【日本とカナダの高校生がカナダで映像翻訳を体験】多様性教育における映像翻訳の親和性とは
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JVTAは、約30年にわたり、社会人を対象とした職業訓練校を軸としたスクール事業を運営し、多くのプロの映像翻訳者を輩出してきた。そのノウハウを活かして、現在は日本国内にある小学校から大学までさまざまな学校で学生にも映像翻訳の指導を行っている。
また日本だけに留まらず、海外で日本語を学ぶ大学生たちに英語字幕を指導する「海外大学字幕翻訳プロジェクト(GUSP)を2016年から実施している。米ロサンゼルスにある日本語補修校のあさひ学園(日本政府、外務省・文科省支援)では、バイリンガルの生徒たちを対象に映像翻訳プログラムを提供。生徒たちは映像翻訳を通して、語学を学ぶ楽しさを知り、将来の仕事の選択肢を広げる機会を得る。
プログラム内容は、短時間で字幕体験を行うベーシックなものから中長期でカリキュラムの一部として組み込むものまで、目的、規模、語学レベルに合わせて柔軟に対応できるのが特徴だ。
2025年1月には、鹿児島県屋久島にあるおおぞら高等学院が毎年行うバンクーバー留学プログラムの一環として、JVTAが現地で英語字幕のワークショップを開催した。今回は日本の留学生10名と現地の高校生23名が同じ教室に集うという新たな試みとなった。講師を務めた藤田亮子さんはカナダに滞在するJVTA修了生。現地に10年以上滞在し、子育てをしながら映像翻訳者として活躍している。
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教材は日本のアニメ映画の1シーン。いくつかのチームに分かれ、まず、現地で日本語クラスを専攻する学生たちがディクテーション(聞き取り)をしたセリフを日本人の留学生が確認。前後の流れや細かいニュアンスなどを話しあいながら、最適な英語のセリフを作り上げた。
この授業を企画したのは、カナダの留学サポートを行うAK JUMP EDUCATIONAL CONSULTING INC. の代表、高林美樹さん。高林さんは、カナダ、ロンドン、NYと合計27年の海外生活で留学、出産や子育てを経験し、現在は日本カナダ商工会議所理事を務めている。高林さんは当日も教室でワークショップに立ち会っている。
◆多様性を認める国カナダでは異文化コミュニケーションが日常
カナダは多民族・多文化の移民の国だ。人口の4分の1にあたる700万人がカナダ以外の国で生まれた移民で、必然的に学校でもさまざまなバックグラウンドの生徒たちが同じ教室で学ぶ。なかには英語力がゼロという学生もいる日常生活の中で異文化を理解するためのコミュニケーション能力が求められる。今回のワークショップに参加した現地の学生も中国系、韓国系、ヨーロッパ系、中東系などバックグラウンドは多様だ。
「日本の留学生と彼らが同じ日本語の映画に向き合い、お互いの解釈や意見を交換しながら英語字幕を作るのは初の試みでしたが、現地の学生もとても興味を持って取り組んでくれました。」(高林さん)
◆答えのない映像翻訳という学びにある無限の可能性
高林さんは、かつて参加したJVTAの映像翻訳の字幕(英日・日英)のワークショップで、字幕作りの面白さを目の当たりにする。映像翻訳は、単にセリフを訳すだけではなくビジュアルから得られる話者の表情や口調、前後の流れなどを考えることも求められる。高林さんが受けたワークショップでは様々な国籍や年齢の人が参加し、この時の体験が今回の開催に繋がった。カナダの多様性社会の教育の中で、映像翻訳のワークショップにはさまざまな可能性があると考えたという。
「『〇〇君お疲れさまです』など日常会話をどう訳すか考えた時に、日本人が思いもしない言葉が出てきたりするんです。優等生が有利とかではなく、その人が持っているセンスなどが問われ、答えが一つではないところに私たちがカナダで行う多様性の教育との親和性を感じました。字幕を作るという作業を通して、グループの中で自然に対話が生まれ、広がることで、いろんなアイディアが飛び交うのが楽しかったので、これをカナダの高校の授業に取り入れて見たいと思ったのです。」(高林さん)
高林さんから依頼を受けたJVTAは、カナダに住む藤田さんに講師を依頼。今回のワークショップが実現した。学生たちにとってもプロから学べる貴重な機会となった。
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「今回、面白かったのは『大丈夫』という言葉です。話者の表情や声のトーン、前後の流れなどでポジティブなのかネガティブなのかニュアンスが変わることを藤田講師が取り上げてくれました。言葉は時代や世代によっても意味合いが変わります。異文化を映像から読み解く作業は本当に奥深く、学生たちは辞書だけでは分からない深いニュアンスを解釈する難しさや面白さも体験できたと思います。またAIが翻訳するのとは全く違う技術があることも実感しました。」(高林さん)
◆日本のカルチャーや言語に興味があることが仕事に繋がることを知る
相手の文化や考え方を理解しあうことは多文化社会のカナダでは必須のスキル。異文化の学生とチームを組んで話し合い、意見をまとめることはコミュニケーション能力の向上にも役立つだけでなく、リーダーシップも学ぶことができる。
「学生が興味を寄せる映像を教材に用いることで、自主的にやりたいという気持ちになってもらうのも欠かせないポイントでした。バイリンガルやトリリンガルが身近なカナダの学生にとって、映像翻訳という職能があること、そして日本の文化が好きだということが仕事に結びつく可能性があるということを知ったのは大きなきっかけとなったはずです」。高林さんは、映像翻訳に無限の可能性を感じている。
JVTAは難民映画祭パートナーズやウクライナ語字幕をつけた日本アニメを世界に向けて上映するイベント「J-Anime Stream for Ukraine」、など学生が参加できるプロジェクトを多数行っている。また、インターンシップの一環として大学生がSDGsに関する作品を翻訳して上映するイベント「WATCH」も開催。今後も国内外の教育現場におけるさらなる映像翻訳の可能性を探求していく。
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