チャイニーズ・マフィアの若き龍 ジョン・ローン in 『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』
【最近の私】最近は自宅で映画鑑賞しています。夏になると『スタンド・バイ・ミー』『学校の怪談』『JAWS/ジョーズ』などが観たくなりますね。
マフィアが登場する映画はこれまで数多く作られており、『ゴッド・ファーザー』(72年)や『グッド・フェローズ』(1990年)など、高い評価を受けている作品も少なくない。今回はその中で、ジョン・ローンが『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(1985年)で演じたチャイニーズ・マフィアのボスを紹介したい。
『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(以下『YOD』と略す)の舞台はニューヨーク。スタンリー・ホワイト刑事(ミッキー・ローク)がチャイナタウンに配属となり、チャイナマフィアの摘発を開始する。しかし上層部は彼のいきすぎた捜査に反対する。一方、チャイニーズマフィアの新しいボスとなったジョーイ・タイ(ジョン・ローン)は、これまでの組織を拡大するために、過激な行動を起こす。周りの幹部からは、急ぎすぎて組織を危機に陥れると忠告される。スタンリーは中国系の警官をマフィア内に潜入捜査として送り込む。対して、ジョーイは殺し屋をスタンリーの元に向かわせる。身内からも孤立しながらも、スタンリーとジョーイの対決はさらにエスカレートしていく。
主人公のスタンリーはベトナム戦争帰りの男で、アジア人を憎んでいる(だが愛人はアジア系)。仕事にのめり込むあまり、妻との結婚生活が破たん寸前だ。差別的な態度を隠さず、同僚と平気で衝突するスタンリーの捜査は、家族や同僚、愛人を危険な目に巻き込んでいく。周りからすればかなり危険で迷惑な男です。
ジョーイ・タイも、組織の改革を急ぐあまり、古くからいる幹部たちから危険視される存在だ。ジョーイは取り引き先のボスを、ひどい目に遭わせるのだが、この場面のショッキングさは、ジョーイ・タイの恐ろしさを物語っている。スタンリーとジョーイを比較すると、警官とマフィアだが“危険”という共通点があり、2匹の龍が血まみれになりながら戦う姿を思わせる。
今回、久しぶりに『YOD』を観直すと、2人の対決の激しさを象徴するかのようなバイオレンス描写は今観ても強烈だ。中華レストランにいるスタンリーをマフィアが襲撃する場面では、一般人の客たちが銃撃戦に巻き込まれて犠牲になる。また、スタンリーの自宅にマフィアが押し入り、襲われる場面も迫力がある。特殊メイクによる人体破壊のシーンもあり、暴力を手加減せずに表現しています。
ジョーイ・タイを演じたジョン・ローンは1952年に香港に生まれ、18歳でアメリカに渡る。俳優の下積みを経験し、『アイスマン』(1984年)でネアンデルタール人を演じる。『YOB』で注目され、『ラストエンペラー』(1987年)で主役の皇帝を演じてブレイクする。
80年代、若きジョン・ローンは品のあるルックスで日本でも人気があり、ウイスキーのCMにも出演していた。2000年以降も『ラッシュアワー2』(2001年)、『ローグ アサシン』(2007年)にも出演し、若き日の面影を残す雄姿を見せている。個人的には、『ラストエンペラー』での皇帝よりも、『YOD』で扮した野望にあふれたボスの方が強烈な印象を残しています。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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