修了生の野村佳子さんが絵本「祈る子どもたち」の英訳を手がけました!
現在発売中の絵本「祈る子どもたち」(アリエスブックス刊)の英訳を、JVTAの修了生で講師も務める野村佳子さんが手がけました。この作品には、遥か昔の地球から人類の誕生、善と悪がうごめき混沌としていくた世の中とそれを鎮める祈りが描かれています。テキストは、日本初のチルドレンミュージアムをプロデュースし、多くの児童書の執筆や監修を手掛ける目黒実さん、イラストは、絵本以外にもスピッツのCDジャケットなど幅広く活躍するイラストレーターの福田利之さんが担当した❝大人のための絵本❞です
野村さんの英訳は日本版の本の巻末にまとめて掲載され、1冊で日本語と英語の両方を見られるようになっていますが、これは絵本業界の中でもちょっと珍しい試みとのこと。そこで、今回は株式会社アリエスブックスの山下麻里さんと英訳の野村さんにその背景と作品への想いを伺いました。
◆株式会社アリエスブックスの山下麻里さんのお話
弊社は2015年夏に立ち上がった若くて小さな出版社です。これまで8冊の本を出版しましたが、英訳を本自体につけたのは初めての試みでした。
紛争や災害で世界は混乱する現代、どうしても争いをやめられない人間は愚かで、大いなる自然を前には立ち尽くすしかない小さな存在であることを思い知らされます。しかしながら、同時に人間は美しく、しなやかでたくましくもあります。「祈る」ことで、自然と交信し、人々のつながりを感じてきた私たち。善や悪、種族や文化や宗教までも越えた「祈り」を絵本で表現できたらという思いを込めてこの本をつくりました。
「英訳を載せよう!」と提案してくださったのは絵を描いた福田利之さんです。「目黒さんの言葉をより多くの人に届けたい」と言ってくださいました。
元々、この本は昨年2017年3月11日、震災から6年の日に発行する予定でした。諸々の事情があり、11月11日発行に変更になってしまったのですが、東日本大震災への祈りの気持ちが強く込められています。2011年当時そしてその後も、東北に向けて沢山の人が祈りました。国内だけでなく、国外からも沢山の祈りとエールをいただいたと思います。その方々に向けても、微弱ながらもメッセージを発信できたらという気持ちがありました。そして、野村佳子さんが、本当に丁寧に、素敵な英訳をしてくださり、とても嬉しく感じています。
まだまだ発行点数が少ない弊社ですが、いずれは、ボローニャなどのチルドレンズブックフェアなどにも参加して、海外にもアピールできたらと思っています。そのことも踏まえて、初めての英訳は私たちにとって大きな意味がありました。ゆっくり、じっくり時間がかかっても、沢山の方々に届けられたらいいなと思っています。
◆英訳を担当したJVTA修了生で講師も務める野村佳子さんのお話
以前から福田利之さんの作品が大好きで個展などに通っていたところ、大学の先輩を通じて福田さんと知り合いになる機会があり、今回幸運にも声をかけて頂きました。実は映像翻訳を目指す前、絵本翻訳に憧れていた時期があったのです。でも“絵本翻訳はきっと人生経験を積んでからの方がいい”と感じ、長期計画で実現させるつもりだったのですが…。思わぬタイミングで夢が叶ってしまいました。それもこの上ない形で。
最初に原稿を頂いた時、目黒実さんの言葉があまりにも力強く、そのメッセージや世界観があまりにも壮大で、“自分に訳せるのか?”とひるんだのを覚えています。字幕翻訳で訳が思い浮かばない時、原音をひたすら口ずさんで体に覚えさせるのですが、今回もまずは目黒さんの文章を家や電車の中、寝る前に繰り返し読み、福田さんの絵と共に体の中に取り入れてから、訳に取りかかるようにしました。日本語のリズムを崩さぬよう、言葉のニュアンスを保つように努力した結果、何とか満足していただける英訳を生み出すことができたかなと感じています。
装丁を手がけられたアリエスブックスの山下さんから絵本が届いた時は、舞い上がって何度もページをめくってしまいました。英訳は最後の2ページに載っているのですが、福田さんから、“映画のエンドロールのような効果が出ている”というコメントを頂き、私にとってはとてもうれしい言葉でした。一度立ち止まって考える必要性が増えてきた、今の時代に必要な絵本だと思います。英訳を通じて世界中の人に読んでもらえることを祈っています。
祈る子どもたち
文・目黒 実 絵・福田俊之
発行 アリエスブックス
英訳 野村佳子
http://www.ariesbooks.jp/Detail_inoru.html