E・クラプトンの「ハッピー・クリスマス」 歌詞聞き起こしと対訳を修了生が担当!
エリック・クラプトン初のクリスマスアルバムとして話題の「ハッピー・クリスマス」。この作品の歌詞の聞き起こしを修了生の高橋佳奈子さん、歌詞対訳を同じく修了生の後藤美奈さんが手がけました。クリスマスソングの定番「ホワイト・クリスマス」や「きよしこの夜」などに加え、書き下ろしのオリジナル「フォー・ラヴ・オン・クリスマス・デイ」も収録。“ギターの神様”が奏でるクリスマスソングは大人が堪能できるブルージーなアレンジとなっています。個人的にもクラプトン・ファンだったという翻訳者のお二人にお話を聞きました。
★高橋 佳奈子さん(歌詞の聞き起こしを担当)
英語の聞き起こしの作業は、歌詞だけでなくジャンルを問わず、担当しています。聞き起こしは聞こえてきた音声を正確に文字に起こす作業なので、媒体がニュースでも歌詞でも気を付けていることは同じです。いくら「こう聞こえた」と思っても、聞き起こした文章の意味が通じなければ聞き起こした意味がありません。不安の残る箇所は音源を直接PCから流したり、ヘッドホンから流したりして、意味が伝わる文章ができるまで同じ作業を繰り返します。最終的に翻訳者さんがすんなりと訳し始められるような聞き起こしスクリプトを作ることを心がけています。
学生時代にクラプトンの曲を良く聞いていたので、このアルバムの聞き起こしを依頼された時はとても嬉しかったです。今回のアルバムはオリジナル曲以外にクリスマスのスタンダードが多く含まれていたので、そういった意味では初めて内容を知るようなニュースなどを聞き起こすよりは、作業が楽だったかもしれません。
★後藤美奈さん(歌詞対訳を担当)
私自身、クラプトンは来日公演にも足を運んだことがあるほど大ファンだったので、このお仕事が決まった時は嬉しい気持ちもある反面、自分に務まるだろうかとプレッシャーも感じました。「ハッピー・クリスマス」は、全14曲に14通りのクリスマスの物語が詰まっています。それぞれの曲の底に流れる空気感をすくい取るために、音源を何度も繰り返し聴きながら訳しました。
カバーの元となっているオーティス・レディングやアンソニー・ハミルトンの原曲も聴き、それが対訳のひらめきに通じる瞬間もありました。歌詞対訳には字幕翻訳と違って字数制限はなく、細かいルールなどもありませんが、アルバムを聴きながら歌詞カードを見る方のことを想像して歌と対訳のテンポが大きく外れないよう、言葉のリズムには気をつけました。
また、字幕の世界では人称の統一は絶対ですが、今回は曲の雰囲気に合わせて2人称を「君」や「あなた」などと変えて表現しました。自分なりにこだわったことは、それぞれの曲が持つ独立した世界観を表現しつつ、アルバムのジャケットとなっているサンタさんの絵が表しているような優しくてぬくもりのある言葉で訳し、全体を通して統一感が出るように心がけたことです。言葉の奥にあるものを引っ張り出すような感覚は、歌詞対訳の難しさであり面白いところだと思います。
大好きなクラプトンの作品に携わることができて、翻訳者冥利に尽きる思いでした。素晴らしいアルバムなので、今年のクリスマスにぜひ手に取っていただけたら幸いです。
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現在、クラプトンの波乱の人生を描いたドキュメンタリー映画『エリック・クラプトン -12小節の人生-』も公開中。「ハッピー・クリスマス」は、今年のクリスマスのBGMにぜひ加えてほしい1枚です。高橋さんと後藤さんが手がけた歌詞カードもじっくりご覧ください。
エリック・クラプトン「ハッピー・クリスマス」
https://www.universal-music.co.jp/eric-clapton/products/uicp-1188/: