【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #42 週末のはまりごと『パン作り』●梶村佳江子(管理部門スタッフ)
何もやらない期間を何年も経て夏頃からパンを作ってみようという気分になった。
ここ半年ほどで、試みたパンは、米粉パン・スコーン・バターロール・フランスパンの4種。
無理なく楽しむことをモットーに繰り返し、気が向いた時に作っている。
あまり生地を捏ねなくて良いパンから、すごく捏ねないといけないパンまでいろいろある。
個人的には手抜きが大好きなので捏ねなくて良いパンを推奨なのだが、しっかり捏ねるパンの方が断然おいしいという事実。最近ではもっぱらちゃんと捏ねるパンを作っている。
パン作りの工程は材料を量り、混ぜて、捏ねて、発酵させて、形成して、休ませてまた発酵させて、焼くというのが大きな流れだ。そしてその工程は、どれも重要で省くことができない。基本となる工程や分量はあるが、作るたびにその時の環境に合わせて量や時間、タイミングを微妙に変えなければならない。
ふっと、映像翻訳と同じだと思った。基本となるルールや知識はしっかりと理解して身につけないといけないが、その時の社会情勢や流行なども考慮することによって初めて良い翻訳ができる。どちらもひとつひとつの工程を理解して、一歩一歩を確実に進んでいくことが大切なのだなと。
パンを捏ねる作業は、最初はレシピに書かれている時間通りでは終わらず永遠と捏ねていた気がする。すごく骨が折れるからもうやらないとも思わされるほどだった。
翻訳も凝り出すと止まらない。ここもすごく似ている。
作品が完成するまで、翻訳にはある意味終わりがない。似たような作品でも、俳優やアニメのキャラクター、そして時代背景によって使う言い回しやくせ、表現する言葉が確実に変わってくる。英語が分かる、できるだけでは終わらない表現力が物を言う、奥深い言葉の世界。自分が思うままに翻訳をして終わりにはできず、視聴者がその映像や物語の世界観をずれなく楽しめるようにすることが大切だ。誰かの作品に、その作り手の代わりになって、異なる言語で息を吹き込むのだから責任重大である。
もっといい言葉が、しっくりくる表現が…なんて考える。日を置けば置くほど、これはどうだろう、あれはどうだろうとなり、本当に完全に沼である。
翻訳作業は言葉の沼を考えるとリラックスとはかけ離れていると思うが、パン作りにおいては、ただ無心に自分が求める生地になるまで捏ねることでリラックス効果をも生み出す。最近ではその捏ねる作業が気に入っている。慣れもあるのだろうが捏ねる時間も短縮された。やるたびに進化するパン。家族に食べてもらいフィードバックをもらっているのだが、最初に比べて結構納得のいく評価だ。「もっとおいしくするにはこうするのはどうだろうか」と、食べた時に感想とアイディアもくれる。そしてそれを試す、の繰り返しである。
改めて専門職のパン職人はすごい。極めているのだなぁ、と尊敬すると同時に、「私のパンもおいしい!」と自画自賛しながら成長中。まだまだ自己満足だが、いずれ自他ともに認めるおいしいパンを作りたい。
おいしく作ることで人を喜ばせることができるパン作り。異なる言語で世界観を伝えることで人を楽しませることができる映像翻訳。どちらも職人技で、手掛ける人のセンスと熟練度が光るものである。一朝一夕ではいかないものだけれども、独りよがりではない、他者が喜ぶ“作品”を創造してこその満足感を味わっていきたいものだ。
■これまで作ったパンの数々!
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Written by 梶村佳江子
かじむら・かえこ●日本映像翻訳アカデミー・管理部門スタッフ。日本映像翻訳アカデミー(JVTA)修了生。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
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