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【インターンシップ生をのべ300人受け入れ】 フランス人学生がJVTAでさまざまな角度から翻訳業務を体験

【インターンシップ生をのべ300人受け入れ】 フランス人学生がJVTAでさまざまな角度から翻訳業務を体験

JVTAでは語学力を活かした就業体験を提供して学業や将来の進路選択に活かしてもらうことを目的に、国内外からこれまで多くのインターンシップ生を受け入れてきた。その数は2019年から今年まででのべ300人を超えている。2024年は、4月~7月にかけて、オンライン上映イベント「WATCH 2024 : For a Sustainable Future」(https://www.watch-sdgs.com/)に携わる長期のインターンシップ生として日本・アメリカ・フィリピン・ベルギー・インドの学生51名を迎えたほか、7月~8月には、法政大学から日本人学生1名のインターンシップの受け入れを行った。

フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)で日本語と日本文化を学ぶ修士課程2年生のフランス人学生エリザヴェタ・プリコッドコさんもその一人だ。6月から9月まで、インターンとしてJVTA東京校オフィスに勤務。エリザヴェタさんは、日本の社会学を専門に学んだことから、「社会を反映するコンテンツに関わる映像翻訳に携わりたい」と、自らJVTAにコンタクトを取ってインターンシップに臨んだ。

「JVTAのオフィスでは様々な業務を体験し、翻訳のプロジェクトにチェッカーとして参加したり、教育部門が行うインターンシップの計画をサポートしたりしています。また、書類の翻訳、PR映像の編集、映像翻訳コースの運営サポートなども体験しているほか、研修の一環として映像翻訳の授業も聴講することができました。翻訳の受発注やスクールの運営といった業務だけではなく、以前から憧れていた日本のエンターテインメント業界や日本の企業文化についても多くを学んでいます。」(エリザヴェタさん)

子どものころから日本のアニメやマンガに親しんできたというエリザヴェタさんが日本に滞在するのは3回目だ。初めは高校の時に交換留学で2週間滞在。日常生活に関する知識はアニメやマンガから得ており、来日時にもそれほど違和感はなかったという。一つ残念だったのは、留学先の高校に制服がなかったこと。日本が好きな海外の若者にとっては学生の制服は夢のひとつであり、着てみたかったと話す。フランスの大学では日本語の文化や言語を学び、4年生の時再び1年間日本に留学した。今後は日本の作品をフランス語に訳す翻訳者を目指している。映像翻訳者を目指す多くの受講生・修了生と同じように、字幕派なのだそうだ。

「子どもの頃はまだそんなに吹き替えがなくて、字幕で観ることが多かったのです。私は以前から英語の作品も日本の作品も字幕で見ていました、日本語は響きや言語として好きなので、日本の声優さんが話す日本語の声を聴きたいのです。フランスでは一般的に英語の作品はほぼすべてフランス語の吹き替えで、日本語の作品はフランス語の字幕で観ます。最近は日本の作品も吹き替え版が増えてきたと思いますが、コアなアニメやマンガのファンはやはり字幕派が多いのではないでしょうか?」(エリザヴェタさん)

エリザヴェタさんはインターンの中で日英映像翻訳の授業にも参加し、初めて本格的に字幕作りを体験した。プロの映像翻訳者が使う字幕制作ソフトを使って、映像の上に表示されている字幕を調整したりする作業ができたのは貴重な体験だったと話す。英語力も高いエリザヴェタさんは、日本語からフランス語を介さずに英語に訳した。英語の日常会話には苦労しなかったものの、ドキュメンタリー作品の堅い言葉には苦戦した。オンラインの授業には、さまざまな国のクラスメートがおり、彼らの訳から学ぶ表現も多かったという。

「日本語は漢字の中にたくさんの意味が含まれています。意味が豊かな漢字を英語にする場合、主語を入れて文章にするとどうしても長くなるので、文字数制限が一番難しかったですね。私が今後日本語からフランス語に訳したら英語よりもっと長くなって大変だろうと字幕作りの難しさを実感しました。これはマンガの吹き出しも同じ悩みどころですね。縦書きと横書きの違いもありますし、人物が漢字で短い決めゼリフを言うシーンなどは日本語の簡潔な字面とはイメージが全く変わってしまうのです。一方、マンガには欠かせないオノマトペはフランス語も意外と豊富にあり、それほど違和感なく、似たような表現を探すことができました。また、調べものの奥の深さも知りました。リサーチがこんなにも深くて、翻訳の言葉選びに大きく反映されていくことを知り、興味深かったです。実務を経験し、いち視聴者として観ていた時には分からなかった気づきがありました。」(エリザヴェタさん)

エリザヴェタさんによると最近ではジブリの作品や新海誠監督の作品、『ONE PIECE』『SPY×FAMILY』なども映画館で上映されたという。一般的にメジャーな日本の作品はフランス語の吹き替え、少しマニアックな作品は英語字幕で観ることが多いそうだ。フランスやベルギーといったフランス語圏には、古くからバンド・デシネと呼ばれるコミック文化があり、マンガも身近な存在だ。日本のコミックも現在はフランス語版が広く普及している。

「90年代のころは日本のサッカーのアニメや『美少女戦士セーラームーン』などが人気でしたが、当時はまるでフランスのアニメのようにしたいという感じで、登場人物の名前などもフランス語になっているケースもありました。私が子どもだった2010年ごろ、『進撃の巨人』や『東京喰種トーキョーグール』『ONE PIECE』などがブームとなり、現在は正式な配信プラットフォームも増えてきました。今は日本の文化や特徴をそのまま伝えて言語のみをフランス語にするという流れに変わり、日本のキャラクターの名前はそのまま訳されています。日本語の特徴のひとつに、『先輩』『先生』『ちゃん』『君』『さん』などの呼び方がありますが、最近の字幕やマンガはこれも活かすケースが増えました。日本好きな人はこういう箇所にこだわりがあります。でもフランス語の吹き替えだとこれを残せないものが多い。私も今後翻訳に取り組む際、日本のことをそのまま伝えていきたい、知ってほしいと思っているので字幕翻訳を手がけたいと考えています。さらに吹き替え版のニーズにも対応できるスキルも身につけていきたいですね。」(エリザヴェタさん)

エリザヴェタさんは4カ月のインターンを通して、翻訳に関する実務をさまざまな角度から体験、字幕作りだけでなくディレクター業務の流れも知ることができた。これまでは日本のアニメやマンガを好んで観ていたが、『離婚しようよ』『ブラッシュアップライフ』『地面師たち』など日本の実写ドラマを観る機会もあり好きになったという。また、JVTAの公式YouTubeチャンネルにも登場し、”日本の謎カルチャー”について紹介するという大役も務めた。(https://www.youtube.com/watch?v=-Y2GrleMjKI)海外の学生の受け入れはJVTAにとっても現地での日本作品のリアルな存在感や実際のファンの声を知る貴重な機会となっている。これからもJVTAは、インターンの受け入れを通して、語学力の高い国内外の学生の就業体験をサポートしていく。

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