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花と果実のある暮らし  Vol.32 ラマ9世、タイ国王の逝去

花と果実のある暮らし  Vol.32 ラマ9世、タイ国王の逝去

【最近の私】 近所のマーケットで、枝豆を見つけました。たまに、見つけると嬉しくてまとめ買いしてしまいます。きれいに洗って、カットして、微妙な茹で時間と塩加減にこだわる私を見て、タイ人のパートナーは、「枝豆がいかに私にとって重要な存在か」と“感心”しているようです。
 

その日の夕方4時過ぎ頃だったでしょうか。仕事中だったタイ人のパートナーから、「国王が亡くなったといううわさがあるけど、今テレビでやってる? 用がなかったら、今日はあまり外に出ないようにね」と電話がありました。その言葉に驚き、とまどい気味の私は、すぐさまテレビをつけたのですが、特に変わった様子もなく、議会の映像が流れていました。しかし、その内容は難しくてよくわからず…。TVを消して、とにかく家でおとなしくしていたところ、友達からのLINEでこの重大なことを知ったのでした。
 

■歴史的大きな日にここにいること

歴史的な出来事となったタイの国王陛下のご逝去。発表された10月13日の夜はずっと国王の歴史映像がモノクロで流され、翌朝には国王の追悼のために、学校や公的機関は1日お休みと発表されました。哀しみに包まれたこの厳粛な雰囲気は、昭和天皇が亡くなった当時の日本を思い起こさせました。その後数日間、タイの国内ではみんな感情が整理できずに落ち着かない感じでした。例えば、LINEのグリーンの画面やgoogleのマークがモノクロになったり、銀行のATMマシーンのスクリーンの画面が、銀行員の挨拶から国王の写真に変わっていたりしています。また、タイ人の多くは、自分のプロフィールの写真をモノクロにして喪に服しています。車に乗ってラジオをつけても、流れているのは、いつもの洋楽番組ではなく、国王に関する情報やお経です。こうした生活の小さなところにまでも追悼の意が見られ、タイ国民にとっての国王の存在の大きさを実感します。
 

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プラユット暫定首相による発表

■️黒い服

近所の市場に出てみると、いつもよりたくさんの花が用意されていて、飛ぶように売れていました。チェンマイの空港やメジャーなスーパーマーケットの入り口には、国王の写真が飾られ、黒と白のリボンで追悼の意を表していました。日本でも報道されているように、現在こちらではみんな黒っぽい服を着用して喪に服しています。私も布市場に行って洋服の生地を買おうと行きつけの店に入ると、なんといつも購入している生地の黒がもう売り切れていました。まさかと思いながら、他のお店にいってもやはり売り切れです。テレビでも「黒いTシャツが売り切れている」と言っていましたが、生地まで売り切れとは驚きました。パートナーもやはり黒を着たいようなので、「それなら染めてしまおう」と思いたち、何軒か回ると黒い染料さえも不足していたのです。ようやく最後に立ち寄ったお店に在庫があり、「黒に染めて喪に服すのね、えらい!」と言われました。ちなみにあとで、近所のおばさんにその話をしたら、「商売人はね、本当は在庫があるのに売り切れと言って、数日後に商品を出して価格を上げてくるのよ」とのこと。真相は謎ですが、なるほどと思いました。
 

9と書かれたTシャツ

9と書かれたTシャツ

■クラスでも…

タイ語のクラスにいくと、国王の話題で持ちきりになっていて、私も改めて国王の提唱した”足るを知る経済”について読みました。この考え方は、初めてチェンマイに来た時、お隣に住むお父さんが私に教えてくれたことです。「理想はみんながほどよい生活ができる経済。贅沢をしなくてもほどほどに暮らせればいいんだよね」と。タイだけでなく、他国でも学ぶべき事だなあと思ったのを思い出しました。タイに来て約10年。タイ人みんなの父として慕われていた国王、ラマ9世の存在の大きさをひしひしと実感しています(そういえば9は、タイで縁起のいい番号とされています)。ご冥福をお祈りすると共に、これからもラマ9世が願ったような平穏なタイであることを願います。
 

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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美