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アジア映画悪役紀行② ニンジャはクール!ショー・コスギin『燃えよNINJA』

アジア映画悪役紀行② ニンジャはクール!ショー・コスギin『燃えよNINJA』

【最近の私】今回のコラムを書いて、80年代の映画『コマンドー』『霊幻道士』『ターミネーター』などを観直しています。あと聴いているは歌は『里見八犬伝』の主題歌です。
 

日本の映画やアニメ、漫画など日本文化を称する言葉「クールジャパン」は何年も前から提唱され、海外の人にも定着しているようだ。この言葉が生まれる前の80年代初め、アメリカでは映画『燃えよNINJA』が製作・公開され、忍者ブームを巻き起こしていた。今回はこの作品で悪役を演じたクールな日本人俳優、ショー・コスギを紹介したい。
 

『燃えよNINJA』のオープニングタイトルでは、黒い忍者姿のショー・コスギが刀やヌンチャクを振り回し、吹き矢を拭くなど、アメリカ人なら「クール!」といわんばかりの素早いアクションを見せる。でも最後にいきなり白い忍者が出てきて飛び蹴りでコスギは倒されてしまう。せっかくアクションをきめているのに蹴られるのかよ!と言いたくなる展開だ。
 

ショー・コスギは19歳で渡米し、苦学の末に大学を卒業。その後はハリウッドで俳優を目指すが、アジア人ゆえにチャンスに恵まれず、長い下積み生活を送る。しかし、ついに『燃えよNINJA』のハセガワ役でブレイクし、続編も製作されてアメリカで忍者ブームの起爆剤となった。ちなみに彼の息子は俳優ケイン・コスギである。
 

映画は日本(らしきところ)から始まる。白、赤、黒の衣装をまとった忍者たちが、森の中で修業している。森の中で白や赤の忍者ってすごく目立っているが、そこは言ってはいけません。主人公である白い忍者コール(フランコ・ネロ)が、修行を終えて忍者として認められることになった。だが、黒い忍者ハセガワ(ショー・コスギ)が「俺は認めん!伊賀忍者の血を引く者として、俺は外国人が忍者になるのは許せん!」と大反対する。ここで2人は決別するのだが、白い忍者は善、黒い忍者は悪という分かりやすい設定ですね。
 

忍者となったコールは、友人を訪ねてフィリピンに渡る。ところが友人の暮らす土地は、地上げ屋の脅しにあっていた。その土地には石油が眠っており、悪徳企業がその土地を買収して儲けようと地上げ屋を使っていたのだ。だがコールは地上げ屋の連中を蹴り技やパンチで蹴散らす。彼のあまりの強さに驚いた悪徳企業がコールのことを調べると、コールが忍者だということが判明する。どうやって調べたの?なんて言ってはいけません。それを知った企業の重役は、「あいつが忍者なら、こっちも忍者だ!」と即座に決定。そこで登場したのが、あのハセガワだった!
 

ハセガワは黒い衣装に身を包み、コールの友人を殺し、家を焼き払う。忍者というより、個人的な怒りを晴らすかのように、怒りに燃えた鬼になっている。そしてクライマックス。ついにコールとハセガワが対決する。2人は戦う前に正座し手をついておじぎするなど、妙に礼儀正しいのです。そして刀や手裏剣を使った壮絶なバトルの末、コールが槍でハセガワの腹を刺す。息も絶え絶えのハセガワは、「誇り高く死なせてくれ…介錯を頼む」とコールに懇願する。ここでまたコールはおじぎをし、日本刀でハセガワの首をバッサリと切る。腹を切られた者が首をはねられるって、切腹か!?。ちょっと違う気がするのですが、それを言っちゃあおしまいです。
 

ハリウッド映画で日本の文化が誤った描写をされると不快な人もいるだろう。自分はそんな場面でも「あー、そうなるか」と結構面白く見られる。本作の続編『ニンジャⅡ・修羅の章』では金閣寺のテロップに「東京」と出るなど、予想を超えた発想が素晴らしいです。まだ日本がクールと言われる前の80年代に忍者、切腹、おじぎなど、日本の文化をハリウッド流に仕上げ、忍者ブームを作った本作。ブームの発端となったこの作品で、悪役ハセガワを演じたショー・コスギの功績は大きい。
 

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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!