日本のコンテンツに火を付けよう。語学を習得した人の新たなキャリアパス
By jvta.admin 11.26.21 2:58 PM今、日本発のコンテンツに期待がかかっている。海外に向けたコンテンツの展開が求められているこの時代に、修了生は新たな職域に一歩踏み出せるのかもしれない。JVTAは11月初旬に、今夏公開された「竜とそばかすの姫」(細田守監督)のアニメーションスタジオ、「スタジオ地図」や「ゴジラ」などのブランディングを手掛けてきたブランド/コンテンツプロデューサーの林美千代さんにインタビューし、時代の要請に応える知識とスキルに迫った。今回はその続編として、林さんとJVTA代表・新楽直樹の対談をお届けする。林さんが語るJVTA修了生への期待、新楽代表が思い描く“これからの仕事”の話は、新たなキャリアパスを考える上でのヒントになるはずだ。
JVTAは林さんと共に、『「あなたのビジネス」で結果を出す!ブランディング最前線』を2022年5月14日に開講する。この講座を共催することの意義とは何か。そしてその先に見える展望とは?
CONTENTS
- ●語学を習得した人の新たなキャリアパス
- ●日本のコンテンツに火を付けるためには?
- ●JVTA修了生には挑む力が備わっている
語学を習得した人の新たなキャリアパス
林さん●JVTAさんとのお付き合いは昨年、私がお話しさせていただいた無料公開セミナー
「エンタメ・ビジネス最前線 大人気キャラクターを世界から日本へ! 日本から世界へ!」(2020年10月5日開催)よりも前にさかのぼります。JVTAさんには、担当するコンテンツブランドの海外向けサイトを多言語翻訳や、戦略をパートナー様にご説明する時のプレゼンテーション原稿の翻訳、最近では「竜とそばかすの姫」でも大変お世話になり、そのお仕事ぶりから本当に生きた翻訳をしてくださっている印象を受けていました。それは、受け手の立場に立った翻訳です。昨年のセミナーではローカライズについて視聴者目線で取り組むことの大切さをお伝えさせていただきました。その際に実感したのが、JVTAで学ぶ皆さんの意識の高さ。作品をリスペクトし、ストーリーを読みこんだ上で翻訳することを基本とする姿に感銘を受けました。
新楽●嬉しいお言葉をありがとうございます。今回のセミナーについて、私の思いを伝えさせてください。JVTAは映像翻訳者の育成に25年間取り組んでいます。背景には、「語学の習得に多くの時間を捧げている人を育て支える」という強い思いがあります。それは、語学の力を持つ人がこの国にはたくさんいるのに、仕事に生かそうとするとなかなか厳しいものがあるという現実を見てのこと。その時に私たちが出合ったのが「映像翻訳」です。この仕事なら、語学の力を使い、ビジネスパーソンとして生きていくこともできます。
“動画の時代”となって映像翻訳者はますます求められるし、その育成もしっかりとやっていく。ただ、将来を見たときに、さらに時代に対応した、語学力が高い人の武器になるような仕事とは何だろう? と考えました。結論から言ってしまうと、それがまさに林さんがされてきた「コンテンツビジネス」なのではないかと思います。「ゴジラ」のような日本のビッグコンテンツから私の生まれ故郷・伊東市のミカンまで、コンテンツの魅力を海外に伝え、ビジネスにつなげる仕事です。林さんからバトンを受け取って社会に貢献できる力を持てば、その人は映像翻訳と同じように、語学の力を生かしてキャリアを重ねていけるはずです。
林さん●コンテンツの魅力を届けるためには、海外の受け手の目線に立ったストーリーを伝える必要があります。修了生の皆さんは、映像翻訳の学習や仕事を通じて、作り手の意図・言葉の伝わり方を常に考えているはず。また、グローバルスタンダードのプレゼンテーションは思いを端的に、分かりやすく、美しく伝えることが前提です。この点も、皆さんならさまざまな制約の中でも、コンテンツの魅力をきちんと引き出すことができるのではないでしょうか。映像翻訳を学んだ人には、コンテンツビジネスで求められる基礎がすでに備わっています。
日本のコンテンツに火を付けるためには?
新楽●以前、日経ビジネスオンラインの連載「シン・ゴジラ、私はこう読む」に執筆者の一人として参加することがありました。政官界から国防、生物学、音楽、文芸、組織経営にITなどの視点から多様な『シン・ゴジラ』論を届けるものです。その電子書籍版のあとがきで、当時の日経ビジネスオンライン編集長・池田信太朗さんが「米国における社会生活のコンテクスト(行間)を共有する国や地域であれば、ハリウッド映画が歓迎され、よき娯楽となるのは当然のこと」という私の言葉を引用し、“物語外のコンテクストを共有することで、より深く作品を味わうことができるようになる”ということを仰っていました。コンテンツに火を付けるためには作り手の思いを汲むことから始まり、受け手の目線に立つこと、ふさわしい売り方をすること――全てを果たす必要があるということだと思います。
映画やドラマだけではありません。特産物や観光地、商品にだって物語があり、コンテクストがある。それが世界を魅了して、日本に何かを引き込んでくる可能性があります。その担い手は、語学を学ぶ人から生まれてほしいという私の思いがあります。
林さん●世界のエンターテインメント・コンテンツ市場では “フランチャイズ・タイトル” 、いわばシリーズもの、更にそれ自体が大きなブランドになっているタイトルが市場の上位を占めています。日本にとってはとても高い壁です。そして134兆円される世界のエンターテインメントの市場規模のうち、日本の市場シェアはわずか 8%と言われています。私たちが世界のマーケットで爪痕を残すためには、クリエイティブの面にでもビジネスの面でも、市場に対するインパクトを端的に訴えることが求められます。その一つは「消費者に伝えたい価値と共感性」です。その作品やブランドが内包している思想性というのか、伝えたい価値(コアバリュー)を明確にします。今私がブランディングのお手伝いをさせて頂いているアニメーションスタジオのスタジオ地図はこの10年間、細田守監督作品を制作し続けてきました。細田監督作品は今夏、劇場公開された「竜とそばかすの姫」はじめ、過去の「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」と合わせて6作、どの作品も相互に関連性はなく、全て独立した異なる物語なのです。そこで世界に対して スタジオ地図とはどんなスタジオなのか を説明するときには、「全ての作品は子供と若者の成長と変化をたたえ、子供たちに未来を選択する力を提供する」という明確なフィロソフィーをお伝えしています。そして、スタジオ地図が作る作品だけでなく、マーケティングコミュニケーションのあり方、関連商品やイベント等もすべからくこの考えに準じて提供するように心がけています。このような明確にスタジオをポジショニングし、明文化することは世界と向き合う第一歩だと思っています。
新楽●あらゆるコンテンツには「目に見えない、でもとても良い“何か”」が含まれている。国内ではそれが暗黙知となり、セールスにもつながるし、ビジネスにもなっている。しかし、ストーリーを海外に売ろうとした時、その“何か”を明文化したりまとめたりは、必ずしもしていない。それをきちんと整理して、示すことができるプロが求められているということですね。
JVTA修了生には挑む力が備わっている
林さん●そうですね。やはり大事なのは、 目線の高さ でしょう。「“○○”だから売れたんだ」という思い込みにとらわれない、巨視的に物事を見るトレーニングを受けている人がいて、その人がそのブランドのストーリーを作る立場になれば、一番力を発揮できるのではないでしょうか。「スタジオ地図」の話は一例ですが、もし修了生の皆さんが何らかの形でこういうお仕事に携わることがあれば、ぜひコンテンツやブランドの意味合いを汲み取って、受け手が驚くようなストーリーを見つけてもらいたい。映像翻訳を学んだ皆さんには、その力があるはずです。
新楽●そんな仕事を全般的に担う職域に、名前を付けたいと思っているんです。林さんと同じような方向を目指して、プレゼンテーションしたり、知財を管理したり、いろいろな仕事に対応する仕事です。
林さん●そういう職域に名前を付けられたら、分かりやすいですよね。「グローバル・コンテンツ・アドミニストレータ」とかね! 先ほど新楽さんがミカンについて仰っていましたけど、オリジナルの野菜や果物を出荷する農家にも寄り添える職域だと思います。何かを売る時は店先だけでなく、世界が売り場になる可能性も大いにあります。それは商品だけでなく、サービスも同じこと。自分たちの活動範囲は、拠点は日本かもしれないけれど、世界中にある。あるいは拠点ですら日本じゃなくてもいいと思える人でいっぱいになれば、より豊かで幸せな日本になっていくのではないでしょうか。
新楽●大賛成です。自分が目の前で作っている物、自分たちが大事にしてきたものを売る時、国内市場だけでは物足りないし、むしろ海外の方がマッチングする可能性もある。その機運はさらに高まっていくと思います。「じゃあ、どのようにするの?」という疑問にこたえるのが、今回のセミナーです。
林さん●私が皆さんと学びたい、共有したいノウハウというのは、最終的には英語力も求められますから、JVTA修了生の皆さんは他の人よりも何段階も先を行っているところから学習をスタートできます。まずは“向こう”のルールを知って、より自由にビジネスするための出発点としましょう。
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