【レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~】代表・宮沢英樹さんインタビュー 30年の歴史とその先に目指すもの
セクシュアル・マイノリティをテーマとする作品を上映する「レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」は、今年で30年目を迎える歴史ある映画祭だ。これまで映画を通じて多様で自由な社会の創出に貢献してきた。JVTAは字幕翻訳でこの映画祭に協力し、毎年多くの修了生が活躍している。同映画祭代表の宮沢英樹さんは「LGBT/LGBTQという言葉が世間に浸透してきたことは、実感としてあります」と話す。30年の歩みの中で感じていること、40年、50年に向けて目指していきたいことは何か、お話を伺った。
「もともと、私たちの映画祭は『東京国際レズビアン・ゲイ・フィルム&ビデオ・フェスティバル』という名称で、中野サンプラザの小さな階段教室から始まりました。当時は、『教育用のスペースでいかがわしいイベントをするな』と苦情があったと聞いています。今も一般的にはまだ『身近にいる存在』として認識されるのには時間を要する部分もあるかもしれませんが、認知は広がりつつあると感じています。ニュースでも同性婚に関する訴訟が大きく報じられたり、地上波のドラマなどでセクシュアル・マイノリティの役柄がさらっと登場したり、著名人の方々が自身のセクシュアリティをオープンにする機会が増えるなど、ここ数年で大きく変化してきた気がしています。」(宮沢さん)
コロナ禍で開催ができない年もあったが、今年は東京、大阪のリアル会場で開催され、国内外からセレクトした10作品が上映される。
「未曾有のコロナ禍においては、感染予防の観点から開催を見送らざるを得なかったり(2020年)、例年開催していたスパイラルホールでの上映が実現できない(2021年)など、悔しく悲しい出来事もありましたが、すべては当たり前ではないことにも気づかされました。だからこそ、今年30年目という節目で世界中の素晴らしい作品たちを皆様にお届けできることに深く感謝しています。」(宮沢さん)
同映画祭は、レインボーカラーに彩られた会場で行われ、カラフルなグッズが販売されるなど、お祭りのように明るくフレンドリーな雰囲気に包まれている。また、トークイベントには手話通訳が入るなどあらゆる人たちが楽しめる配慮がされているのも特徴だ。動画配信が主流になる今だからこそ、同じスクリーンの前に集いみんなで映画を楽しむ映画祭という場は貴重と言える。今後、40年、50年に向けて目指していきたい先について聞いてみた。
「レインボー・リール東京は、すべてボランティアスタッフが本業と並行しながら運営しています。そして、毎年楽しみに映画を観に来てくださる皆様と、映画祭という大切な場所をサポートしてくださるスポンサーの皆様のおかげで成り立っています。
映画祭を取り巻く状況が目まぐるしく変わる中で、未来は誰にも予測がつきません。ただ、セクシュアリティもジェンダーも職業も国籍も様々な人たちが、『映画祭』という共通のテーマで集い、大きなスクリーンをみながら一緒に泣いたり笑ったり感動をともにできる空間をこれからも提供していけたらと思っています。
※今年の上映作品『フィンランディア』©The Aurora Project
これから先、映画祭で見られるような風景がどこでも見られるようになったらその役目も終わりそうですが、映画配信などが主流になりつつある現状からすると、直に伝える・肌で感じることのできる映画祭は、案外人を繋ぐ場として必要とされるのかもしれません。そんな場であり続けられたら幸せです。」(宮沢さん)
※今年の上映作品『アグネスを語ること』
JVTAは今年も日本初公開となる6作品の字幕を担当(写真掲載の6作品)、20名以上の翻訳者が活躍している。翻訳者はリサーチを重ね、専門的な用語の正しい訳や差別的で不快に感じる表現がないかを常に考え、より慎重に言葉を選ぶことが求められる。そんな翻訳者に宮沢さんからメッセージを頂いた。
※今年の上映作品『スウィートハート』
「言葉には良くも悪くも大きな力があります。それだけに、言葉の表現によっては制作者や演者が伝えようとしているメッセージを誤って伝えてしまうリスクもありそうですし、逆に、ガソリンのように作品が持つパワーにさらなるパワーを注いで、観る側に大きな感動を与えることもできるのでは、とも思います。
作品から発せられる微妙なニュアンスを汲み取って、それを制限時間内の短い言葉にまとめて、演者が発する外国語に絶妙にシンクロするように字幕として変換する…という作業は、並大抵のことではないと思います。私自身は英語が堪能なわけではなく、Google翻訳に頼る日々ですが、想像するだけで途方に暮れてしまいます。これからも素晴らしい字幕作成を通じて、作品に魂を吹き込んでいってください。」(宮沢さん)
※今年の上映作品『サブライム 初恋の歌』
今年は東京と大阪のリアル会場で開催。今すぐ、公式サイトでお気に入りの作品を探して会場に足を運んでほしい。会場で観ることで、この映画祭の魅力がよりダイレクトに伝わるはずだ。
◆第30回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~
2022年7月8日(金)〜14日(木) @シネマート新宿
2022年7月15日(金)〜21日(木) @シネマート心斎橋
2022年7月16日(土)〜18日(月・祝) @スパイラルホール(スパイラル3F)
公式サイト https://rainbowreeltokyo.com/2022web/
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運営・翻訳に携わる修了生・今井祥子さん インタビュー
https://www.jvta.net/tyo/2022rainbowreeltokyo2/
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