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ロジカルリーディング力を鍛える⑯ 広く浅い知識が役に立つ

<strong>ロジカルリーディング力を鍛える⑯ 広く浅い知識が役に立つ</strong>

ロジカルリーディング力 強化コースは“プロの映像翻訳者が持つ思考プロセス”を伝授し、映像翻訳に必須の「英文解釈力」を着実にレベルアップさせることを目的としています。
 
英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やコラム、政治家のインタビューなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。具体的にどんな講座なのか、山根克之講師が解説します。
 
<広く浅い知識が役に立つ>
 
今年の8月から9月にかけてフィリピン、インドネシア、日本の3カ国共同開催でバスケットボールのワールドカップが行われ、日本は3勝2敗の成績を残しました。日本がバスケットボールのワールドカップで3勝したのは今回が初めてのことです。この日本の進化を伝える英字紙の記事(https://mainichi.jp/english/articles/20230910/p2g/00m/0sp/017000c)は次のような表現で始まっていました。
 
In winning three games at the recent Basketball World Cup and qualifying for the Olympics as a non-host for the first time since the 1976 Montreal Games …
 
「今回のワールドカップで3勝を挙げた日本は1976年のモントリオールオリンピック以来となる開催国以外の国としての出場権を手に入れた」と書かれていますが、「開催国以外の国として出場権を手に入れた」とはどういうことでしょうか?バスケットボールあるいはスポーツ全般に関心のある人なら、「自力で出場権を獲得した」という意味がパッと思い浮かぶと思います。ちょっとした知識の有無で原文から見える風景や思い浮かぶ訳語は違ってくるのです。
 
別の例を挙げてみましょう。2022年7月付のメジャーリーグに関する記事(https://fivethirtyeight.com/features/shohei-ohtani-mlb-all-star/)からの引用です。
 
Othani became the first-ever double-duty All-Star last season, during a year that was unlike anything we had seen in modern baseball history.
 
「大谷は史上初のダブルデューティーオールスターになった???」と頭の中にクエスチョンマークが3つくらい浮かんだ人もいるかもしれません。これも野球に関心があれば「投打の二刀流でオールスターゲームに出場した」という意味が見えてきます。
 
たまたま今回は2つともスポーツに関する話題を取り上げましたが、何の話題でも同じです。原文に書かれている内容に関する知識があるとないとでは、理解度が変わってきます。理解度が変われば、訳文の質も変わります。もちろん、この世のことは全て知っているという人などいないでしょう。だから、翻訳者は調べものを行って理解を高めてから訳文を作成します。でも、同じ調べものを行うにしても、調べる対象に関する知識が0か1かではスタート地点が異なります。スタート地点が異なれば、ゴールまでの距離も要する労力も変わってきます。そのため、翻訳者には普段から何にでも興味を持って、広く浅い知識を得ていく姿勢も必要なのです。
 
ロジカルリーディング力強化コースは、英語で読んだ内容を頭の中で整理し、自分の言葉(日本語)で再構築して説明する力(=ロジカルリーディング力)を養う方法を毎回さまざまな角度から考えていきます。今回の問題のような背景知識を生かした解釈については、全8回のうち、第5講の「背景の理解」で学びます。
 
(Text by English Clock 主任講師 山根克之)
 
◆山根講師の連載コラム「ロジカルリーディング力を鍛える」のアーカイブはこちら
https://www.jvta.net/tyo/logical-reading-archive/

 
◆English Clock「ロジカルリーディング力 強化コース」
2023年10月24日より開講 無料体験レッスンを開催中
https://www.jvta.net/tyo/english-clock-orientation/