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【フィンランド映画祭に字幕で協力】ミカ・カウリスマキの人気シリーズ、メタルコメディ映画の続編など旬の話題作が一挙上映

<strong>【フィンランド映画祭に字幕で協力】ミカ・カウリスマキの人気シリーズ、メタルコメディ映画の続編など旬の話題作が一挙上映</strong>

11月23日(土)、渋谷のユーロスペースでフィンランド映画祭が開幕、JVTAは毎年字幕制作で協力しており、今年は4作品の字幕を担当している。この映画祭で上映されるのは、フィンランドの最新作ばかり。北欧の作品は根強いファンも多く、フィンランド映画界の巨匠、ミカ・カウリスマキの人気シリーズや、過去に上映されたメタルコメディ映画の続編など、話題作5作品がセレクトされている。携わった作品の見どころと翻訳秘話について4人の翻訳者に聞いた。

◆『ミサイル』

(ミーア・テルヴォ監督 2024年)

日本語字幕 井上智恵さん

シングルマザーのニーナがミサイルの墜落事件をきっかけに自分の弱さや不安と向き合い、乗り越えようとする姿を描いた作品です。核戦争という一見、非日常に思える脅威がニーナの日常と重なっていくストーリーが印象的でした。シリアスなテーマながら、ユーモアあり、ロマンスあり、そしてフィンランドの美しい景色あり、80年代の懐かしさ(あるいは新鮮さ)ありと、さまざまな魅力が詰まっていて見終わった後も余韻に浸れます。

実話に基づいているため、歴史的事実等に言及している箇所は慎重にリサーチを行い、わかりやすさを心がけて字幕原稿を作成しました。一方で心情を吐露するシーンは、セリフの意図や熱量を過不足なく伝えられるよう、しっくりはまる表現を模索しました。

◆『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ア・フォレスト』

(ヴィルピ·スータリ監督 2024年)

日本語字幕 塚原雅子さん

フィンランドは国土の約7割を森林が占める自然豊かな国であると同時に、林業が非常に盛んな国でもあります。この作品はフィンランドの森林と、そこで暮らす多様な生物を守るため、過剰な伐採を食い止めるべく森林保護活動を行う若者たちを追ったドキュメンタリーです。

翻訳の際は、事実との齟齬がないよう調べ物を慎重に行いました。特に生物の名前は和名がすぐに確認できないものも多く、調べるのに苦労しました。フィンランドの美しい森の映像と、その中に溶け込むように自然を楽しむ若者たちの姿がとても印象的な作品です。登場人物の心情を意識しながら訳出したので、森林破壊に対する若者たちの悲痛な思いや、彼らの森への純粋な愛情を感じていただけたらうれしいです。

◆『頑固じいさんと愛の物語』

(ミカ・カウリスマキ監督 2024年)

日本語字幕 南部恭子さん

Saimi (Jaana Saarinen) ja Mielensäpahoittaja (Heikki Kinnunen), Mielensäpahoittajan Rakkaustarina, Solar Films. Credit: Solar Films.

この映画は頑固じいさんシリーズ第4作とのことですが、私は今回、初めてこのおじいさんに会いました。思ったとおりユーモアあふれる心温まる作品で、フィンランドの素朴な風景と美しい音楽にも心が洗われます。本当にすがすがしい恋愛もので、誰にでもおススメできるすばらしい映画です!主人公のおじいさんは妻を亡くして独り、寂しさに耐えながらごく普通の日常を送っていますが、そこにサイミという、とても魅力的な女性との出会いがあり、心の若さ、おそらく体力的な若さも取り戻していきます。でもこの二人、最初からおじいさんとおばあさん、という感じは全くしなかったです。映画の見どころは何と言っても、このサイミの自立した強さとチャーミングさでしょう。おじいさん(おじいさんと言いたくないのですが、名前が分からない笑)もシャイなくせに、正直でウソがつけなくて、しっかりアプローチしていくところが微笑ましいです。サイミの娘とおじいさんが初めて会うところも大好きなシーンです。皆さまも、ぜひ劇場で楽しんでいただければと思います。

字幕作成で意識したことは、字数を削ることと、読みやすい言葉選びです。最後までラクに、読んでいることを忘れるような字幕を目指しています。それから今回について細かいことを言うと、あまりおじいさんっぽい言葉使いにはしていません。また原語のフィンランドは分からないのですが、スクリプトの英語だけだと表現が弱い気がした部分もあったので、そういうところは、より豊かな表現を心がけました。

◆『イェヴィダ』

(カトゥヤ・ガウリロフ監督 2023年)

日本語字幕 三宅季実子さん

フィンランド北部ラップランド先住民族であるサーミ人のつらい記憶と再生の物語です。差別や同化を強いられアイデンティティーを奪われることが、どれほど痛く苦しいものなのか。目を覆ってしまいたくなるほど、しかし直視すべき強烈な過去がそこにはありました。自然とつながり未来を考えて生きること、逃げるべき時は逃げること。人生において大切なことや自分らしく生きるヒントがたくさん詰まった作品です。

翻訳では登場人物の感情を丁寧に拾い上げることを意識しました。また、サーミ人女性イェヴィダの幼少期、青年期、現在と3つの時代を描いているため、それぞれの年齢を考えながら慎重に言葉を選びました。心を揺さぶられる作品です。ぜひご覧ください。


さらにオープニング作品『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』 にも注目したい。この作品は、2018年の同映画祭上映作品で2019年に日本でも劇場公開されたメタルコメディ映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』の続編。実は人口比率では世界で最も多くのメタルバンドがいるメタル超大国のフィンランドならではの話題作だ。こちらもどうぞお見逃しなく。

Ⓒ2024 Making Movies, Heimathafen Film, Mutant Koala Pictures, Umedia, Soul Food

フィンランド映画祭

11月23日(土)~11月29日(金)

ユーロスペース

公式サイト: http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000821

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