【サマスク2022レポート】AIも遠く及ばない “言葉のプロ”の技と業(わざ)
映画『Dr. Bala』(2022)は、東南アジアで医療活動を続ける大村和弘医師の姿を追ったドキュメンタリー作品だ。大村医師の活動は治療だけにとどまらない。現地の医師たちがいまよりも高いレベルで患者を治療できるよう、培ってきた技術と医師としての在り方を懸命に伝えていく。その姿は、世界中の人の心を動かし、各国の映画祭で注目を集めている。一端を担ったのは、“言葉のプロ”の技が散りばめられた英語字幕だ。
8月21日(日)、JVTAはサマースクールセミナー「~ドキュメンタリー監督と字幕翻訳者が語る~もしも世界に字幕がなかったら?」を開催した。登壇したのは、『Dr. Bala』の監督を務めたKoby Shimada(島田公一)さんと、同作の英語字幕を手掛けた南久美子さん。かつてJVTAロサンゼルス校で開催された字幕体験レッスンに参加し、映像翻訳者の仕事に感銘を受けたと語るShimada監督は、プロの手による字幕を高く評価している。
「南さんの翻訳の技術だけでなく、作品の内容からメッセージまでを伝えようという心配りが、とてもうれしかったです」(Koby Shimada監督)
多くのドキュメンタリー作品の字幕を手掛けてきた南さんは、『Dr. Bala』でも様々な工夫を凝らしている。その1つが、“観客が疲れない字幕”を作ることだ。ドキュメンタリー作品は専門用語など概ね情報量が多い。そのため視聴者が“情報疲れ”してしまうことがある。南さんがドキュメンタリー作品の翻訳を手がける際は、いつも以上に原文にある情報を厳選し、視聴者が理解しやすい字幕を作っている。また、表現の使い分けもポイントだ。時折登場する家庭のシーンでは意識的に柔らかい表現を使い、医療現場のシーンと区別をつけることで、作品全体にメリハリを効かせた。機械翻訳ではかなわない、プロだからこそなせる業は、作品の作り手と観客をつなぐ大きな役割を果たしていた。
By Yukiko Takata
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