな武術大会で優秀な成績を収める。香港の武術監督ユエン・ウーピンのアクションチームに加入し、『グリーン・ディスティニー』(2000年)ではスタントマンを務め、俳優として『グランド・マスター』(2013年)で注目される。『ドラゴン×マッハ!』(2015年)では極悪な刑務所長を演じている。ハリウッドへも進出し、『パシフィック・リム:アップライジング』(2018年)に出演。『大脱出3』(2019年)でシルヴェスター・スタローンと共演し、これからも要チェックの俳優である。
本作ではイップ・マンと不動産王フランクによる、詠春拳VSボクシングの迫力ある戦いがある。だが何と言っても注目は終盤のイップマンとティンチの詠春拳VS詠春拳のバトルでしょう。だがティンチは完全な悪役ではない。彼は詠春拳の達人だが、自身の道場を開く資金もない。そのため金のために闇の賭け試合に出場している。一方、イップマンは大勢の弟子を持ち、詠春拳を広めて人々から敬意と脚光を集めている。同じ詠春拳の使い手ながら、この違いは何なのか。ティンチは自身の道場を開くと、他流派の師範たちを叩きのめし、それを新聞に書かせることで注目を浴びる。そして「自分こそが詠春拳の後継者だ」とイップ・マンに挑戦状を叩きつける。強さと名声に誘惑される弱さを持ち合わせている点が、単なる悪役とは一線を引いていると思います。
本作でのイップ・マンとティンチは武術の達人同士、また父親同士でもある。イップ・マンは平和主義で、むやみに戦うことを嫌う。一方、野望に燃えるティンチは自身の強さを認めさせるために戦う。マックスは武術の達人であるが、それに加えて影のある表情と、野心を秘めた演技で、ティンチを巧みに演じていた。イップ・マンとティンチは拳だけではなく、さらに剣、棒を交えての華麗で激しい戦いを繰り広げる。この映画でティンチの人気が高かったのだろう。彼が主人公のスピンオフ『イップ・マン外伝 マスターZ』(2018年)が製作された。本作を見てティンチに魅了された人にはおすすめですよ。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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