UNHCR WILL2LIVE映画祭2019が開幕! 会場に届いた監督のビデオメッセージに涙
難民の現状を映画の上映という形で伝え、国内で支援の輪を広げてきた「UNHCR難民映画祭」が14回目を迎える今年、「UNHCR WILL2LIVE映画祭2019」に生まれ変わりました。新しいコンセプトは「難民の生き抜く意思。その強さを伝えたい。」。JVTAは今年も字幕制作で協力し、3作品の字幕を23人の修了生が手がけています。初日を迎えた21日(土)、東京・九段下にあるイタリア文化会館で『ミッドナイト・トラベラー』の上映とレセプションが開催。この作品の翻訳を手がけた修了生、桐原麻衣さんと増渕裕子さんと共にJVTAスタッフが参加させていただきました。
※上映後のレセプション
左からMTC・先崎進ディレクター、修了生・増渕裕子さん、修了生・桐原麻衣さん、国連UNHCR協会・山崎玲子さん
会場ロビーには、難民選手団としてオリンピック出場を目指すアスリートの紹介パネルを中心に、ユニクロのリサイクルボックスや募金箱などが設置されていました。
主人公は、アフガニスタンの平和をテーマにした作品を作ったことがタリバンの怒りを買い、その首に懸賞金をかけられた映画監督。母国を追われ、妻と2人の娘と共に安全な場所を求めてさまよう姿を追ったドキュメンタリーです。会場はほぼ満席でした。上映後、国連UNHCR協会報道ディレクターの長野智子さんと国際協力機構(JICA)の吉武尋史さんが登壇。アフガニスタンでは、いまも内戦が続いており、日常的に戦況が報道されているという現状が報告されました。会場に駆けつけた同作品の翻訳を担当した修了生2人のお話をご紹介します。
※『ミッドナイト・トラベラー』 (原題:Midnight Traveler)
監督:ハッサン・ファジリ ©Hassan Fazili
修了生・桐原麻衣さん(『ミッドナイト・トラベラー』翻訳チームでリーダーを担当)
大学生の時にカンボジアへ行ってから、「目の前の貧しい子どもたちに自分は何ができるのか」と考え、国際協力機構(JICA)の募集説明会に行きました。しかし、私は英米学科なので、医療、土木、農業などの専門がないため、専門スキルが必要だと考え、当時の大学で取得できた小学校の教員免許を取得しました。今、字幕翻訳という形でUNHCRの支援に微力ながら携わりたいというモチベーションの根幹は大学生の時のこの思いがあるからです。トークショーでJICAの吉武尋史さん(写真右)のお話を聞けたことはとても勉強になりました。
※国連UNHCR協会報道ディレクターの長野智子さんと国際協力機構(JICA)の吉武尋史さん
長野智子さん(写真左)が現地で取材した際、子ども達に今何が欲しいか聞いたら「教育」という答えが返ってきたというお話も印象的でした。「教育」が一度断絶すると回復させるのに何倍もの時間がかかり、社会・文化的にも多大な影響が出ます。子どもたちの未来が明るいものになるよう、彼らにケア(教育)が届くことを願っています。
※会場ロビーには募金箱が設置されています。
レセプションでは、UNHCR駐日事務所の方とお話しすることができました。海外赴任でいちばんのご苦労をお聞きした際、「赴任地は安全地帯ではないから、自由に行動できる場所が少ない。決められた場所にしか行けない。自由がない事からくる精神的ストレスが一番キツイ」とのこと。現地では難民だけではなく、難民を支える側も自由を制限された中で戦っておられるのだなと痛感しました。
※会場ロビーでは多くの資料を手にすることができます。
当日の会場に、この作品のファジリ一家と同じアフガニスタン難民の方がいらっしゃったとお聞きしました。当事者はこの映画をどんな気持ちで鑑賞されたのか、私達では想像できない事をお感じになったのだろうと考えています。ファジリ監督からのビデオレターで、まだまだ先は不透明ながらも、野宿をせず、暴徒に襲われることもない地で、子どもたちは学校に通えていると聞いて安心しました。翻訳者として支援の一部に携われたことを実感できる貴重な体験となりました。
※UNHCR親善大使 MIYAVIさんのパネルもありました。
修了生・増渕裕子さん(『ミッドナイト・トラベラー』翻訳チーム)
映画の上映後に、印象に残る出来事がありました。ハッサン・ファジリ監督から今回の映画祭に向けて、ビデオレターが届いていたのです。一家は今も避難先で難民認定の申請中ではあるものの、娘さんお2人は元気に学校に通っていて、確実に一歩一歩前に進んでいるという力強いメッセージでした。この先にも、様々な困難が待ち受けていることは想像できます。しかしこの一家なら、この先も必ず乗り越えられると確信が持てる内容だったので、本当に嬉しかったです。
※ハッサン・ファジリ監督のビデオレター
また、上映後のトークショーでは、JICAの吉武尋史さんから、アフガニスタンの現状についてお話を聞くことができました。その中でも一番ショックだったのは、タリバン政権の時代に、アフガニスタンでは女子への教育が禁止されていたという事実です。その時代に育ったほとんどの女性は、文字の読み書きができないそうで、そこから生まれる弊害は多岐に及びます。その一例として、その世代の女性たちが母親になり、子どもを診察に連れて行く際に弊害が生じるということでした。
※画像提供:国連UNHCR協会
例えば、子どもの具合が悪くなって医療機関に行っても、子どもの症状を的確に伝えることも、医師からもらった処方箋を読むことも、難しいでしょう。我が子の健やかな成長を見守ることすら困難なのです。現在JICAでは母子手帳を世界に普及させていて、この世代のお母さんたちに向けては特別に、挿絵を中心にして簡単な言葉を添えているそうです。「これはいい!」と思いました。母子手帳には、妊娠や出産の経過から、その子の健康状態や発育・発達が記録されているので、医療機関を受診する際にも、母子手帳を提示することで適切な処置を施してもらえます。これは本当に素晴らしい活動だなと思いました。そして、支援には様々な形があるということを、改めて考えさせられるお話でした。
※会場ロビーに設置されたユニクロのリサイクルボックス
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UNHCR WILL2LIVE映画祭2019は、今後もグロバールフェスタJAPAN(9月28日)、文京シビックホール(10月4日、5日)、名古屋国際センター(13日、14日)で開催。難民にフォーカスした作品が上映されます。皆さんもぜひ、足を運んでください。詳細は公式サイトをチェック。
https://unhcr.refugeefilm.org/2019/
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https://www.jvta.net/tyo/2019will2live2/