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<イベントレポート>J-Anime Stream for Ukraineが閉幕! 「日本のアニメ作品を通して、ウクライナに元気を!」

<イベントレポート>J-Anime Stream for Ukraineが閉幕! 「日本のアニメ作品を通して、ウクライナに元気を!」


JVTAは2022年11月25日(金)~12月2日(金)にかけ「J-Anime Stream for Ukraine」を開催した。本イベントは「ウクライナ語字幕をつけた日本アニメを世界に向けて上映する」ために、字幕翻訳、PR、イベント企画などのすべてを学生インターンが主体となって行うことが特徴だ。開催にあたっては日本経済大学(福岡県太宰府市)が共催、外務省と在日ウクライナ大使館が後援となり、ウクライナ人学生と日本人学生計23名が参加した。
 

視聴者はキーウを中心に30地域以上から!「英語でもロシア語でもなく、ウクライナ語で見られてうれしい」
イベントで上映されたのは、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年、宮崎駿監督)と『サカサマのパテマ』(2013年、吉浦康裕監督)の2作品。どちらもウクライナ語字幕での上映は初となる作品だ。学生インターンは夏から翻訳研修をスタート。秋を迎える頃、実際の作品翻訳に着手し始め、11月半ばのギリギリまで推敲を重ねて字幕を完成させた。
 

★翻訳研修や字幕制作に関する記事はこちら

 
作品はウクライナの首都であるキーウを中心として、30以上の地域からの視聴があった。インターンに参加したウクライナ人学生のワルサヴァさんは会期中、「ウクライナで弟の働く喫茶店で上映会が開催された」という知らせと共に動画を共有してくれた。喫茶店内に置かれたスクリーンをお客さんたちが一心に見つめていて、その様子は胸を打つものだった。また他の視聴者からも、「英語でもロシア語でもなく、ウクライナ語でアニメ作品を楽しめたことがうれしい。映画を見ている間はリラックスができた」という声が届いた。本インターンシップの目的である「ウクライナ語字幕をつけた日本アニメで、母国の人を元気にしたい」という学生の思いは、確かに母国の人たちに伝わった。
 

ゲストを招いたトークセッションも開催!日本とウクライナの絆を感じるイベントに
作品上映に加え、ゲストを迎えたトークセッションも開催。「『ルパン三世 カリオストロの城』の魅力を深掘り!ウクライナ人学生が映画評論家・切通理作に聞く」と題し、映画評論家で『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)の著者でもある切通理作氏をお迎えした。
司会は日本経済大学の高里良成さんと、ウクライナ人留学生のカテリナ・グレバさんが担当。2人は切通氏との初回打ち合わせから参加し、J-Anime Stream for Ukraineの主旨とトークセッションの目的を伝え、当日の質問内容を切通氏と話し合って固めた。そして本番に向けてはJVTAスタッフと共に何度も打ち合わせをし、リハーサルを重ねた。
 

イベントは日本人、ウクライナ人併せて約70名が視聴。『ルパン三世 カリオストロの城』における注目シーン、宮崎駿監督作品の変遷、ウクライナでの日本アニメの人気度など、トークは多岐に渡った。実際に『ルパン三世 カリオストロの城』の翻訳にも携わったカテリナさんが、「日本語独特のオノマトペや、ルパンの『あらららら~』というかけ声などは翻訳が難しかった」と語ると、切通氏は「あの『あらららら~』というセリフは、初代声優の山田康雄さんの演技に端を発しているのではないか。日本語としても独特なので、翻訳は難しかったと思う」と考察。作品に対する深い知識に裏付けられたコメントに、司会の2人も頷きながら聞き入っていた。
 

イベント中の様子

イベント中の様子



 

最後のQ&Aセッションでは「『カリオストロの城』はずいぶん前の作品だが、今でも人気があるのか」「切通さんは宮崎駿さんに会ったことがあるか」など、日本語とウクライナ語で多くの質問が届いた。その1つ1つに切通氏は丁寧に回答し、チャット欄には質問だけでなく多くの感想も届いた。終了後のアンケートでも「聞いたことのない話が聞けて良かった」「宮崎駿監督作品の魅力をあらためて発見することができた」という満足の声ばかりだった。
 

イベント終了後、切通氏から動画でメッセージをいただいた。(動画はこちら)
 

司会を務めた高里さん、カテリナさんは共にオンラインイベントの司会は初。しかも日本語とウクライナ語の2言語で進めるイベントのため、練習開始時には発言のタイミングやトークの広げ方に課題があった。2人はその課題を克服しようと、大学やアルバイトの合間を縫って練習を重ねた。
そんな2人の努力の成果は、しっかりと本番に現れた。生配信らしく、本番には予想外の展開もしばしば。しかし繰り返し練習を行い流れが体に入っていた2人は、1つ1つの出来事にしっかりと対応ができていた。「緊張する」「頭が真っ白になる」と言っていた2人だったが、実際には練習の成果を発揮して堂々と司会をやり遂げた。
 

参加者アンケートでは「2か国語での進行は大変なことも多かったと思うが、2人のコンビネーションが素晴らしかった」「国を越えて心を通い合わせたことはこれからの未来にとても意味があることだと思う」等、司会2人に対するエールも届いた。2人の共同作業に日本・ウクライナの絆を感じた視聴者も多かったようだ。
 

終了後の記念写真

終了後の記念写真



 

翻訳技術だけでなく、日本の「協力してやり遂げる」姿勢を学んだ
初めての映像翻訳、初めてのイベント企画、初めての司会。インターンに参加した学生にとっては、あらゆるものが初めての経験だった。ウクライナ人留学生にとっては初めての日本での生活と共にスタートしたインターンシップであったため、学校生活やアルバイトとの両立も大変だった。しかも本国の情勢は落ち着かず、離れて暮らす家族への心配もあっただろう。しかし学生たちは立ち止まることなく、最後までイベントをやり遂げた。
参加学生たちは「大学、バイト、翻訳、PRや企画準備と、本当に大変だった。でもその過程で新しいことを学ぶことができたし、とてもいい経験になった」と、一様に笑顔だった。インターン生が学んだのは映像翻訳の技術だけではない。仲間と共に協力してプロジェクトをやり遂げることや、国境を越えて多くの人とつながること。そのすばらしさを実感したことは、今後の人生で大きな糧になるだろう。
 

多くの方の応援のもと、「J-Anime Stream for Ukraine」は幕を閉じた。これからもJVTAは、「コトバで世界を結ぶ」という企業ミッションのもと、映像翻訳を通して異文化交流や市民同士の相互理解を深め、国と国との懸け橋になるグローバル人材を育成していく。
 

本イベントは各種メディアでも取り上げられ、取材対応もインターン生の貴重な経験となった。各記事は以下のリンクから。
 

◆「日本アニメに、ウクライナ語の翻訳字幕を」福岡に避難の留学生が取り組んだ 「カリオストロの城」「サカサマのパテマ」(RKBニュース)
 
◆日本アニメ通じ福岡から届けたい希望 ウクライナの学生が字幕作成(西日本新聞)
 
◆ウクライナ語字幕 母国にアニメ「ルパン」など2作…福岡の留学生翻訳「元気を」(読売新聞)
 
◆ルパンのアニメ、私の国の言葉で 戦禍逃れたウクライナ学生、翻訳挑戦(朝日新聞)


 

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◆『ルパン三世 カリオストロの城』と『サカサマのパテマ』 ウクライナ語字幕でのオンライン無料上映が決定!~ウクライナ人留学生が協力して翻訳。クラウドファンディングも実施~
 

◆日本映像翻訳アカデミー、ウクライナ避難民学生 23名の長期インターンシップを受け入れ
 

◆【字幕・吹き替えでサポート】UNHCRのアニメーション動画で難民問題を学ぶ
 

◆国連UNHCR協会×JVTA 翻訳者だからできる難民支援のカタチ「UNHCR WILL2LIVE Cinema 2021 募金つきオンラインシアター
 

◆故郷を追われた人を守り続けて70年 UNHCRの活動をJVTAはサポートしています