GWは人気の連載サイトで視野を広げよう!② MangaBox(English) 石川エディス ディレクター
皆さんは、Webサイトにお気に入りの連載記事がありますか?
JVTAでは、金融関連やスポーツ系、車、時計、セレブネタ、マンガなどさまざまなジャンルの連載記事を受注しており、多くの受講生・修了生がチームを組んで翻訳作業に携わっています。一つのジャンルに特化したサイトは、それをこよなく愛する読者が満足できる記事をつくるのが至難の業。翻訳者ははじめからそのジャンルに精通していたわけではありませんが、レギュラーで担当することで専門用語やトーンを知識として蓄え、得意分野になっていくのです。実際に、こうしたチーム翻訳で経験を重ねて言葉を磨き、その後トライアルに合格している人がたくさんいます。翻訳者とチェッカーの両方を経験することも、自分の原稿を客観的に見直す視点を養うことに役立つといいます。
そこで今回は「MangaBox(English)」を翻訳を担当する石川エディスディレクターに、このサイトならではの特徴や翻訳のコツを聞いてみました!
◆MangaBox(English) 石川エディス ディレクター
https://www.mangabox.me/reader/en/
●どんなサイト? どんな記事が読める?
DeNAが運営し、日本の有名作家の最新作のマンガを無料で読めるサイト、マンガボックス。私が担当するのはその英語版です。現在は5作品を連載中で、スマートフォンのアプリやWeb上で人気漫画の最新エピソードを英語で楽しめます。
●JVTAが関わっている内容は?
現在は、『天空侵犯』(英語タイトルHigh-rise Invasion)を1週間に1エピソードずつ更新しています。(最新作はEpisode214)。この作品では4名のチームが稼働中。翻訳者が2人(翻訳とチェックを交互に担当)、マンガのイラストの中に、英語のテキストをはめ込むレタリング担当者1名、そして最終チェックをするディレクターが1名です。1回の目安はマンガのページで16ページくらい。吹き出しなどの文字を英語に訳します。また物語の簡単なあらすじなどの英訳もしています。
まず、翻訳とチェック作業の後、レタリングへ。クライアントからのチェックバックの後、ワードチョイスを変更することもあります。納期はこれらのすべての行程を含めて5日とタイトです。基本的に一つの作品は同じ人が担当するので、キャラやこれまでの物語は知り尽くしているので、短い納期にも対応できています。
●このサイトならではの難しさは?
★オノマトペはマンガ翻訳ならではの難点
擬音語や擬態語といったオノマトペをすべて英語にすること。日本語の文字は残して、英語で併記しています。
たとえば、「ぎしっ…」はCREAK、「ギロリ」はGLARE、「ドクン」はPOUNDなど、言葉のセレクトが悩みどころです。アニメと違い、音や動きがないため、それを想像しながらオノマトペで補足していくのです。例えば、ドアを開ける「ガラッ」という音も、絵を見ただけでは動きが分かりません。その場合は動きを説明するためにSLIDEという動詞を使いました。他にも腕を「ガシッ!」と掴むときはGRAB!、「ガクッ」と崩れ落ちる時はCOLLAPS、「くるくる」はTURNにするといった感じですね。オノマトペは長年親しんできた感覚的なものなので、そのニュアンスを知らない人に伝えるのはとても難しい…。これはマンガ翻訳ならではですね。
★敬称はそのままアルファベットで表記
読者は日本のマンガが大好きな人たちなので、このサイトでは「さん(SAN)」「ちゃん(CHAN)」「先生(SENSEI)」「先輩(SENPAI)」なども、そのままローマ字で表記します。読者からはできるだけ、原書に近い世界観を楽しみたいという声が多く、省くと嫌がられるのです。日本の映画やドラマなどに英語字幕を付ける場合、先輩などを入れると、意味が分からない人も多く基本は入れないので、これもマンガならではだと思います。
お弁当や日本の武道(柔道、剣道、相撲)などのルールや掛け声など、日本の独自の文化が出てきた時は、解説を入れないと分からないこともあります。その場合は、余白に補足のテキストを入れています。
●読者へ一言!
マンガの英訳というと吹き出しの部分だけをイメージしがちですが、実はそれ以外の情報も訳しています。フォントや配置もこだわり、英語も絵の一部に溶け込んで違和感なく見えるように意識していますので、マンガ好きな人にはぜひ、こういう細かいところまで見てほしいですね。
◆MangaBox(English)
https://www.mangabox.me/reader/en/
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いかがでしたか?
GWで少し時間に余裕のあるこの時期、皆さんも新しい分野への扉を開いてください!
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