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【ダマー国際映画祭が開幕】男性翻訳者が語る 家族愛の温もりや思春期の少年の心情の訳し方とは

<strong>【ダマー国際映画祭が開幕】男性翻訳者が語る 家族愛の温もりや思春期の少年の心情の訳し方とは</strong>

4月12日(土)、13日(日)、日比谷コンベンションホールで「ダマー国際映画祭」が開催される。JVTAはこの映画祭に字幕制作で協力しており、今年は10作品の上映作品の字幕を修了生が手がけている。

「ダマー国際映画祭」は、2001年にワシントン州シアトルでスタートした国際短編映画祭。『パッション』や『ナルニア国物語』、『Ray / レイ』などの企画やマーケティングを手掛けたマーク・ジョセフ氏が代表を務めている。「ダマー」とはヘブル語(ヘブライ語)で「隠喩」や「たとえ話」を意味する言葉だ。この映画祭の特徴は、露骨な暴力描写や過激な映像に頼らず、人間の多様な感情や体験を芸術的に表現することを評価すること。バイオレンスシーンが苦手という人も安心して観られ、視聴者の心に深く響く作品が集められている。また、30分未満であることが応募の条件とされており、国内外から選出された28本の短編映画が上映される。

この映画祭の上映作品『Family』の字幕を手がけたD.K.さんと『A Summer’s End Poem』の字幕担当の河井敦さんに話を聞いた。映像翻訳者は全体的に女性が多いが今回は男性の翻訳者2名の声を紹介する。

◆『Family』

Director Anna Shaw (USA)

この作品は主人公の失恋を通して描かれる家族愛がテーマとなっている。セリフが少なく、難しい英語も特に使われていない。D.K.さんはストレートに翻訳をし、作品の邪魔にならないような字幕になるよう心がけたという。

D.K.さんはこれまで映画やドラマだけでなく、ドキュメンタリーやスポーツ系の作品も担当。昨年はアジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」の上映作品の字幕も手がけた。今回担当した『Family』は約5分弱という短い尺のなかで起承転結が描かれていく。短編ならではの難しさとはどんなポイントなのだろうか?

「尺が長いと前後のシーンで情報の補足ができることがありますが、短編ではそれができないことが多いと思います。また、個人的なイメージですがカット変わりが多く、字幕の表示時間が短いという印象があります(作品にもよりますが)。」(D.K.さん)

何げない会話の中に家族の温かさが溢れる作品。簡潔でリアルに展開するセリフにも注目してほしい。

★『A Summer’s End Poem』

Director Lam Can-zhao (China/Switzerland)

中学校の始業式を翌日に控えた少年は、流行りのヘアスタイルでクールにキメて新生活を始めようと、なけなしのお小遣いをはたいて村を飛び出し、都会的な美容院を訪れる。字幕を手がけた河井敦さんは同作の魅力について、無邪気な少年時代に別れを告げ大人になろうとする主人公の心象風景が、夏の終わりという季節に重ねられ詩的に表現されていると語る。

「主人公や脇役たちのセリフや演技は、深い意味はないと思えるほどさりげなくシンプルです。しかしそのすべては主人公の成長を描くストーリーのために機能していて、無駄のない見事な脚本だと思いました。精いっぱい背伸びしようとする人生の特別な季節のほろ苦い記憶が誰の胸にも呼び起こされるはずです。すべてのシーンやセリフの役割を損わないように細心の注意を払い、映画に込めた監督の想いを余すことなく観客に届けるという使命感を抱きながら訳しました。」(河井敦さん)

国際映画祭の上映作品はオリジナル言語がざまざまだが、翻訳者は英語字幕を基に字幕をつくることが多い。『A Summer’s End Poem』のオリジナル言語は中国語だ。河井さんはこれまでミュージシャンやスポーツ選手が出演するファッション系YouTubeコンテンツシリーズなどを手がけてきたが、中国語の作品は今回が初めてだという。

「中国語の知識がなかったため、基本的に英語の字幕だけが唯一の手がかりでした。セリフの本来の意味を調べる必要があった時には中国語の辞書を使って原文の意味をつかむようにしました。二重の外国語の壁を破っていく作業は初めてで、大変でしたが楽しかったです。」(河井敦さん)

河井さんは他にも、環境問題がテーマの短編ドキュメンタリーの字幕を手がけた経験がある。

「短編は尺が短い分、無駄がなく、どのセリフやシーンにも制作者の想いが凝縮されています。それだけ翻訳者の責任も重大になってくるので緊張感を持って、一つひとつ丁寧に訳すようにしました。」(河井敦さん)

さまざまな大人たちと出会い、理想と現実の狭間でどう折り合いをつけて生きるべきかを学ぶ少年。彼が何をあきらめて何を拒否したのか。河井さんはそこがこの作品の見どころだという。

ダマー国際映画祭には、観た人の心に余韻を残す傑作がラインナップされている。

4月12日には、視覚効果とアニメーションを専門とするデジタルメディアのパイオニアで、アカデミー賞受賞者であるエドワード・ジョーンズ氏がトークショーに登壇する。ぜひ会場でご覧ください。

◆ダマー国際映画祭

2025年4月12日(土)~13日(日)

日比谷コンベンションホール

公式サイト:https://damahfilm.com/ja/

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