【冬セミレポート】「伝わる翻訳」ができるまで ~文章を見つめ、適訳を探る~
2024年3月1日(金)19:30-21:00 ※日本時間
【登壇者プロフィール】
山根克之(「ロジカルリーディング力強化コース」主任講師)
リーディングやリスニング、英文解釈など英語力アップに必要なスキルを指導するスペシャリスト。フリーの映像翻訳者として、プロレスやサッカーなどのスポーツからミリタリー、歴史、自然科学関連のドキュメンタリーまで幅広く経験。JVTA英日映像翻訳科の授業も担当する。
丸山雄一郎(「日本語表現力強化コース」主任講師)
学生時代からJVTA代表である学生時代からJVTA代表である新楽直樹に師事し、ライターとしてデビュー。小学館「DIME」「週刊ポスト」「週刊ビッグコミックスピリッツ」などでライター、編集として活動後、講談社「週刊現代」「FRIDAY」「セオリー」などで執筆。現在は、映像翻訳本科のほか企業の社内研修でも講師を務める。
「面白い」と感じる文章に、魅力的なテーマと内容は不可欠だ。しかし文章の質を担保するのは、1つ1つの言葉、表現である。一読で理解できる表現と心地良いテンポでつづられた文章には、言葉のプロによる推敲の結果が随所に散りばめられている。
■正しく伝えるために
3月、JVTAは「続・翻訳の“入口”と“出口”を学ぶ特別講座」を開催した。山根克之講師と丸山雄一郎講師による本セミナーでは1つの記事を使い、わかりやすい訳文に欠かせない日本語表現を徹底的に考え、練り上げる。2021年の初回同様、この度も200名以上の参加者が集まった。今回の素材は、The Guardian紙の「時代で変わりゆく女性像」をテーマにした英文記事だ。昨今多くのメディアで目にする題材だが、両講師は社会的な話題こそ表現への配慮が必要だと説く。
例えば、記事内の”Feminism”という英語は、単に「フェミニズム」と訳して良いのか。翻訳者は改めて原語の意味を調べ、前後の文脈から記事全体を読み込んでいく。すると、「女性解放」という和語の方が、筆者の意図をより的確に伝えていることが見えてくるのだ。丸山講師は、言葉が持つ印象、読者への影響に思いを馳せることが、メディアの一員として求められていると強調した。
■言葉選びの前に、文章を見つめる
翻訳には忍耐が必要だ。言葉の数、表現の幅は無限大であり、辞書を引いても「これだ!」という決め手が見つからないこともある。山根講師は長年の翻訳経験から、辞書に訳語の“正解”を求めてはならないと述べた。
「単語の意味に囚われず、まずは文章を理解することが大切です。文脈にぴったりの訳語を自分なりに熟考・予測し、初めて辞書を引く。そして、『自分の勘は正しかったんだ』と確認する。辞書で答えを得るのではなく、答え合わせをしてみてください」(山根講師)
言語にかかわらず言葉に興味を持ち、推敲する時間を積み重ねることは、翻訳者としての自信と継続的な実績に繋がる。JVTAでは、山根講師と丸山講師による表現力に特化した講座が開講間近。言葉のプロを目指す人は必見の、目からうろこのテクニックが満載だ。
(By Yukiko Takata)
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