【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #44 流行歌が教えてくれた●池田明子(広報)
子どもの頃から、歌番組が大好きだった。
令和の今、若い世代や海外で日本の昭和歌謡やシティ・ポップが人気だという。はたち(20歳)の手前まで昭和だった私は、多感な時代をその真っ只中で過ごしていたことになる。映像翻訳者を目指す皆さんには洋楽が好きで英語を学んだ人が多いが、私の場合は日本の流行歌が言葉の道標だったような気がする。まだボキャブラリーが少ない子どもにとって、大好きな歌手の歌には知らない言葉が数多くちりばめられていた。
「バーボン」「横須賀」「乃木坂」「津軽海峡」「ハリウッド」「ポルシェ」「心のこり」「サウスポー」「小春日和」「追憶」「摩天楼」「蜃気楼」「ジェラシー」「未練」「ストロベリーフィールズ」「ドン・ペリニヨン」「シャガール」「マティス」「カム・フラージュ」「ネオンテトラ」「ジョン・ル・カレ」「マンハッタン」「ノーサイド」「条件反射」「北ウイング」「スキャンダル」「カサブランカ」「カンパリ・ソーダ」「ジン」「Ray-ban」「カサノバ」「異邦人」「捜査一課」「鑑識課員」「イミテイション」「ウィドウ」「クリムゾン」「Femme Fatale」「ルビー」「アクアマリン」「鳶色」「ジャンヌ・ダーク」「タブー」「グッド・ラック」「オーデコロン」「エチュード」「カタストロフィ」「コンプレックス」「ブーメラン」「バルセロナ」…。それは外国語だったり、地名だったり、車やお酒の名前だったり、人名だったり、色の名前だったり、映画の題名だったりした。学生時代に使っていた辞書に蛍光ペンでハイライトしていたのは、ほとんどが歌のタイトルや歌詞の一部だったと言っても過言ではない。(※表記は当時聴いていた曲の歌詞より引用)
昭和の歌番組には、歌詞のテロップがないことが多かった。今のようにインターネットでパパっと歌詞を検索することもできず、耳で聴いたままを覚えて意味も分からずにいつも口ずさんでいたものだ。演歌もテレビ番組でよく聴いていたので、子どもなのに「北の宿から」や「長崎は今日も雨だった」、「あずさ2号」、「3年目の浮気」などを歌っているような時代だった。「しらふって何?」と親に聞いたり、「昔の名前で出ています」って何だろう?と、疑問に思ったりしていた。
「公衆電話」や「伝言板」「ダイヤル」「文通」「交換日記」などは、令和の若い世代にとってはある意味ファンタジーなのかもしれない。駅の構内や喫茶店で「〇〇からお越しの〇〇さま、〇〇さまからお電話です」などは、古い映画やドラマの中でしか見たことがないシーンなのだろう。インターネットも携帯電話も、ビデオデッキさえもなかった時代、待ち合わせてもすれ違って会えないことは珍しくなかった。そんなもどかしさが情緒に繋がって名曲が生まれていたのかもしれない。
私は令和の今でもメインに聴くのは、昭和から好きなアーティストの作品だ。ほとんどがファン歴40年以上。子どもの頃からずっと大好きな人のライブに50を超えた今でも行けるなんて、本当に幸せなことだとつくづく思う。CDラジカセも現役。いまだに配信で曲を購入したことはないし、音楽のサブスクも利用していない。歌詞カードやライナーノーツをじっくり読み、作詞、作曲、編曲、演奏者などチェックするのがまた醍醐味なのだ。タイムリーではない若い世代さえも夢中になる“エモい”音楽を物心がついたころから浴びて育ったのだから…。短編映画を観るような余韻に浸りながら、歌詞の世界を堪能する。大人になった今だからこそ、その深さにまたぐっとくる。そんな至福の時間をこれからも大切にしたい。
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Written by 池田明子
いけだ・あきこ●日本映像翻訳アカデミー・コーポレートコミュニケーション部門所属。English Clock、英日映像翻訳科を受講後、JVTAスタッフになる。“JVTA昭和歌謡部”のメンバーとして学校内で昭和の歌の魅力を密かに発信中。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
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