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花と果実のある暮らしinCO

Vol.26 日本語の世界 “え” ようこそ!

Vol.26  日本語の世界 “え”  ようこそ!

【最近の私】このコラムにもたびたび登場する私のパートナーであり”鉄“のアーティスト、ナリン・テムサクルの個展が東京で開かれました。多くの方に来場して頂き、日本の皆様に作品を見ていただくことができ、本当に感謝の気持ちでいっぱいです! ありがとうございました!
 

土曜日の夜、友達とスカイプでしゃべっていたら、別の知人から電話がかかってきました。その人の西洋人の知り合いが、11月に日本を旅行するとのこと。「トラベル日本語を教えてくれる人を探してるんだけど、誰かいない?っていうか、ヨーコ(私)、教えてくれない?」というのです。「月曜から2週間だけ、お願いっ!」、と。
 

■友の甘い囁きには要注意!?
私は外国人に日本語を教えたことがないので、誰か適任者はいないかなぁなどと軽く考えながら電話を切りました。そして、再びスカイプに戻りその話をすると、友人は「やりなよ!2週間だけならいいじゃない。やってあげなよ」と言うのです。あまりに簡単に言われたので心が緩んだのか、(じゃぁ、誰もいなかったらやるかなぁー)などと思ってしまいました。
 

翌日の日曜日、日本語を教えた経験のある知人の何人かに聞いてみたものの、皆から「スケジュールが厳しい」と断られたうえに、そこでもまた「いい経験になるから自分でやってみなさいよ」と言われました。ならばやってみるか。
 

しかし、実はここから日本語の迷宮にはまっていくのです・・・。
 

■「英語で日本語を教える」って難しい
しかし、月曜から始めたいというレッスンまで、残り1日もありません。もちろん教科書なんてなく、ゼロからのスタート。簡単な会話ができればいいとはいえ、何もないところから日本語を教えるってどうすればいいのでしょう? ヒントを求めてネットを検索すればするほど、「日本語がまったくできない人に、英語で日本語を教える方法」を求めてどんどん深みにはまっていく自分に気づき、恐ろしくなりました。
まずは文法か? “未然、連用・・・”ってなんだっけ?? ”な形容詞”って何なの??こんな状態の私が、2時間も日本語を、しかも英語で教えられるの!?  そんな不安に惑わされながらも、もうやるしかありません。
 

手元にある数少ない日本語の本やネットを使って必死に調べてみたものの、かつて私が教わった日本語の教え方と今の教え方には随分違いがあります。また、「外国人が日本語に対して疑問に思う点」を調べると数がありすぎて、1つ1つつぶしていく時間がありません。もう、準備してるというより嘆きとため息ばかり・・・。あっという間に月曜の朝がやって来ました。
 

ナリン・テムサクルの鉄の作品   シリーズ  animal  「mother」

ナリン・テムサクルの鉄の作品 
シリーズ animal 「mother」


 

■”へ”と書いて、なぜ”え”と読むの?
そんな重い気分のまま、いよいよ噂の西洋人とご対面。部屋に入ると緊張気味に椅子に座っている西洋人が・・・2人(1人じゃなかったのか)。まずはお辞儀をして「コンニチハ・・・」。
 

ようやく2人に笑顔が見えて、少しホッとしました。が、それもつかの間。レッスンを進めていくにつれ、どうも私が思っていた“日本語初心者像”がどんどん崩れていくのです。あいうえおの表を見せても、ちょっとしたアニメの映像を見せても、彼らはもうすでにご存知の様子。(初心者じゃないじゃない、、、どうしよう!)と思いながらも、焦らずに準備したレッスンを淡々と進めていくのでした。
 

久しぶりに大きく書いた自分の字はやけにバランスが悪くて落ち込むし、へたっぴな私の”う”の字と、教科書に印刷された”う”の字を比べて、「点の位置が違う」と質問を受けてしまうし、さらには「”へ”と書いて、なぜ”え”と読むの?」と思いもかけない質問にヒヤヒヤ。(皆さんならどう説明しますか?)
 

そうしているうちに約束の2時間が過ぎました。終わった後は、もうぐったり。「日本語のレッスンは生徒さんにエネルギーを吸い取られるのよー」と言っていた知人の先生の言葉を思い出しました。
 

しかし同時に、「日本語の複雑さや面白さを英語ネイティブの視座から見直す」という作業は、私自身にとっても大いに勉強になったのです。
 

聞いてみれば、2人ともすでに独学で日本語を勉強していて、1人については日本に行った経験もありました。印象は初心者どころか″日本通“! (何がトラベル用ジャパニーズを教えてあげて、なのーーー!)。
 

まるっきりしゃべれないと思い準備していた私にとって、 そのことも新たなプレッシャーに。それでも、少しでも日本を楽しんでほしい、我が街、東京の魅力にふれてほしいという思いにかられ、しばらくは2人の生徒と一緒に日本語の迷宮を彷徨うことになりそうです。
 

家の近所を流れる小川

家の近所を流れる小川

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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美