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【フリーランスの多様な働き方】地方都市や海外在住、子育てとの両立の3名の映像翻訳者を紹介

【フリーランスの多様な働き方】地方都市や海外在住、子育てとの両立の3名の映像翻訳者を紹介

映像翻訳者の多くはフリーランスとして活躍している。企業に属するのではなく、自分でスケジュールを管理しながら在宅でできるので、多様な働き方が可能だ。どこに暮らしていても子育てや介護をしていてもプロとして仕事ができるのが魅力でもある。今回は、子育てと両立しているウォルシュ未加さん、LA在住で日本やLAのクライアントから翻訳を受注している小川恵里奈さん、地方都市在住で東京のクライアントと仕事をしている中村早希さんに取材。映像翻訳者を目指したきっかけや、フリーランスという働き方のメリット、日々の仕事へ取り組み方などについて話を聞いた。

◆子育てと翻訳業を両立 ウォルシュ未加さん
受講コース:英日映像翻訳コース(東京校)
受講年:2017年4月期修了 
お住いの都道府県:東京都 
映画作品(実写、アニメーション)、リアリティー番組(恋愛もの、料理バトルもの、自宅改造ものなど)、英語以外の原語の作品(タイ、韓国、中国など)

●映像翻訳者を目指したきっかけを教えてください。
きっかけは、昔から英語が得意だったこと、フリーランスとして自分が好きなタイミングで好きな場所でできる仕事をしたかったことですね。新卒での会社員時代、仕事は楽しかったのですが、毎日通勤電車に乗るのが嫌だったのと、自分の強みを生かした仕事がしたいと思っていました。

●子育てと仕事をどのように両立していますか?
娘は生後9カ月で、まだ保育園には行っていないので、夫と家事育児を分担しながらやっています。産休のタイミングは22年11月いっぱいくらいまでフルで仕事をし、12月1日にお休みしますという連絡を、ディレクターの皆さんにしました。12月初めまでクライアントの直しの対応などをしていた記憶があります。そして、12月中旬に出産、翌23年3月には仕事に復帰。フリーランスは産休制度がないので経済的な不安が大きかったですが、逆に言えば自分のタイミングで休みの期間を調整できるのは良い点ですね。

現在は、夫が家にいる間は家事育児をほとんどお任せして仕事を優先させ、夫が会社に行っている間は娘が寝ている時間を見計らって少しでもパソコンに向います。娘の機嫌が悪くてぐずってる時は、娘を膝に乗せながら作業をすることもあります。それでも家族の時間を大切にしたい気持ちも強いので、育児優先になってしまい、昼間はかなり効率が悪いです。一番はかどるのは、娘が寝てから夫が帰ってくるまでの夜8時から10時くらいまでの2時間。あとは睡眠時間を削って夜中に作業します。今は、来年4月から保育園に入れようか悩んでいるところです。

●今後の翻訳者としての目標は?
なるべく長くこの仕事を続けていくこと、自信を持って自分の名前をクレジットに載せられるような作品を作り続けること。そして娘に「お母さんが携わった作品だよ」と自慢できるような字幕を作り続けることですね。そして、一度は劇場映画などを手掛けてみたいです。加えて7月からはディレクターとして、スポーツ案件のディレクションも少ししています。字幕翻訳は7割で3割がチェッカーといった感じでしょうか。今後は吹き替えにも挑戦したいですね。

【関連記事】
ウォルシュさんが字幕を手がけた映画のプレミア上映レポート
https://www.jvta.net/tyo/end-of-loyalty-2/

◆地元都市在住・映像翻翻訳者 中村早希さん
受講コース:英日、日英映像翻訳コース(ロサンゼルス校)
受講年:2020年修了
お住いの都道府県:兵庫県
手掛けた作品(ジャンル):長編映画、アニメ、ドラマ、リアリティ、コメディ、ドキュメンタリーなど

●映像翻訳者を目指したきっかけを教えてください。
興味のある言語や文化に常に関われること、そしてフリーランスになれることの2点を軸に、何かできることはないかと模索していたところ「翻訳」という仕事にたどり着きました。最初は出版翻訳を考えていましたが、JVTAのオープンスクールで字幕翻訳の楽しさと奥深さを知り、プロの映像翻訳者を目指すことにしました。

●フリーランスの映像翻訳者を選んでよかったと思うことは何ですか?
スケジュールを自分で決められるところです。前職では始業時間が遅いことが悩みでしたが、今では早朝からでも仕事を始められるので朝型の私にはぴったりです。また予定に合わせて、仕事量を調整したり、仕事を前倒しで進めたりしておくこともできます。また今は一時休業しているのですが、それもフリーランスだからこそできる選択。家庭の事情などで一時的に仕事をセーブすることで、臨機応変に対応できています。そのため、ライフスタイルに変化があっても長く続けられる仕事だと感じています。

●仕事をする上で、住む場所がメリット、デメリットを感じたことはありますか?
映画祭は都心で開催されることが多い印象なので、担当作品を劇場で見られなかった…という経験はありますが、ネット環境さえあればどこにいても仕事ができるので、地方在住でも不利だと感じたことはありません。また、お仕事でご一緒した先輩の翻訳者が同じ地域に住んでいると分かり、実際に会ってお話を伺ったこともあります。地方在住の翻訳者も意外と多いので、住んでいる場所にかかわらず、翻訳者のつながりを築くことは可能だと思います。

●今後、どのような作品を手掛けていきたいですか?
大学の頃に専攻していた『グリム童話』関連の作品があれば、ぜひ担当したいです!また最近はコメディをよく見ているので、「笑い」をうまく字幕で伝えられる翻訳者になりたいと思います。

【関連記事】
中村さんのLA留学についての記事
https://www.jvta.net/la/saki-nakamaura/

◆LA在住・映像翻訳者 小川恵里奈さん
受講コース:英日、日英映像翻訳コース(ロサンゼルス校) バリアフリー字幕講座
受講年:2021年4月期映像翻訳実践コース修了 2020年10月期バリアフリー字幕講座終了
お住いの都道府県:アメリカ カリフォルニア
手掛けた作品(ジャンル):映像翻訳・バリアフリー字幕ともにアニメから映画やリアリティーショー、バラエティ番組、1~2分の短い映像に対応するゲーム予告、ドキュメンタリーまで、幅広い作品を担当。また吹き替え翻訳も数多く手がけており、翻訳作品の声優を務めた経験もある。

●映像翻訳者を目指したきっかけを教えてください。
本格的に映像翻訳を意識したのは23歳の頃です。学生時代の私は英語がすごく苦手でした。ただ、人と会話することが好きなので英語を話せれば世界中の人と話せると思ったんです。そこから本格的に英語を学びました。学習方法の1つとして映像作品をたくさん見たのですが、英語が分かるにつれて日本語の字幕や吹き替えに注目するようになりました。限られた時間の中で簡潔にわかりやすい日本語にまとめられている翻訳文。この翻訳文のおかげで英語力ゼロだった私が英語を理解し話すことができるようになるまで成長し、ますます映像翻訳の世界に引き込まれていきました。大好きな映像作品を見ながら英語力や日本語力を強化でき、こんなにワクワクする仕事はない、映像翻訳者になりたいと思いました。

●海外在住でフリーランスの映像翻訳者として活躍できるメリットは?
私が普段から感じている大きなメリットを3つ。
1.時差が活用できる
緊急な仕事が日本から来た場合でも、日本とは時差があるため日本の一般的な営業時間外に作業ができます。尺や内容によっては日本の夜に送られてきた作品を次の日の営業時間までに納品することもできるので、受注する仕事の幅が広がります。

2. 簡単に英語のインプットができる
英語圏に住んでいるので常に生きた英語に触れることができるのは大きなメリットです。日常生活を過ごすだけで英語のインプットができるので、日々移り変わる言葉やトレンドを肌で感じることができます。この環境は海外在住だからこそ最大限利用できる事かと思います。特に私の住んでいるカリフォルニアは多種多様な文化に触れ、人々と出会う機会があるので、英語以外の言語の作品の翻訳依頼があった場合にもその言語を話す国の特徴や背景がつかみやすいのもメリットのひとつです。

3. 日本にいる時と大きな違いはない
海外在住でも、日本でフリーランスとして働く場合と大きな違いがないことも私にとってはうれしい誤算でした。居住国によって税金などの手続きは変わると思いますが、それ以外は特に変わったことはありません。日本のクライアントと仕事をすれば文化の違いによるストレスもないので人によってはとても働きやすく感じると思います。日本の祝日や緊急事態にはむしろ頼りにされたり、海外在住の翻訳者を求めたりしているクライアントもいます。

●フリーランスの映像翻訳者を選んでよかったと思うことは何ですか?
デビュー後、最初のうちはうまく時間の配分をすることができずに深夜まで作業をしたり土日にも作業をしたりしていました。今はもう慣れたので、基本的に土日は休んで家族と過ごし、平日は基本17時までと作業時間を決めています。(そううまくいかないこともありますが)。趣味が旅行なので、家族や自分のタイミングに合わせて休みが取れる環境はとてもありがたいです。日本に住んでいる家族の体調が悪いときにも、すぐに帰国することができます。そういった事を考えると、海外に住んでいるからこそフリーランスになってよかったなと思います。

●今後の翻訳者としての目標は?
選ばれる翻訳者になるということです。そうなるためにまず限りなく校正の少ない翻訳文を作れる翻訳者になりたいです。また、ジャンルを問わずオールラウンダーとして活躍したいのはもちろん、例えばSF作品なら私にお願いしたいといった印象をクライアントが持ってくれるまで成長できるよう日々取り組んでいきます。また翻訳でもバリアフリーでもやはり劇場公開作品を担当するか、毎週放送されているシリーズものの作品を全て担当できることを目指したいです。

【関連記事】
小川さんが受講時のインタビュー記事

https://www.jvta.net/la/studetent-erinaogawa/

映像翻訳者という仕事は、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方が可能だ。移住や結婚、出産など環境が変わっても続けていける。一生携われる仕事の選択肢の一つとして、じっくりと取り組めるのが魅力と言えるだろう。

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