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武蔵野美術大学の学生を支援 映像翻訳の力で若き才能が開花する

武蔵野美術大学の学生を支援 映像翻訳の力で若き才能が開花する

2022年春、JVTAは武蔵野美術大学映像学科とコラボを果たした。同校で教授を務める小口詩子さんから依頼をいただき、同校で学ぶロメイエさんが監督した中国語作品『清風徐来』の英語字幕制作に協力した。本作は、2022年7月15日から開幕するSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022で英語字幕付きでスクリーン上映され、またオンライン配信も行われている。英語字幕を手掛けたのは、JVTA修了生の新田ありささん。中国語作品の和訳から英語字幕を制作するという手順を踏んでいる。
 

●字幕は作品と一体化した表現の一部
今回のコラボについて、小口さんとロメイエさんにお話を聞いた。
 

「JVTAの修了生に、卒業制作2作品を翻訳していただきましたが、両方とも国際映画祭に入選したので驚いています。映像で物語を伝える映画にとって、洗練された字幕は、音楽のように作品と一体化し、表現の一部として機能します。字幕は、オリジナルの映像にはない付加要素として、邪魔にならないように、映像と響き合わなければなりません。愛情と想像力(ときには創造力)をもって作品を理解し、背景を考慮しながら、削ぎ落とされた字数で意味や情報、ニュアンスを最大限伝える。感性も技術も必要なお仕事だなと改めて感じました。学生の不手際や細かいリクエストにも耳を傾けて善処くださり、深く感謝しています。目から鱗の言葉選びに唸ったり、タイトルの英訳もご提案いただいたり、監督たちが感激していました。」(小口さん)
 

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『清風徐来』 監督 ロメイエさん
中国出身。浙江工商大学で映像を学び、卒業制作で『孔雀草日記』を監督。その後、武蔵野美術大学映像・写真コースの大学院(修士課程)に入学。在学中、『その跡』、『毛糸玉』などの短編を制作する。
 

「修了制作作品『清風徐来』は初めて20人ほどの大きなチームで制作した作品でした。私としては初めてのチャレンジだったこともあり、撮影現場では思いがけないことが次々と起きました。撮影日の天気予報は豪雨ばかりでしたが、撮影本番には晴れ上がり、今から思えば本当にラッキーでした。SKIPシティの入選には驚きつつ、スタッフや役者さんたちとともに喜んでいます。」(ロメイエさん)
 
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『清風徐来』の作品詳細はこちら
 

● 宗教・文化を含め作品をよく理解した上で中日翻訳→英語字幕を作成
本作の英語字幕を務めたのは、JVTA修了生の新田ありささん。中国語作品のため、和訳から英語字幕を制作するというプロセスだった。
 

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日英映像翻訳者 新田ありささん
 

「本作は中国語作品です。日本語字幕が付いていて、それを元に英語字幕を制作するというプロセスでした。映像翻訳では、セリフの真の意味や映像で起こっていることを視聴者に伝えるために原文の意味から少し離れてしまうことはやむを得ないと思っています。そのため、日本語字幕の意味を真に受けるよりは、役者の演技や、映像の全体的のテーマ、監督の意思等も参考にするなど、調べものを慎重に行い、翻訳に取り組みました。本作は、仏教が重要なテーマとなっているため、訳語の意味が合っているかだけなく、中国と日本の仏教に違いがないか、英語圏の仏教徒は同じような表現を使うかに気をつけました。その他に、すべての登場人物に現実味が湧くように、実際この話が英語圏であったらどのように話すのかを考えて、ナチュラルな英語になるように工夫しました。」(新田さん)
 

映像翻訳では、セリフを表面的に訳して終わりではない。的確な字幕作りをするためには、登場人物の関係性の理解が必須だ。
「登場人物それぞれの性格や関係性はよく理解して字幕作りに取り組みました。主人公・ズイの両親は、仕事や名誉を気にするタイプです。そして、ズイは、両親に対して態度が悪く、いわゆる反抗期を迎えています。その他、ズイの意見を聞いてくれて、打ち解ける存在も登場します。年頃の女の子は、そういう相手にどのように話すのかを考えて翻訳しました。両親が自分のことを理解していない、という気持ちは誰にでも共感できると思います。視聴者の共感を得やすい、現実味のあるキャラクターという意味では、翻訳しやすかったです。」(新田さん)
 

さらに、新田さんは字幕の「見た目」まで気を配ったという。字幕は映像作品の一部だ。見た目を重視するのは、まさにプロの技と言える。
「日本語字幕のスポッティング(※1)を参考にして、ハコ切り(※2)を行うときに英語の字幕として何が一番読みやすいか、また、見た目が良いかを重視しました。私は、中国語が理解できないので、中国語の音声のどれがどれの台詞なのか、自分では判断できなかったことが難しかったです。特に複数の登場人物が同時に喋っているところは特に注意を払って翻訳作業をしました。」(新田さん)
※1 スポッティング…字幕の出るタイミング(IN点)と消えるタイミング(OUT点)を決める作業
※2 ハコ切り…映像を見ながら、台詞等を字幕ごとにひとつずつ区切っていく作業

 

映像コンテンツが増え続ける中、映像に関わる職業選択をする学生が増えている。映像翻訳は、作り手の思いを受け止め、視聴者にその思いや意図を字幕や吹き替えにして届けるという、映像制作に関わる仕事だ。映像制作を学ぶ学生にも、翻訳者が、作り手と同じ熱量を持って映像と向き合っていることを知っていただきたい。新田さんが英語字幕を手掛けた『清風徐来』は、2022年7月15日から開幕するSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022で英語字幕付きでスクリーンとオンライン配信の両方で上映される。JVTAでは、今後とも若きクリエーターたちの作品を世に送り出す支援を続けたい。
 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022 公式サイト http://www.skipcity-dcf.jp/
 

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