80年代悪役メモリアル④ “人間凶器”VS“人間凶器”! ゲイリー・ビューシイ in 『リーサル・ウェポン』
【最近の私】先日、大阪に行ってきました。あいにくの雨でしたが、雨が降る街並みは『ブレードランナー』みたいでした。アメリカで『ブレードランナー2046』の興業成績が不振のようです。でもどんな続編か気になるので、早く観てみたいです。
俳優にとって、ブランクから脱するきっかけとなる出演作品がある。例えばジョン・トラボルタの『パルプ・フィクション』(1994年)や、ミッキー・ロークの『レスラー』(2008年)などである。今回は『リーサル・ウェポン』(1987年)でキャリアを復活させたゲイリー・ビューシイが演じた悪役を紹介したい。
『リーサル・ウェポン』の舞台はロサンゼルス。ロス市警の刑事リッグス(メル・ギブソン)とマータフ(ダニー・グローヴァー)がコンビを組み、麻薬密売事件を捜査する。だが密売組織はリッグスとマータフの命を狙う…。リッグスはベトナム戦争では特殊部隊に所属し、射撃の名手で格闘技にも長けている。だが妻を亡くしてから自殺願望があり、医師からは精神が不安定と診断され、“人間凶器”(リーサル・ウェポン)と呼ばれている。
一方、麻薬密売組織はベトナム戦争の軍人たちで構成されており、ベトナムから麻薬を密売している。組織のボスの右腕となる男がジョシュア(ゲイリー・ビューシイ)だ。ジョシュアはボスに命じられて自身の腕をライターで焼く(それも無表情で)など、ボスに異常な忠誠心を持っている。ジョシュアもベトナム戦争ではリッグスと同じく特殊部隊におり、爆破物にも熟知しており、組織に不利な証人の家を爆破するなど、自身の技能を使って警察の捜査の妨害も行う。電気を使った拷問や、傷に塩をすりこむなど、相手を肉体的にも精神的にも痛めつけることに躊躇しない。そんな非情で残酷なキャラクターとして、ゲイリーの存在は際立っている。
ジョシュアを演じるゲイリーは、『ビッグ・ウェンズデー』(1978年)で人気を博し、『バディ・ホリー・ストーリー』(1978年)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。その後も映画に出演しているが、ヒット作に恵まれなかった。だが本作で再び評価を受け、『プレデター2』(1990年)、『沈黙の戦艦』(1992年)などで悪役を演じてキャリアを復活させたのだ。(ゲイリーはダニー・グローヴァーと『プレデター2』(1990年)で再び共演している)。
映画を観ると、リッグスとジョシュアはどちらも“人間凶器”である。ベトナム戦争から帰還後、リッグスは刑事になり、ジョシュアは犯罪に手を染めるようになった。一歩間違えば逆の立場になっていたかもしれない。精神が不安定な刑事が異常な犯罪者と戦うという、当時はこの設定が新しかったのではと思う。クライマックスで銃撃戦やカーチェイスを繰り広げたのち、2人は素手で最後の決着をつけようとする。
『リーサル・ウェポン』はヒットを記録し、続編が3本製作された。だがビルを爆破するなど、アクションは派手になったが、コメディ色がどんどん強くなっていった。1作目は自殺願望を持つ孤独なリッグスが、家庭を持つ真面目なマータフと組み、まったく性格が違う2人が次第に友情を深めるストーリーになっている。個人的にはシリアスなドラマとアクションがうまく融合している1作目がシリーズの中で一番好きだ。その理由の1つは、ゲイリー演じるジョシュアだといえる。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!