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【LA校講師インタビュー】ベテラン通訳者・翻訳者のディッキンソン佐恵子講師が語る!「翻訳者は文面に託された言葉をくみ取り、忠実に伝えるメッセンジャー」

【LA校講師インタビュー】ベテラン通訳者・翻訳者のディッキンソン佐恵子講師が語る!「翻訳者は文面に託された言葉をくみ取り、忠実に伝えるメッセンジャー」

ロサンゼルス校で通訳クラスと実務翻訳クラスの講師を務めるのは、翻訳者・通訳者として20年以上のキャリアを持つ比嘉ディッキンソン佐恵子さん。アメリカで学んだ法律の知識や様々な分野での経験を生かして、幅広く活躍されています。プロとしての経験や英語コミュニケーションにおける大切なマインド、翻訳スキルを向上するためのコツなどについて、ロサンゼルス校スタッフが伺いました。
 
●渡米のきっかけを教えてください。
日本で大手IT企業に7年ほど勤務した後、サンフランシスコの近くにある2年制大学に留学しました。そこでパラリーガルスタディーのコースに入学し、法律の基礎を学びました。昔、叔父に「英語はあくまでも道具でしかない。それを使って何を勉強するかが大切」と言われたことがきっかけで、法律の知識があったら強みになると考え、その道に進みました。アメリカは訴訟大国と言われていて、車を運転するかのように、日常的に法律をもとに自分の権利を主張します。当時、離婚訴訟についての授業を受けたことがあったのですが、クラスメイトのほとんどが離婚経験があるか、もしくは進行中の自身の離婚訴訟のために授業を取っていました。
 
●通訳と翻訳を学ぼうと思ったきっかけは何ですか?
2年制大学を卒業後、アメリカで弁護士事務所や日系の建設会社など、複数の企業で通訳者・翻訳者として勤務しました。それをきっかけに、フリーランスでもやっていきたいと思い、スキルアップのために通訳や翻訳を徹底して学びたかったのと、コネクションが欲しいと思い、学校に通うことにしました。今の私があるのは、当時のクラスメイトや講師との出会いのおかげです。
 
●フリーランスの通訳者・翻訳者として活躍されていますが、これまでのキャリアについて教えてください。
通訳・翻訳の学校で学んだ後、様々な企業で短期の通訳・翻訳業務に従事致しました。 特に勉強・自分の肥やしになったのは、自動車業界の開発部門の通訳・翻訳に携わった経験です。自動車と一口に言っても、エンジン、燃料、マーケティングなどさまざまな分野があります。私自身、技術の専門家ではないので、最初は手探り状態でしたが、通訳をしているうちにだんだんと用語を覚え、口が回るようになってきた感覚がありました。
 
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●翻訳・通訳のためにまずは英語力を伸ばしたいと思う留学生が多いですが、何かアドバイスをいただけますか?
以前、留学生から、英語ネイティブに英語が伝わらないと相談を受けたことがありました。発音が悪いからなのか、声が小さいからか、何が原因なのか本人は分かっていなかったのですが、私は明らかに声が小さいからだと伝えました。どんな形でも伝えたいという意志を持つことが会話の大前提です。英語力が足りないことを理由にそこで諦めるから伝わらないのです。発音が悪くても、伝わるまで何度もフレーズを繰り返せば、相手に届きます。多くの人は、そこで諦めてしまうので、さらに会話でつまずいてしまいます。本当に伝えたい気持ちがあれば、自然と声は大きくなるものです。また、ご自身の英語力が低いから伝わらないのではなくて、相手に聞く耳がないから伝わらない場合もあります。英語でコミュニケーションを取るには、是が非でも伝えるという強い意思が必要です。その精神は通訳をする上でも必要だと思います。
 
●文書翻訳で大切なことは何ですか?
原文の著者をリスペクトすることと、徹底してリサーチすることです。私は通訳と翻訳の両方をやりますが、通訳の場合は顔が見えることが多いので、相手の反応を把握することができます。一方で、翻訳は字面でしか判断することができません。いい訳出にこだわるあまり技巧に走って原文から離れてしまっては、著者の思いを踏みにじってしまいます。だからと言って、文面を右から左に忠実に訳すという意味ではなく、エッセンスを読み取って上手く伝えるために、時には言葉の足し引きが必要となります。翻訳者は文面に託された言葉をくみ取り、それを忠実に伝えるメッセンジャーです。作者をリスペクトする気持ちがあれば、リサーチも徹底するようになります。また、文書翻訳では、想像力も大切です。例えば、国立公園についての説明文の翻訳では、その場所の景色や空気感を掴みきれていないと、いくら原文に忠実に訳せていても、「なぜか、しっくりこない」ということがあります。この場合は、その場所の写真を見ることなどで原文の意図をより組み取れるようになり、それが訳出にも反映されることでしょう。
 
●翻訳スキル向上のコツを教えてください。
英日翻訳においては、原文の意味をしっかりと解釈するために、英文法の理解が必要です。英語に慣れてきた段階で、細かいニュアンスなどを掴むためにも英文法をしっかり勉強しておくことをお勧めします。例えば、英日翻訳の場合、仮定法のwouldのニュアンスを把握できているかどうかで和訳の完成度がぐっと高まるケースがあります。文法の理解が訳文の質を左右するので、しっかり押さえておきましょう。
 
●実務翻訳クラスと通訳クラスを担当されていますが、指導する上で心がけていることはありますか?
受講生に対して正当な評価をしたいと思っています。私が受講生時代、特許の翻訳を学んだのですが、特許の基本的な考え方は、素晴らしい功績を残した人に正当な評価をするということだと講師がおっしゃっていました。人は何かを頑張った時、それに対して正当な評価をもらうことを大事にします。翻訳や通訳は、コミュニケーションなので、常にお客様からの評価が付き物です。一生懸命にやって結果を残した時は、報酬面も含めて、きちんと評価をして頂ければ有難いですし、やはりフィードバックや評価は次の仕事への活力にもなります。受講生に対しては、課題や授業内のパフォーマンスに対して、正当な評価をするように心がけています。
 
●最後に受講を検討中の方へメッセージをいただけますでしょうか?
私にとって翻訳は“Empowerment”だと思っています。私のクラスの受講生には、翻訳を学ぶことによって、人を助けることができたり、ご自身が予想以上のことを達成できるようになってほしいと願っています。ある授業で「昨日まで知らなかったことが学校で分かるようになるって素晴らしいことじゃない?」と言ったら、ある受講生が目を輝かせながら同感してくれたんです。その時に、「私、この目やこの反応が欲しくて翻訳を教えているんだ」と感じました。特に私が専門とする契約書などの法務翻訳は、取っかかりにくいイメージがありますし、読むことに楽しさを見出しにくい文章です。そして翻訳する上でも、絶対に右から左には訳せません。法律上のコンセプトが頭に入ってからこそ腑に落ちる分野なので、誰がどんな権利や義務を持っているのかを明確にした上で、翻訳の指導をします。そして、翻訳する際も絵空事ではなく、例えば、自分自身が事故を起こした時の保険や賠償が発生することで、それが本人にどんな意味を持つのか、きちんと想像力を持ちながら訳出するよう指示しています。本当の意味や重要さを理解することが訳文にも生きるからです。私が短大で法律を学んだ時に「Use it or lose it」とおっしゃっていた先生がいました。私も受講生には「法律の知識を持っていれば、自分自身や家族のために役立てることができる。知識がないと損をすることがある」ということを伝えています。それも実務翻訳はEmpowermentであるということに繋がっているのだと思います。
 
どんな分野の知識でも持っておいて損がないのは、実務翻訳にも映像翻訳にも共通するポイントです。ディッキンソン講師をはじめ、様々な分野で活躍してきた講師たちが揃うロサンゼルス校は、新たな分野を知ることができる入り口でもあるのです。
ロサンゼルス校では翻訳者、通訳者として活躍したい方々をこれからもサポートしていきます。
 
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