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花と果実のある暮らし  Vol.29 仏舎利(お釈迦様のご遺骨)が外出する!?

花と果実のある暮らし  Vol.29 仏舎利(お釈迦様のご遺骨)が外出する!?

【最近の私】 マンゴー、マンゴスチン、ドリアンという私の大好物でもある3大フルーツの季節が終わってしまい、さて何を買おうと市場でウロウロ・・・。ここ数日、果物選びに迷いが生じています。終わりかけの1キロ60円のマンゴーを買ってみたものの大はずれ!この季節はまさに‘旬のはざま’です。
 

ある日の朝、車でパートナーのナリンとドライブ中、道端にタイの国旗と王様を象徴する黄色い旗がずらりと並んでいました。「お寺のお祭りか何かがあるの?」とナリンに聞いてみると、「お釈迦様の遺骨が外出するんだよ。特別な行事だけど行ってみる?そういえば、うちの近所のお寺でご遺骨が一休みするんだって!」。
 

お釈迦様の遺骨が外出? ご遺骨が一休み? なんだかわからないけれど、ぜひ見たい!
 

■地元の人にとっても珍しく、特別な行事
チェンマイは今年で建都720周年を迎え、記念行事の一つとして、6月10日この「仏舎利の移動」が行われました。我が家から車で約1時間行ったところにあるジョームトーン寺に安置されている仏舎利が、チェンマイ市街まで運び出されるとのこと。仏舎利は金色の入れ物に入っており、人々が行列をなし歩いて運ぶのです。その長い道のりの途中、いよいよ街に入る前の準備の場所と休憩所を兼ねて、我が家の近所のお寺で一休みするそう。今朝見た沿道でなびいていた旗たちは、仏舎利が通る道沿いに並んでいたのです。
 

この行事は恒例ではなく、過去に行われたのは仏暦2099年、2368年、2539年。今年は2559年になるので、生きている間に見ることができない人も多い珍しい行事なのです。次にいつ行われるかがわからないため、本当に特別なイベントです。
 

■張り切る村人たち!
村人たち、特に近所のご老人たちは敬虔な仏教徒なので、お釈迦様の遺骨を間近で拝めることに、大いに盛り上がっていました。ふだんは水道料金を集金している愛想のないおじさんは、ガードマンの装いで生き生きとお寺近辺の交通整理をしているし、いつも質素なおばさんたちも、ランナー文化の伝統衣装や白い服を身につけてキリッとしています。特に伝統舞踊を披露するおばさんたちは、生花を頭に飾り、華やかなメイクをし、きれいに身なりを整え、この日に備えていたようです。
 

お寺に入ると地元の信者たちが準備したフードブースが設けられており、お手製北部料理やお菓子などが持ち寄られていてました。これらは全て、信者や訪問者に無料で振る舞われます。コーヒー屋さんは小さなスタンドを出店してコーヒーを振る舞い、近所の西洋人はドーナッツを配っていました。見ているだけでなんだか心が洗われ、お腹も満たされます(笑)。
 

神聖な行事でも笑顔と笑いを絶やさないチェンマイの人々。いつもは静かなお寺ですが、この日ばかりは賑わっていました。
 

心待ちにする人々

心待ちにする人々


 

■ついに仏舎利がやってきた!
振る舞われた食べ物を私たちが食べ終わった頃、「そろそろ仏舎利がやってくるよ!」と周囲がザワザワし始めました。お寺へと向かう沿道に並び、仏舎利を待ちます。お花や白いカオトック(お米でできたポップコーンのようなもの)が配られ、おばあさんたちは靴を脱いで裸足になっています。私も裸足になって迎える準備をしました。
 

ガードマン役が道端の私たちに道を広く開けるようにと誘導に来てからしばらくすると、メインの一団がまるでパレードのように入ってきました。そして、神輿のように担がれるかたちで仏舎利がやってきました。
 

「あの中に、遥か昔に生存していた偉大なお釈迦様の遺骨があるんだ!」
そう想うだけで信者ではない私も心動かされます。自然に手を合わせてお祈りをしていました。仏教徒である村の人々は、仏舎利にお花とお米のシャワーを投げかけ、丁寧に手を合わせて拝んでいました。
 

仏舎利がやってきた

仏舎利がやってきた


 

次にいつ行われるかわからない不定期で特別な行事。仏舎利を外出させる行為だけで、これだけの人々の心を動かすのかと、その大きなパワーの一端を感じ取ることができました。
 

仏舎利を一目拝もうと、裸足になって頭を垂れ、熱心に手を合わせる村人たちを見ていると、仏教徒にとって、こうした神聖な行事はほんとうに大切な心の拠り所なんだなぁと思いました。観光客や私を含めた外国人がその真意を理解しようとせずに、珍しいお祭だとただ騒ぐようなことはすべきではなく、この先もずっと、地元の人の心が満たされる行事であってほしいと思います。(最初は興味本位で見に来てしまったことを反省しています…)
これからは私もこの村の一員として、こうした行事を静かに見守っていきたいです。
 

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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美