ロジカルリーディング力を鍛える⑰ 展開を予測しながら読む
ロジカルリーディング力 強化コースは“プロの映像翻訳者が持つ思考プロセス”を伝授し、映像翻訳に必須の「英文解釈力」を着実にレベルアップさせることを目的としています。
英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やコラム、政治家のインタビューなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。具体的にどんな講座なのか、山根克之講師が解説します。
<展開を予測しながら読む>
文章を読む時、人はその先の展開を予測していると言われます。どういうことか感じていただくために、まず次の英文を読んでみてください。環境保護団体Ocean Conservancyのサイトに掲載されているヒョウモンダコに関する記述の一部です。
https://oceanconservancy.org/blog/2017/03/13/the-blue-ringed-octopus-small-but-deadly/
At first glance, the blue-ringed octopus looks perfectly innocuous. Its psychedelic coloring and pint-sized packaging make it seem more adorable than alarming. But don’t let its cuddly exterior fool you: this tiny octopus can kill you. And quickly.
1文目に「一見するとヒョウモンダコは無害な生物に思える」と書かれています。わざわざ「一見すると」と書かれているので、「実はそうじゃないよ」という展開が待っていることが予測できますよね。
そこで2文目を読むと「派手な色をした小さな体は愛らしく思えるほどで、警戒心など抱かせないだろう」と書かれています。「ヒョウモンダコを見て警戒心なんて抱かないよね」という書き方が何とも怪しげですね。ここも「実は無害じゃないよ」につながっているように思えます。さらに読み進めていきましょう。
「しかし、思わず手に取りたくなるようなかわいらしい見た目にだまされてはいけない。この小さなタコはごく短時間で人を死に至らしめる力を持っているのだ」
初めに予測したとおりでしたね。無害どころか、かなり危険な生物のようです。
今見てきたように、人が文章を読む時には「こういう書き出しだから、帰結はたぶんこんな感じだろう」「ここで提示された謎の答えはこの先に出てくるはずだ」のような思考回路が働きます。ということは、構成のしっかりした文章はこの読み手の思考回路に応えられるようになっているはずです。翻訳の課題に取り組む時にも、この点を意識してみてください。原文の理解に苦しんでいると、どうしても目の前の1文だけを見てしまいがちです。その時に「前の文でこう言っていたのだから、ここはこういう展開になるはずだ」のように考えると、それまで見えなかった理屈の流れが見えてくるでしょう。
ロジカルリーディング力強化コースは、英語で読んだ内容を頭の中で整理し、自分の言葉(日本語)で再構築して説明する力(=ロジカルリーディング力)を養う方法を毎回さまざまな角度から考えていきます。今回の問題のような構成の展開を意識した解釈については、全8回のうち、第4講の「引継ぎと展開」で学びます。
(Text by English Clock 主任講師 山根克之)
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