その保安官、凶暴につき ケヴィン・ベーコン in 『COP CAR/コップ・カー』
【最近の私】もうすぐクリスマスですね。皆さんの好きなクリスマス映画は何ですか。自分がクリスマスに観たくなる映画は『ダイ・ハード』と『リーサル・ウェポン』です。
映画ファンなら、出演している俳優でその映画を観ようとする人も多いだろう。自分の場合はケヴィン・ベーコン。彼が出ていると「観てみようかな」と思えるからだ。ケヴィンは様々な作品でバラエティ豊かなキャラクターに扮している。その中から、ケヴィンが『COP CAR/コップ・カー』で扮した保安官を紹介したい。
映画は2人の少年、トラヴィスとハリソンが家出をして、林を歩いているところから始まる。2人が見つけたのは、1台のパトカーで、中は無人だ。少年たちは軽い気持ちで車内に乗り込む。車の中にはキーが。彼らは遊び心からパトカーを運転してしまう。
一方、パトカーの持ち主の保安官ミッチ(ケヴィン・ベーコン)は、車のトランクから男の遺体を運び出し、林の中の穴に埋めている。なぜミッチは遺体を埋めるのか? 埋め終えたミッチがパトカーを停めた場所に戻ると、そこにあったパトカーが消えている。どこにいった? 慌てて周りを見回すミッチ。パトカーが少年たちに持っていかれたとも思わずに…。ここから、ミッチが少年たちを追いつめていく地獄の1日が始まる。
ケヴィン・ベーコンは1984年に『フットルース』主演で注目され、80年代は青春映画に多く出演する。その頃は若手俳優の1人としての印象が強く、あまり関心がなかった(失礼)。彼に対するイメージが変わったのは90年代に入ってから。『JFK』『アポロ13』などでサブ的なキャラクターも演じるようになる。以降はシリアスな作品からコメディまで幅広く挑戦し、気になる俳優となった。2000年代には『ザ・フォロイング』でTVドラマにも初主演し、活躍の場を広げる。悪役としては、メリル・ストリープと共演した『激流』、透明人間に扮した『インビジブル』、さらに『スリーパーズ』では少年院に収監された少年たちを虐待する最悪の刑務官を演じていた。
『COP CAR/コップ・カー』では、ケヴィン扮するミッチがどんな男なのか、詳しく描かれることはない。周りの人物が「あいつは最悪だ」と言う場面はある。パトカーで死体を運んで埋め、自宅ではドラッグを持っている。だがそれ以外は語られない。「少年が盗んだパトカーを、悪徳保安官が探す」というシンプルなストーリーで、登場人物も少なく、セリフも少ない。
この映画でケヴィンは、強烈なキャラクターを表情や視線、身体の動きで表現している。停めてあったパトカーがなくなって「えっ」となる瞬間。また、なくなったパトカーを探すために、ミッチは路上に停めてある他人の車を盗む(保安官なのに!)。盗んだ車を運転していたら、白バイに停車を命じられるなど、コミカルな場面がいくつかある。そんなキャラクターをケヴィンは楽しそうに演じている。セリフや説明が少ないぶん、演技者として表現のしがいがあったのではと想像する(本作でケヴィンは製作総指揮も務めている)。
今回紹介した作品以外にも、ケヴィンが出演している映画はまだまだある。ファンとして、これから彼がどんなキャラクターを演じてくれるか楽しみに待っています。
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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