花と果実のある暮らし Vol.27 チェンマイと宝くじ
【最近の私】我が家の前の大きな土地が売りに出されたようで、木を切る音が聞こえてきます。何年もかけて伸びた大きな木が一瞬のうちに切られてしまう光景は、やはり虚しいもの。そこに住んでいた鳥たちが行き場を失い、我が家にもやって来ていた、のです。「ちいさいおうち」という絵本を思い出しました。
パートナーのナリンが「ねえ、宝くじが当たったよ」と遠慮がちに言いました。喜んでもいいのになぜ? 理由は、私が彼と付き合い始めた頃、「宝くじなんてお金の無駄!宝くじは極力やらぬように。」と宣言したことがあったから。それ以来、「宝くじ購入ほぼ禁止令」が我が家の法律なのです。
■宝くじは、庶民の楽しみ
タイでは、宝くじ「フアイ」がどこにでも売っています。街では「フアイ」の看板をよく目にするし、屋台でごはんを食べている時にまで宝くじを売りに来ます。タイではそれが当たり前の光景です。
道端でもあらゆる所で販売しているので、みんな気軽に夢を買っています。以前のコラムでご紹介したように、お坊さんが街角でふつうに宝くじを買っているのを見てびっくりしました。
タイの宝くじは、現在、政府のやっている公式の宝くじ「サラークキンヴェン ラタバーン」と、それとは別の(違法の)「タイディン」の2種類。一般的な値段は2枚一組で80バーツです。抽選は毎月2回!何だかタイの人たちはいつも宝くじのことを気にしているように感じます。
■宝くじは生活の一部!
以前の職場だった縫製のおばさんたちも、仕事をしながら宝くじの話に夢中になっていました。抽選日ともなればラジオに集まって真剣に当選番号を聞いていました。私ともう1人の日本人ボランティアの女性は「それなら私たちも」と初めて宝くじにチャレンジ。彼女はおばあさんの誕生日と同じ番号を買い、約120円が約1500円になりました。
また、去年パートナーであるナリンのお母さんが亡くなった時は、家族のほとんどがお母さんの年齢や誕生日にまつわる番号の宝くじを買っていたようです。そのうちの何本かが見事に当たったと喜んでいました。
なんと不謹慎なことかとその時は思いましたが、「お母さんが僕たちに幸運を与えてくれたんだよ」と大盛り上がりの彼らを見て、日本人とは違うけど、ある意味とてもポジティブな考え方だし、幸せな人たちだなぁと感じました。
■本気で宝くじ!
日本でもロトくじを買う時などに自分や家族の誕生日を選んだり、新車のナンバー・プレートの番号にしたり、大きな当選が出た売り場で買ったりする人がいます。でも、タイ人の宝くじに対する情熱はそれ以上なのです。
タイには当選番号の予想雑誌があり、また、自然信仰が残るタイではイタコに当選番号を聞く人もいます。ある神聖な樹木に番号が浮き出ているとニュースになったことも。ほかにも王様の誕生日や年齢、タイのラッキー・ナンバー「9」にからめた番号など、あの手この手で当選番号を考えています。そして当たれば周囲の人たちを集めて宴会が始まります。もちろん当たった人のおごり。ギャンブルではあるものの、宝くじを心の底から楽しんでいるのです。
ご多分に漏れず、パートナーのナリンもよく当たると評判の裏のおじさんにこっそり聞いている様子(笑)。
さて、最初の話に戻りましょう。諦めずに宝くじを買い続けていたナリンに、ついに幸運の女神が・・・とはいっても「下2桁」の当たりで6,000円。これまでの出費を考えたらマイナスじゃない!と思ったのですが、うれしそうなナリンを見て(水を差すのもなぁ)と一緒に喜んでいました。そんな矢先、ふとフェイスブックを見るとバンコクに住む友人が「下3桁の数字が当たったよ〜!」と自慢する書き込みを発見・・・。
そんなこともあってか、近頃は無意識に前の車のナンバー・プレートに目が行ってしまうのです。(この番号、当たりそう?!)。そろそろ我が家の「宝くじ購入禁止法」にも改定が必要かな!?
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美