濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』の映画祭出品用字幕をJVTAが担当!
濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』がいよいよ日本で公開される。
濱口監督と言えば、『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー国際長編映画賞とカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞。『偶然と想像』ではベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)。そして本作『悪は存在しない』でベネチア国際映画祭の銀獅子賞(審査員大賞)を受賞し、世界三大映画祭のすべてで賞を獲得している、日本を代表する映画監督の一人だ。
JVTAでは濱口監督の作品を複数、英語字幕制作でサポートしてきた。『なみのおと』(2011年)、『親密さ』(2012年)、『不気味なものの肌に触れる』(2013年)、『ハッピーアワー』(2015年)、『偶然と想像』(2021年)などの英語字幕はJVTAで学んだ翻訳者が担当している。そして最新作『悪は存在しない』も、JVTA修了生の翻訳者が映画祭出品用の英語字幕と上映用のイタリア語字幕を制作した。今回は英語字幕を担当したサミハ・アンワーさんに、字幕制作の様子を聞いた。
『悪は存在しない』の舞台は自然豊かな高原に位置する長野県水挽町。代々その地に暮らす主人公・巧は、娘の花とともに自然のサイクルに合わせた慎ましい生活を送っていた。しかしある時、家の近くでグランピング場の設営計画が持ち上がって…というストーリー。自然豊かな町で暮らす人々の様子と、建設計画をめぐる人間模様が交錯しながら物語は進んでいく。
アンワーさんは本作の翻訳について、「沈黙のシーンが多いため、一つひとつのセリフがより重要だと思った」という。映像翻訳ではセリフのないシーンも注意深く映像を見て、セリフ以外の要素からシーンの意図を読み取るスキルが必要となる。JVTAが「映像翻訳者に必要な6つのスキル」の一つとして位置付けている、「作品解釈力」がより求められるということだ。作品の流れやシーンの役割をしっかり理解していないと、いざセリフが出てきたときに本来の意図とは異なるニュアンスで翻訳してしまう可能性がある。
「この映画では各セリフがとてもよく練られていて、それぞれに明確な目的があると感じました。そのためセリフの意図を深く考えるのはもちろん、映画全体の中でどのように結びついているかを考えることを大切にしました」(アンワーさん)
一方で、会話による情報量が多い場面もある。例えばグランピング場建設を計画する会社の従業員2人が車の中で話すシーンだ。そのシーンでは従業員2人の異なる性格を観客に見せる必要があり、必要な情報を含めつつ、コンパクトで読みやすい英語字幕になるよう心掛けた。
自然豊かな土地での暮らしを表す静かな描写と、グランピング場建設をめぐる人間模様。アンワーさんは「会話が本作の緊張感とユーモアの両方を効果的に生み出している」と言い、村人たちによる率直な会話や、グランピング場建設を進める会社の従業員による堅苦しい会話など、幅広い言葉や特徴的な話し方を様々なトーンの英語字幕で訳し分ける作業をとても楽しんだそうだ。
海外では「この年、もっとも静かに心を揺さぶる映画」(Vague Visages)とも評価されている本作。そんな作品の英語字幕を手掛けたことについて、アンワーさんは次のように感想を述べた。
「私自身も本作をとても好きになり、英語で理解する観客が日本語で理解する観客と同じような映画体験ができるようにと翻訳にベストを尽くしました。すでに様々な賞を受賞しているということで、私もとても嬉しく、本作はそれに値すると思います。このようなマスターピースとなる作品を世界に伝える役目を担うことができてとても光栄です」(アンワーさん)
日本での公開は4月26日(金)から始まる。ぜひ劇場で本作の世界観を堪能してほしい。
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