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【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭】武田佳倫監督インタビュー 「英語字幕に観客への気遣いを感じました」  

【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭】武田佳倫監督インタビュー 「英語字幕に観客への気遣いを感じました」  

デジタルで撮影・制作された作品のみにフォーカスした国際コンペティション『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭』が9月26日(水)に開幕します! 今年は初のオンライン配信。JVTAは毎年、この映画祭を英語字幕でサポートしており、今年も6本の作品の英語字幕を修了生が手がけています。『英語字幕PROゼミ』は、その上映作品の字幕をチームで作成し、翻訳ディレクターから2度のフィードバックを受けてブラッシュアップする特別ゼミ。今年は、武田佳倫監督の『そして私はパンダやシマウマに色を塗るのだ。』(英題:Then I add colors to a panda and a zebra.)の英語字幕を手がけました。

 
◆英語字幕PROゼミのレポートと翻訳者のコメントはこちら

 
今回は英語字幕付きで自身の作品をご覧になった武田佳倫監督にお話を伺いました。武田監督は同作が初監督作品。ご自身の作品に英語字幕が付くのも初めてだそうです。

 


 
JVTA 今回の上映作品を英語字幕付きでご覧になったご感想を教えてください。
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武田佳倫監督(以下、武田監督) 今回字幕をつけていただき、海外の方の目に触れる機会を頂けることを聞いたとき、嬉しさと同時に大きな不安に襲われました。まず、日本にしか通じないようなネタや言葉遊びが多かったので海外の方に伝わるのかという不安。ノストラダムスの大予言が「1999年の7月に人類滅亡」だということは日本では有名な都市伝説ですが、そもそも出どころは1973年に出版された本「ノストラダムスの大予言」の中で記された日本独自の解釈なので、「1999年7月に滅亡する」と恐れていたのは日本だけなのです。その前提がない海外の方に、この映画はどう映るのだろうか心配でした。ですが、字幕でノストラダムス本の文字まで丁寧に訳して頂き、冒頭で最大限伝わるよう翻訳してくださっていて、とてもありがたかったです。

 
JVTA ありがとうございます。おっしゃる通り、日本ならではの文化を伝えるのは英語字幕の一つのハードルですが、監督にそう感じていただけて安心しました。もう一つの不安とはどんなことでしたか?

 
武田監督 冒頭や中盤に入れ込んだ、短い映像の連続をモンタージュしたシーンです。その問題のシーン、どちらも約2分間しかないのに、100カット近くを撮影して組み合わせた目が回るようなシーンになっています。それに付き合ってくれたスタッフや役者さんたちだって、きっと私に軽く数回は殺意が湧いていただろうと思うのですが、きっと翻訳してくださった方も…。それくらい本当に訳すのが厄介な作品だっただろうなと申し訳ない気持ちでした。

 
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©eiken

 
テンポも速く、それに見合わずセリフ量も多いので、画面一面が文字だらけになっちゃったらどうしよう? 速くて字幕読めなかったらどうしよう? と思っていたのですが(笑)、翻訳していただいたものを観て、その不安もすぐになくなりました。意図を汲み取って訳されていると同時に、目まぐるしく切り替わる映像に取り残されないように、シンプルで簡潔な字幕をつけてくださっていました。観客の読みやすさまで考えられていることが伝わり、ただ訳すだけでも大変なのに、かつ簡潔に訳さなければならないことは、きっととても大変な作業だっただろうと思います。翻訳には意図を汲み取って訳すこと以外に、観客への気遣いが詰まっていることを今まで考えたことがなかったので、その気遣いを感じて、とても感動しました。

 
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©eiken

 

JVTA ❝観客への気遣いが詰まっている❞、ありがとうございます。あの冒頭のシーンは確かに大変でした。言葉遊びも沢山ありましたし、白星さんの理屈っぽさを出しつつ、テンポよく、画面切り替えにも合うように字幕を出す必要があり…。でも読みやすいと感じていただけて良かったです。ぜひ、翻訳者にメッセージを頂けますでしょうか?

 
武田監督 今回初めて字幕をつけて頂いて、もうこんなに幸せなことはありません。あくまで大学の卒業制作として作ったので、大学内で行われる卒業制作展での上映が、この映画の最終回だったはずなんです。終わったらもう観てもらう機会はなかったはずなんです。それがこうして映画祭で流してもらうだけでも思いがけない幸運だったのに、字幕をつけて頂いて、言語の壁を超えてまたさらに大きな大きな輪に広がっていくなんて…。考えてもいなかったからこそ、翻訳するにはすごく面倒臭い内容ばかりだったと思うので、それはとても申し訳ない気持ちです。いつも何気なく観ていた映画の字幕をこれからはきっとなんだか愛おしい気持ちで観てしまいます。もったいないくらい素敵な経験を本当にありがとうございました。

 
◆これからご覧になる方に、メッセージをお願いします。
武田監督 白と黒しかない極端な価値観で世界を見ている主人公の白星は、あまりに極端で非現実的なキャラクターです。こんな人現実にはいないかもしれませんが、白星の「これは絶対こうじゃなきゃいけない」という考えはみんなが多少なりとも持っている普遍的なものだと思っています。大人になるにつれてどんどんそれは凝り固まっていって、自分自身を苦しめます。
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©eiken

 
自分の世界にない新しい何かに出会って、新しい価値観を手に入れた時、世界に色が増えたような感覚がしませんか? それは、美味しいわけがないと避けていた桜餅の葉っぱを初めて食べたら美味しかった時とか、そんな些細なことだっていいのですが。自分の「絶対」しか信じない白星に対して、その存在すらも曖昧な自称幽霊のノストラダムスおじさんの2人が出会って、徐々に世界に色がついていきます。おじさんは本当に幽霊だったのか。それともただの変なおじさんなのか。物語の最後、これからカラフルな世界で生きていく彼女にとっては、きっとそんなこともうどっちでもいいのです。白星の白黒な世界が色づいていく中で、観客の方にも何か新しい発見があったら、とても嬉しいです。

 
JVTA 今年は初のオンライン上映。ぜひ多くの皆さんにご覧いただきたいですね。ありがとうございました!

 
◆国内コンペティション 短編部門 『そして私はパンダやシマウマに色を塗るのだ。』
詳細はこちら

 
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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020
9月26日(土)~10月4日(日)

※今年はオンライン開催。お好きな時間にお好きなだけ自宅から見られます(有料)。
公式サイト https://www.skipcity-dcf.jp/ 

 
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