【『アダムズ・アップル』公開中】修了生の上村遼子さんがデンマークの知識を生かしPRで活躍!
現在公開中のデンマークとドイツの合作映画『アダムズ・アップル』は、“北欧の至宝”と評される俳優、マッツ・ミケルセン主演の話題作です。この作品は、2005年に製作。2006年には本国デンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で作品賞、脚本賞、特殊効果/ 照明賞を受賞しました。日本では2017年の「トーキョーノーザンライツフェスティバル」で初上映、そこでの絶賛を受け、満を持しての劇場公開となりました。この作品の日本劇場公開にあたり、JVTAの2人の修了生が活躍しています。日本語字幕は原田りえさん(インタビュー記事)、デンマーク語資料の翻訳などを上村遼子さんが手がけています。今回はデンマーク語のスキルやこの国に関する知識を生かして活動する上村さんにお話を聞きました。
© 2005 M&M Adams Apples ApS.
JVTA 上村さんがデンマークにご縁ができたきっかけを教えてください。
※上村さん撮影
上村遼子さん(以下、上村さん) 小学生の頃に国際理解クラブに入るなど、もともと海外に興味があったのですが、中学2年生で中学生教育使節団派遣に参加しました。それまでの派遣先はオーストラリアでしたが、私たちの代から派遣先がデンマークに変わったのです。それが私にとって初めての海外渡航でデンマークとの出逢いでした。
JVTA 現地ではどんな生活でしたか?
※上村さんのイラスト
上村さん ホームステイをしながら地元の学生と交流し、一緒に授業を受けたり観光地をまわったり、パーティーでダンスをしたり、夢のような時間を過ごしました。その一方で、同級生から友人を批判するような噂話を聞いて日本と同じような問題もあると感じました。また、デンマークには移民がいることを知りました。私のステイ先のお母さんがムスリムのヒジャブをまとっていて、滞在中の会話から、母国を出てデンマーク人と同じようにデンマーク語を話して、教育を受けたり仕事をしたりしている人たちがいると知り驚きました。中学生ながら、光と陰、おとぎ話のような世界と現実の世界、いろいろなデンマークを感じとっていたと思います。こうした全てを含めてデンマークの虜になってしまいました。
JVTA 帰国後、またデンマークへ行く機会があったそうですね。
上村さん 帰国した途端に「また行きたい!デンマークに住んでみたい!」と言っていました。その後、大人になってから8カ月ほど現地での暮らしを実現することができました。今でも「また行きたい、住みたい」と中学生の頃と同じことを言っています(笑)。
※上村さん撮影
JVTA 現在日本でも、デンマークに関わっているそうですが、具体的にどんな活動をされているのでしょうか?
上村さん デンマーク語を会話と翻訳の両面から勉強しています。以前、デンマーク人の日本観光ツアーのアシスタントをしていましたが、少しだけでもデンマーク語を話すと皆さんが珍しがって喜んでくれました。勉強の時間を作るのは大変ですが、そうした経験が今でもモチベーションとなっています。
※上村さんのイラスト
また月に一度デンマーク通信を発行して、自分で描いた現地の風景のイラストや、現地について調べたこと、経験談などを載せています。この通信を始めた理由はいろいろありますが、いつでも軸となっているのは「デンマークが大好きだからいつも繋がっていたい」という想いです。初めは少数だけ印刷して友人に郵送していましたが、周囲に背中を押され、“誰でも見られるように”と今はネット上にも出すことにしました。先日は読んでくださっていた方と偶然知り合うことができ、その方もデンマーク語を勉強されているとのことでした。この活動を通してデンマークや北欧関係の輪が広がり嬉しいです。
※上村さんのイラスト
上村さんの公式サイト EN PLADS
*デンマーク情報通信『Sa Godt!』(ソォ・ゴット) 最新号掲載中*
https://peraichi.com/landing_pages/view/enplads
JVTA こうした活動から繋がって『アダムズ・アップル』のPRにも参加したんですね。
上村さん はい。この作品では、映画の宣伝で必要な現地の情報収集や、表記のチェックなどに協力させていただき、デンマーク語の勉強を生かす機会にも恵まれました。現地で『アダムズ・アップル』がどのように評価され語られているかという情報や、役者のプロフィールなどをデンマーク語で調べさせていただきました。さらにデンマーク人の友人・知人にも映画について教えてもらい、配給チームの皆さんに情報を提供しました。
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特に人名のカタカナ表記などデンマーク語は英語と異なりますので、その確認を任されました。
SNSでの宣伝やチラシ配布なども行い、公式パンフレットには、脇役ながら存在感のある俳優、ニコライ・リー・コースについてのコラムを執筆させていただきました。
また、映画にちなんでデンマーク通信の特別号を発行し、登場人物が食べているソーセージやビール、また簡単なデンマーク語などを紹介。さらに同映画に出演している俳優マッツ・ミケルセン(写真下)のファンイベントにブースを出店し、ファンの方々に映画とデンマークの魅力を伝えました。おかげ様で前売り券もたくさん購入していただけました。
JVTA 『アダムズ・アップル』で観られるデンマークの魅力を教えてください。
上村さん この映画を初めて観た時、まず感じたのが「すごくデンマークっぽい!」ということでした。その理由は、『アダムズ・アップル』のさまざまなシーンに散りばめられているダーク・ユーモアと自然光の美しさにあります。
自分だったら気持ちが暗くなるようなことや触れてはいけないなと思うようなことも、デンマーク人はユーモアに変えるのがとても上手です。しかし、あるデンマーク人は「皮肉まじりのユーモアを外国人になかなか分かってもらえないから、この映画を日本でどう楽しんでもらえるだろう」と話していました。
© 2005 M&M Adams Apples ApS.
私は映像の字幕翻訳の勉強をしてきたので、残念ながらその全てを字幕に表現しきれないことも分かりますが、それでもユーモアを楽しんでいただけるシーンはたくさんあります。
例えば、ネオナチの思想を持つ主役のアダムが、部屋の壁に敬愛するヒットラーの肖像画を飾っていますが、それを見た牧師のイヴァンが「君の父親か」と聞くシーンは、日本人でもクスッと笑えるのではないでしょうか。デンマークのユーモアは、冗談なのかそうじゃないのかはじめはそこが分かりにくいのです。私自身もかつて、コワモテのデンマーク人に言われた事が本気なのか笑わそうとしたことなのか、分かるのにちょっと時間がかかりました。しかしそれは、今思い出してもほっこりする、かわいい冗談でした。
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本作でも散々ひどい出来事が起こりますが、最後にはほっこりします。それをぜひ、劇場で味わってほしいです。
JVTA 確かに過激なシーンも多く予測不能ですが、最後は感動するという不思議な魅力がありますよね。映像にもデンマークらしい見どころがあるとか?
※上村さん撮影
上村さん 北欧映画では、外からの自然光が室内や人の顔を美しく照らしている画が多く見られます。特に『アダムズ・アップル』では、デンマーク人画家、ヴィルヘルム・ハマスホイの作品を彷彿させるような光を感じます。そうした光の美しさにも注目してほしいですね。また2020年1月には東京都美術館でハマスホイの展覧会が開催されるのでそれも楽しみです。これからも大好きなデンマークの文化を日本に紹介していきたいと思っています。
※上村さんのイラスト
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デンマークに憧れ、自ら情報発信を続けてきたことが、さまざまな仕事に繋がった上村遼子さん。今年は東京国際映画祭でもデンマーク語の資料翻訳を手がけたそうです。JVTAには英語だけではなく、さまざまな国に関する知識や語学力を持つ修了生が沢山います。皆さんも映画祭やイベントなどに出かけ、ぜひ活動範囲を広げてください。
© 2005 M&M Adams Apples ApS.
映画『アダムズ・アップル』は、10月19日より、新宿シネマカリテほかにて全国順次公開中です。ぜひ、ご覧ください。
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配給・宣伝:アダムズ・アップルLLP
https://www.adamsapples-movie.com/
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