【修了生・小松原宏子さんインタビュー】「児童書の創作にも映像翻訳の学びが役立っています」
JVTAの修了生、小松原宏子さんが執筆する児童書「青空小学校いろいろ委員会」シリーズが静山社から出版され、人気を集めている。現在、「保健委員は恋してる」「飼育委員はアキラめない 2」「給食委員はアイドル 3」の3冊が発売中だ。小松原さんは、映像作品の翻訳のほか児童書の作家として、『ぼくの朝』で第13回小川未明賞優秀賞を受賞。児童書の編訳や翻訳なども数多く手がけてきた。家庭文庫「ロールパン文庫」を主催するほか、大学や高校でも非常勤講師を務めるなど多彩に活躍している。児童書の創作にもJVTAの学びが役立つという小松原さんに創作秘話を聞いた。
【最新ニュース】★小松原さんが登壇!★
2023年2月6日(月)
『不思議の国のアリス&鏡の国のアリス』新訳版の翻訳者による特別講演を開催
https://www.jvta.net/tyo/25th-anniversary-seminar/
◆委員会にフォーカスした物語は家庭の会話から生まれた
「青空小学校いろいろ委員会」シリーズは、2009年にくもん出版から発売の全3冊のリメイク版。青空小学校、4年1組の生徒たちの日常が描かれている。特筆すべきは、「学級委員」「放送委員」「飼育委員」など委員会にフォーカスしていることだ。
「もともとは2008年4月に大阪毎日新聞社の『よんであげて』という紙面で1カ月の連載作品として書いたものです。娘のクラスにツボ押しの得意な子がいて、『今日も手のツボ押してもらった』などと話しているのを聞いて『そういう子が保健委員をやればいいのに』と言った瞬間にひらめきました! 何か特技をもっている子が委員会活動にそれを活かしたら面白いな、と。実は過去のシリーズの販売後、「ほかの委員の話も読みたい」という読者の声を数多くいただきました。それを前作『キューティー・キューピー・キューピッド』(2021年1月発行)の編集を担当してくださった静山社の荻原華林さんに話したことがきっかけで、リメイク版を出していただけることになったのです。委員も7人から9人に増えました。」(小松原宏子さん)
◆主人公のモデルは身近な子どもたち
児童文学に造詣が深い小松原さんは、幼いころから児童文学者のいぬいとみこさんが開いた「ムーシカ文庫」の本を読んで育った。その後、「ムーシカ文庫」の世話人を長くしていた児童翻訳者の故・松永ふみ子さんの蔵書を譲り受けて練馬区の家庭文庫「ロールパン文庫」(https://www.rorupanbunko.com/)を主宰。現在は、子どもたちに開放し、お話会なども行っている。創作のヒントはそんな交流の中から生まれるのだという。
「1巻『保健委員は恋してる』の主人公“アッピー”の名まえは、文庫に来ていた女の子の呼び名を借りました。元気印の人気者で、イメージも似ています。3巻『給食委員はアイドル』に出てくるルミは、ほとんどうちの末娘の小中学校時代がモデルです(雑誌モデルの美少女ではありませんが…)。給食であまったキウイを食べすぎて口内炎になったり、おかわり争奪じゃんけんに燃えたり、食べたらすぐ出してスッキリしたり…。そんな娘も26歳になり、まあまあ“番茶も出花”にはなりましたが、現在小学校の先生になったのは、もしかしたら給食が食べたかったからかも!?」(小松原宏子さん)
◆児童文学の執筆も支える映像翻訳者のスキル
映像翻訳者に欠かせないスキルの一つがリサーチ力だ。小松原さんもJVTAで鍛えた「調べもの」のスキルを児童書の執筆でも駆使していると話す。
「映像翻訳と共通するのは、なんといってもリサーチ力ですね。JVTAで鍛えられた『裏取り』の実践練習がその後の人生を変えたと言ってもいいくらいです。翻訳するときに『この訳でいいのか?』と、常に資料を調べる習慣が、創作にもおおいに役立っています。想像で書いた物語にも、事実や理論によって裏打ちされることによってリアリティが生まれます。これはファンタジーを書くときも同じです。それから、誰にでもわかる言葉を使う、ということも意識しています。大人の本より子どもの本を書くほうが簡単だと感じるかもしれませんが、私はむしろ反対だと思っています。児童書は難しい漢字や言葉が使えないなかで、分かりやすく見やすく表現する必要があり、実は苦労も多いのです。老若男女すべての観客にわかりやすい字幕をつくるトレーニングに、児童書の創作も支えられていると感じています。」(小松原宏子さん)
◆巻末の特集もこだわりのポイント
このシリーズの見どころは本編以外にもある。巻末の読みものも、Yes/Noチャートでどの委員会に向いているかを問う「スーパー委員診断」や、学校で飼育されている動物にまつわる「いきものクイズ」、日本の給食の経緯をまとめた「給食の歴史」など、工夫されていて興味深い。確かに給食は時代や地域によっても特徴があり、世代を問わず、語り合える話題と言える。作成にはリサーチに加え、家族への取材も行ったという。
「1巻のスーパー委員診断は、くもん出版から最初に出されたときに私が作り、リメイク版で委員が増えた分は静山社の荻原さんが加えてくださいました。2巻のいきものクイズも荻原さん作成です。3巻の給食の歴史は、岡山出身の3歳年上の夫と東京出身の自分、三十代の長女次女と二十代の三女の記憶からたたき台を作りました。その後、荻原さんと編集部でチェック&リサーチのうえ補完してくださったそうです。今の給食については、もちろん現役小学校教師の三女に取材しました。」(小松原宏子さん)
◆大人も子どもも長く楽しんでほしい
小学校時代の思い出は誰にでもあるもの。時代は違っても委員会などの種類はそれほど大きくは変わらない。そんなどの世代にも親しめるテーマがこのシリーズの魅力だ。
「子どもたちにはもちろんのこと、大人たちにも楽しんでいただけたらと思います。『委員会活動』は、やりたくてやっている子ばかりではないと思いますが、そこに彼らが楽しみや喜びを見つける物語となっています。それが大人にとっても仕事や日々の生活のなかで何かのヒントになってくれたらこんなに嬉しいことはありません。」(小松原宏子さん)
読者からは、「主人公以外のキャラ付けもよく、特技を持つ特徴的なキャラ達が魅力。シリーズ物と聞いて納得」「図書委員の活躍も読みたい」「保健委員だけでなく、他の委員も希望」「先生方も魅力的。テンポがよく、非常に読みやすい」などの声が寄せられている。新シリーズの主な登場人物は9人。今後、どんな物語が展開するか、期待したい。
☆静山社 青空小学校いろいろ委員会シリーズ
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※小松原さんが翻訳や執筆などを手がけた作品
◆修了生の小松原宏子さんが児童書を執筆 『キューティー・キューピー・キューピッド』が発売中
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◆【修了生の小松原宏子さんが執筆】″かつての子どもたちにも読んでほしい″ 「やまホテ」シリーズに込めた思い
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