【映像翻訳者としてプロデビュー8カ月】修了生・染野日名子さん
★JVTAメルマガVol.800特別企画★
2017年4月期 日英映像翻訳科 実践コース修了
【映像翻訳者としてプロデビュー8年】修了生・染野日名子さん
中学時代から小説家を目指し、ライトノベルやアニメに親しむ。大学では民族学を専攻。民族音楽をはじめとする島しょ地域の文化や歴史を学ぶ。「不惑」のころ、映像翻訳に興味を持って、JVTAの日英映像翻訳科を受講し、2018年10月にプロデビュー。現在は、企業系動画やアニメ、資料翻訳などを手がけている。趣味はピアノ演奏(ジャズ、ブラジル音楽)。
JVTA 染野さんが映像翻訳を学ぼうと思ったきっかけを教えてください。
染野日名子さん(以下 染野さん) 中学時代から小説家を目指していましたが、いよいよ「不惑」と言われる年齢を迎えるころ、「これ」と思える道をそろそろ定めなければと思いました。そんな時、アルクのサイトでよく目にしていた「映像翻訳」という職業を思い出しました。「面白い物語は書けないけれど、誰かが作った面白い物語を翻訳することならできる!」と思い、この道に目標を定めました。
かつて中学時代、健康上の理由で学校を休みがちだった私を楽しませてくれたのは、ラノベ(ライトノベル)やアニメなどの物語の数々でした。同じように様々な理由で家から出られない世界中の人たちが、お部屋のなかで世界を広げられるようお手伝いしたい、毎日をワクワク過ごしてもらいたい――そう思ったのが作家志望の動機、ひいては映像翻訳を学んだ動機です。
※当時、染野さんが好きだった作品 染野さん撮影
JVTA それで英日ではなく、日英を選んだんですね。
染野さん はい。海外作品よりも日本のドラマやアニメ、映画が好きな私にとって、国内唯一の日英コースがあるJVTA(※当時)は、そのまま唯一の選択肢となりました。また、海外経験がない私には英語圏の文化的背景や流行など疎い要素が多く、英日はハードルが高いと今でも感じています。
JVTA 講義やOJTで学び、具体的に仕事に生かせていることはありますか?
染野さん 講義では講師に「ここはなぜこう訳したの?」とよく聞かれました。その経験を生かし、「ここは講義だったら突っ込まれそうだな」と思う箇所は最終的にその言葉を選んだ理由を申し送りに書くようにしています。
JVTA 染野さんは昨年、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の上映作品の翻訳に「字幕PROゼミ」で参加されました。この経験も役に立っているとか。
染野さん チーム翻訳初体験となったPROゼミは本当に勉強になりました。3人で短編作品の字幕に取り組みました。それまでも客観的に自分の字幕を見ていたつもりでしたが、“つもり”でしかなかったと痛感しました。チームメンバーに様々な指摘や提案をもらい、ディレクターからフィードバックを受けてリライトを繰り返したことで、より客観的な見方ができるようになったと思います。直後のトライアルで合格できたのは、PROゼミの経験のおかげだと思います。今もチーム翻訳は大好きです。
※染野さんがチーム翻訳で字幕を担当
2018年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭 上映作品『はりこみ』(板垣雄亮監督)©FUNNY FOR
◆染野さんが参加したPROゼミのレポートはこちら
https://www.jvta.net/tyo/skip-city2018-pro-seminar/
JVTA PROゼミ後にトライアルに合格し、2018年の10月にOJTを終え、プロデビュー。この8カ月でどんな作品を担当しましたか?
染野さん 短いものでは2分ほどのインタビューがありました。長いものですと2時間の実写映画や全24話のテレビアニメシリーズ(いずれも翻訳者2名で担当)です。3~5分の企業系の動画も多いですし、テキスト翻訳のお仕事も思ったよりいただきます。テレビドラマの企画書(各話の詳細なあらすじ)やテレビアニメのマーケティング資料などもあり、どれもこれも興味深く楽しいです。
JVTA なかなか幅広いラインナップですね。担当案件で苦労したことはありますか?
染野さん シリーズものは映画などと違って、物語を最後まで見届けずに訳し始めるので、先の展開がわからないまま訳さざるを得ません。ですから、伏線の内容をつかみにくく、ぴったりの訳を見つけるのが必然的に難しくなりますね。そんな時も、チーム翻訳なら仲間と相談して訳を練り上げることができるので、心強いです。また、翻訳作業の大変さを分かち合える仲間がいる、という意味でも心強く、チーム翻訳は本当に楽しいです。
でも、長い時間をかけてじっくりと物語を描くことがシリーズものの魅力でもあります。また、放送中の視聴者(あるいは原作連載中の読者)の反応が内容に反映されるのも映画との違いです。「続きが楽しみ!」という気持ちは、時として生きる糧にもなります。
※上記のPROゼミでディレクターのフィードバックを受ける様子
JVTA 工夫していることはどんなことでしょう?
染野さん 発言者の気持ちを理解するよう心がけています。そうすることでワードチョイスやニュアンスだけでなく、日本語から英語に訳しにくいセリフでも、解決策を見つけやすくなると思います。ただ名前を呼ぶだけのセリフでも、呼びかけるときの気持ちを理解することで訳し方が変わってきます。
JVTA 日英ならではの難しさはありますか?
染野さん 「日英ならでは」というよりは「日本語ネイティブならでは」の難しさかもしれませんが、力士が登場する作品に謎のセリフがありました。日本語なのですべての意味は分かっているはずですが、その文脈における発言意図がわかりません。とりあえずネイティブたる自分を信じ、読み取れるとおりの意味で訳しました。なまじ日本語に対する自信があるだけに、はじめはきちんと調べなかったんです。ところが、リサーチ用に借りてきた相撲に関する書籍を休憩がてらめくっていたら、なんとそのセリフに登場する言葉が実は相撲の隠語だとわかったのです! (それを知ったあとでためしに検索してみたら、その隠語の意味があっさりヒットしました) しかし、それによってセリフ全体の意味がますますわからなくなってしまい…。
※イメージ
JVTA 相撲など専門的な分野は日本人でも難しい…。日本の文化を知らない人にその魅力を解説するのも日英映像翻訳者の大切な役割ですね。
染野さん そうですね。この時は、相撲に詳しい友人にメールして「このセリフはこういう意味?」と聞きました。そこにはなんと、さらに私の知らない「その分野の習わし」が含まれており、友人がセリフの全てを「解読」してくれたのです! 危うくリサーチ不足でとんでもなくつまらない内容に誤訳をするところでした。今後は日本語ネイティブだからと油断せず、「いまひとつわからないな~」という自分の感覚を大切にし、根気よく丁寧に向き合おうと思いました。また、そう感じるものは決まり文句の場合もあるので、そのまま検索してみるのもコツだと学びました。
JVTA 最後に今後の目標を聞かせてください。
染野さん 映像翻訳者になったことで、好きな女優さんが出る映画や、ちょうど「最近どんな活動をしてるのかな?」と思っていたベテラン声優さんが主演の短編アニメ、注目している監督、脚本家の作品を担当するという嬉しい経験をすることができました。私はテレビが好きなので、今後もドラマやアニメなどテレビシリーズのお仕事を継続的にいただけるようになりたいな~と思っています。また、大学で民族学を専攻し南太平洋や沖縄の文化を調べたり、趣味でブラジル文化を学んだりした経験があるので、今後はそういったエリアの文化や生活に関するドキュメンタリー作品に携われたら嬉しいです。
※染野さん撮影
JVTA 今後のご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました!
【関連記事】
JVTAメルマガVol.800特別企画
【映像翻訳者としてプロデビュー8年】修了生・青葉里知子さん
https://www.jvta.net/tyo/richiko-aoba/
【映像翻訳者としてプロデビュー18年】修了生・幡野裕美さん
https://www.jvta.net/tyo/yumi-hatano/