一番恐ろしいのは愛読者 キャシー・ベイツ in 『ミザリー』
【最近の私】今一番の期待は、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』です。予告編を観ながら公開を待っています。
映画に登場する悪役は、外見からして恐ろしさを強調する人物が多い。『ダークナイト』(2008年)のジョーカーや、『ノーカントリー』(2007年)の殺し屋など、見るからに狂暴さがにじみでていた。今回は、『ミザリー』(1990年)でキャシー・ベイツが演じた、一見普通の女性に見えて、実は・・・というキャラクターを紹介したい。
作家のポール・シェルダン(ジェームズ・カーン)は、小説『ミザリー』シリーズで人気を博している作家だ。『ミザリー』シリーズの最終作を書き上げたポールは、山の中の雪道で自身が運転する自動車がスリップして事故を起こしてしまう。あたりには誰もおらず、ひっくり返った車の中にはポールひとりだけ。そこを通りかかったアニー(キャシー・ベイツ)が、ポールを見つけて彼女の家に連れていく。
アニーの家のベッドで目覚めたポールは、自分の両足が骨折していて、動けないと知る。自身を看護師だというアニーは、ポールを看病する。ベッドに寝たきりのポールは病院に連れていってくれと頼むが、アニーは「雪で道が閉鎖されている」と病院に連れていこうとしない。
ポールの小説の熱烈な愛読者だというアニーに、ポールはバッグに入っている『ミザリー』最終作の原稿を読ませる。アニーはポールの命を助けてくれたからだ。だが、アニーは『ミザリー』最終作を読んで、結末に納得がいかないと激怒する。その原稿を燃やして、新たに作品を書き直せとポールに迫る。ポールは気づいた。一見優しそうに見えるアニーの狂気の素顔を。
ポールは何度も『ミザリー』を書き直すが、アニーはことごとくダメ出しをしてくる。その書き直しを続ける間にも、時間が過ぎていく。ポールの小説を担当している編集者も、行方不明のポールを心配し、警察も捜索を行っていた。
少しずつ骨折も快方に向かってきたポールは、車いすに乗れるようになる。アニーが外出中に、ポールは車いすを動かして家の中を探索する。そこで、アニーの過去を知ることになる。恐怖を感じたポールは、この家から何とかして脱出しようとするのだが…。
アニーは、見た目の印象は普通の女性だ。だが自分の好きな作家を助けたことから、愛読書の物語を変えようとする。過剰な愛情は、人間を異常な行動に走らせてしまうのだ。その異常さが最も現れているシーンがあるのだが、ここではどんな場面か書きません。何度見ても、目をそむけてしまいます。
アニーを演じたキャシー・ベイツは、1948年生まれ。70年代から映画に出演していたが、彼女が注目されたのは『ミザリー』で、この悪役を演じてアカデミー賞主演女優賞を獲得する。以降は『フライド・グリーン・トマト』(1991年)や『タイタニック』(1997年)など現在まで数多くの作品に出演している。『ミザリー』はスティーブン・キング原作の小説だが、これまでに『ザ・スタンド』(1994年)や『黙秘』(1995年)などのキング作品の映像化作品にも出演している。また俳優だけではなく、『ホミサイド/殺人捜査課』(1993年~1999年)では1996年に、『シックスフィート・アンダー』(2001年~2005年)では2001~2003年にTVドラマのエピソードの監督を務めている。
これまでにキャシー・ベイツは様々な役に挑戦している。狂気の漂うサイコから、普通の主婦まで、幅広いキャラクターに扮していて、その演技の幅に驚きます。その彼女が世界から注目を浴びた『ミザリー』、まだ観ていない方がいたら、ぜひご覧になってください。
きっと他にもキャシーが出ている作品も観たくなるはずだ。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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