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【東京芸術劇場で舞台説明会を取材】見えにくい人に舞台の魅力を言葉で補足する

【東京芸術劇場で舞台説明会を取材】見えにくい人に舞台の魅力を言葉で補足する

東京・池袋にある東京芸術劇場では、視聴覚障害者のため鑑賞サポートを行っています。この秋の公演【NODA・MAP第23回公演 『Q』:A Night At The Kabuki】にも見えづらい方のための舞台説明会と、聞こえにくい方のためのポータブル字幕機提供サービスを実施し、好評を得ました。舞台説明会の解説を担当したのは、JVTAバリアフリー講座修了生の彩木香里さん。具体的にどんなことが行われているのか、開演前の劇場で取材しました。

 
◆会場前で概要を解説
舞台説明会が行われたのは日曜日の昼公演。14時開演の前の13時から開始です。

 
参加者は、視覚障害者の方が5名、付添いの方が3名、盲導犬2頭。まずは会場前で説明会の流れを簡単に解説し、会場の空間に関する情報を伝えます。

 

IMG_6692 - コピー IMG_6696 - コピー「これからご案内するプレイハウスは、東京芸術劇場に4つある劇場の一つで、客席数は1階席と2階席合わせて834席。1階2階とも両サイドにはサイドシート、バルコニーシートがあります。床面はウッド調で壁にはレンガの装飾が施されています。出入り口は1階席の後ろに4つと左サイドの右サイドの中ほどに扉があります」(彩木さん)

 
◆会場からロビー、劇場内へ
会場入口の扉からロビーに移動。大きな荷物を置いていよいよ劇場へ。客席で靴を脱いでから舞台上に移動します。盲導犬は客席で待機。付き添いのいない参加者には、劇場スタッフが1人ずつついてサポートします。

 
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参加者は、舞台上の前方の中央に客席側を向いて横一列に並びます。立ち位置を調整するには「約10歩前方へ、1、2、3」と数えながら移動していきます。

 
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提供・東京芸術劇場

 
「客席の最前列の床面から80センチくらい高くなっています。座席は横並びに20席から29席。縦に22列あります。後ろの席にいくにつれて少しずつ高くなっています。1階席の後ろの方に2階席があります。3分の1くらい。2階席は200席くらいです」(彩木さん)
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客席の広さを体感するために、各扉の近くにスタッフが立ち、パンパン!と手を叩いて音を出し距離感を伝えます。また、舞台上から客席に「おーい!」と呼びかけると、「客席の数カ所からスタッフが「はーい!」と答え、声の響きや位置関係を確認。「声出してみてもいい?」と申し出る方もいて、やり取りを楽しんでいます。

 
◆舞台セットの全体像を解説
いよいよ舞台上のセットの解説へ。皆さんも舞台上の様子をテキストから想像してみてください。

 
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※最前列から見る客席はこんな感じです。

 
「床面は白です。両サイドだけ奥が黒くなっています。天井までは20メートルほどあります。横幅は14メートル。奥行はだいたい7メートル。奥の突き当たりには高さ2メートル30センチの白いセットが舞台の横幅いっぱいに置かれています。その上もアクトスペースになっていて、上の部分の奥行は1メートル80センチあります。上のセットと今立っている舞台は別空間として同時に芝居が進んでいくことがあります。白いセットには忍者屋敷にあるようなどんでん返しという、真ん中が軸になっていてくるっとまわす回転扉が6個ついています」(彩木さん)

 
◆舞台上を端から1周りし、セットに触れてみる
回転扉の高さは約2メートル。表面に突起が付いています。参加者は実際に触れながら、大きさや感触を確かめます。俳優は各扉から出入りし、突起に手や足をかけて昇り降りするそう。舞台上にはさらにベッドが一つ置いてあります。こちらも実際に触れて大きさや感触を楽しんでいます。

 
「この白いパイプベッドは、開演前は先ほどのセットの前に11台並んでいます。このパイプベッドは1つに集められて舟やバスや馬車になり、またバラバラになってベッドになったりいつのまにか扉から出て行って舞台面からいなくなったりと数や形を変えてあらゆるシーンで使われます」(彩木さん)※舞台上での解説はこちらで終了

 
◆ロビーに移動して作品の概要を紹介
※作品内容に関しては【NODA・MAP第23回公演 『Q』:A Night At The Kabuki】公式サイトを参考にしています。
舞台セットの見学後は、再びロビーに戻り、作品についての解説に移ります。一般の観客の開場も始まるなか、片隅のスペースに着席しています。
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舞台セットの見学後は、再びロビーに戻り、作品についての解説に移ります。一般の観客の開場も始まるなか、ロビー片隅のスペースに着席し彩木さんの解説を聴きます。
公演のタイトル『Q』は、イギリスのロックバンド、クイーンのQです。東京芸術劇場の芸術監督であり、NODA・MAPの主宰でもある野田秀樹氏が、『ボヘミアン・ラプソディ』を含むクイーンの名盤『オペラ座の夜』にインスパイアされて脚本を書きあげました。野田氏のプロフィールなども紹介します。

 
◆パンフレットに掲載の文字情報も音声で補足
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劇場内で配布されている見開きのパンフレットには、野田氏とクイーンのギタリスト、ブライアン・メイ氏のコメントが掲載されており、これも音声で読み上げます。

 
◆物語の概要を事前に解説し、理解を深める
物語のベースはシェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」。イタリアのヴェローナを舞台に仲の悪いモンタギュー家とキャピュレット家の2人が恋に落ちる悲劇を、日本を舞台に描きます。原作と違うのは、2組のロミオとジュリエットが登場するということ。「ロミオとジュリエット」のオリジナルのストーリーをおさらいしながら、この作品ならではの人物構成を紹介します。また舞台上のセットについても触れます。
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◆配役と俳優、衣装の特徴を紹介
事前に配役を伝えるのも舞台説明会の大きな役割のひとつです。“4人のロミジュリ”を演じるのは、松たか子さん、上川隆也さん、広瀬すずさん、志尊淳さん。俳優は1人で複数の役を演じることも多いため、ここでそれぞれの役名や役どころも丁寧に解説します。俳優についての質問には、出演者の他の代表作や役名などを伝えます。

 
◆衣装は和とロックが融合した独創的なデザイン
舞台は衣装も見どころ。事前に知っているとよりイメージが広がります。今回は日本が舞台のため、和のテイストながらロック色も取り入れた個性的なデザイン。ちょっと意外な形や素材、色などの情報を盛り込み、衣装のつくりや小物などを具体的に解説します。
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今回の脚本はクイーンの「オペラ座の夜」からインスパイアされたものということで、各シーンに流れる代表曲についても解説。さらに劇中で何度も繰り返され、笑いが起きそうなシーン、冒頭とラストのシーンの特徴なども事前に伝えるなど、イメージが膨らむ要素がふんだんに含まれていました。

 
★参加者の皆さんの声
・舞台に上がってセットの説明を聴き、予め粗筋や見どころを聞けたので、公演がわかりやすかった。
・舞台を歩きセットに触れたので、公演中に俳優の動きやセットの使われ方を頭に思い描くことができて、楽しめた。
・ネットで粗筋を探して事前に読んできたが、やはり、舞台説明会がなければ、あまりよく分からなかっただろうと思う。
・クイーンの曲が流れるだけでセリフのない部分は、皆で曲に合わせて踊っていたのだろうか? その時の役者の動きを知れたらと思った。
・最前列の席をいただけたので、役者やセットの動きがわかった。香りで認識できる
男優さんもいて、楽しめた。

 
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提供・東京芸術劇場
東京芸術劇場では2020年3月の公演『カノン』でも鑑賞サポートを実施します。詳細・お申し込みは公式サイトをご覧ください。
https://www.geigeki.jp/performance/theater227/

 

次回は東京芸術劇場が取り組む鑑賞サポートについてさらにお話を伺います。
東京芸術劇場 公式サイト
https://www.geigeki.jp/
◆修了生・彩木香里さんが受講したJVTAのバリアフリー講座の詳細はこちら
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